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23日/『恋人の条件』第一話

第一話『叶わぬ恋心』


 ―――五年後・春。


「起きろ悠紀! また遅刻して叱られても良いのか!?」

 今日から新学期。六芦・野々宮家では朝から征司の怒声が響き渡っていた。

 キッチンで朝食の準備を済ませ、征司は玄関に入って直ぐの洋室をノックした。以前は客間として使われていたこの部屋は、五年前から悠紀の部屋になっている。

「んもぉ〜、せーじは朝から煩いわねって……! ギャッ! 嘘! もぉこんな時間っ!?」

 ドタンバタンとクローゼットを開閉する大きな音を聞き、征司はヤレヤレと溜め息を吐きながらキッチンへと戻った。

 最後の仕上げにポットから珈琲をカップに注いでいると、ダイニングに身支度を整えた悠紀が入って来る。

「お早う、せーじ。うぅ……、頭痛い」

「お早う。二日酔いか? 出かけに久々に彼氏に会えるからって、呑みすぎないようにって注意したのに……」

 ダイニングテーブルにダルそうに突っ伏す悠紀に、淹れたての珈琲の入ったカップを手渡してやる。

「うっさいわねぇ。だって、目の前で美味しそうにお酒呑まれたら、こっちだって呑みたくなるじゃない! つまり、悪いのは武(たけし)の方よ!」

「そうやって天野(あまの)さんの呑んでたお酒を横から奪って呑んでたんだろ。酒乱も程々にしないと愛想を尽かされるぜ?」

 悠紀には付き合って八年目の彼氏が居る。名前は天野武。悠紀とは幼馴染みで、お互いを意識し出したのが遅く、大学に入ってから付き合い始めたらしい。

「いーの。武は私の酒乱ぐらいじゃ愛想尽かしたりしないもの。なんせブラブですから〜」

「はいはい。羨マシイ限リデスネ」

「何そのカタコト! 全っ然思ってないでしょ!」

(羨ましいと思ってるさ)

 キッチンに戻り、自分の朝食をお皿に盛りながら心の中で呟く。

 悠紀の恋人である天野が羨ましい。
 出会った頃は悠紀を何とも思っていなかったから、悠紀に天野を紹介された時も歳の離れた兄が出来た気がしてただただ嬉しかった。
 天野は悠紀とのデートにも必ず征司を誘ってくれたし、時には悠紀抜きで男同士で遊ぼうとサーフィンや釣りにも連れて行ってくれた。

 三人で出かける事が苦痛になり出したのは、征司が高校一年生の時だった。
 夜に外で車が停まる音がして、ふと二階の部屋の窓から道路を見ると、悠紀を送って来た武が悠紀とキスをしている姿が見えた。

(う、そだろ……)

 二人はどちらかと言えば、普段から恋人同士と言うよりも親友同士と言う雰囲気の方が強かった。
 だから頭の片隅ではセクシャルな事もするのだろうとは思っていたが、二人のキスシーン等を想像しても全く想像が出来なかった。

 目の前で行われている光景が、脳内で上手く処理出来ない。

 唇を解き、武が悠紀の髪を指先ですくように撫でる。

(止めろ。俺の悠紀に触るな……!)

 二人のセクシャルな場面には驚いたが、一番驚いたのは自分の中に芽生えた武に対する嫉妬心だった。




 みたいな(´・ω・`)
 まだまだ話を煮詰めきれてないけど、勢いだけで結構書けました。灰羅の書く年下男はこんな感じですかね。
 つーか、番外編以外で男視点で書くのって初めてです! 案外書けるかも(`・ω・´)
 気が向いたらこんな話かこの続き書きたいな。需要があればですが。
 まぁ、基本好きな話を書き散らかしておりますが(*´∀`*)はっはっはっ

22日/『恋人の条件』プロローグ2

「あぁ……、そうよね。ごめんね。君に合ったのはまだ赤ちゃんの頃だったから覚えていないわよね。私は悠紀(ゆうき)。野々宮(ののみや)悠紀。私の亡くなった父が、君のご両親の専門学校時代の先生だったの。卒業後も交流があって、娘の私も君の事は父からもご両親からも聞いて知っていたわ。丁度君と同じ歳の頃に、赤ん坊だった貴方にも会ったことがあるのよ」

 征司の前で膝を付いた悠紀が、優しい手付きで征司の肩に薄く積もった雪を払ってくれる。
 征司は返事や相槌を打つ事もせず、悠紀の話を黙って聞いていた。
 悠紀もそんな征司を気にする事なく、話を続けた。

「いつから外に居たの? せっかくのスーツが台無しになるじゃない。それとも、本当に雪だるまになるつもりだったのかしら?」

 悠紀の言葉に小さく首を横に振る。ただ煙を見つめていたら、いつの間にか肩に雪が積もってしまっていただけだ。

 今日着ている新品のスーツも、元々は来月の小学校の卒業式用に両親がイタリアのお土産に買って来てくれたものだった。
 事故後に家に届けられた土産の中には、黒いスーツに合わせたワインレッドのネクタイも入っていたが、今征司が絞めているのは西夫人が用意してくれた葬儀用の黒いネクタイだ。

 来る祝い事の為に両親に買って貰ったスーツを両親の葬儀で袖を通す事になるとは思いもしなかった。

「そう。なら、風邪を引かない内に待合室に入りましょ」

「中は……、嫌だ。皆、なんだか怖い……」

 親戚達が葬儀会場の待合室の隅の方で深刻そうに話し込んでいたことを征司は知っている。征司は西夫妻と共に少し離れた所に居たが、時々大きな言い争う声が聞こえて来るのが怖かった。子どもながらに、自分の話をされている事が分かっていたからだ。
 不安がる征司の手を西夫人が「大丈夫よ」とギュッと力強く握ってくれた。

 征司の言葉に大方予想がついたのか、悠紀が待合室の方へと視線を向け「あぁ……」と呟いた。
 今も小さくではあるが言い争う声が聞こえて来る。

「ねぇ、君……」

「……征司。六芦征司」

「せーじ君はさ、親戚の人と暮らしたい?」

 正月やお盆の時期になると母方の実家に親戚一同が集まっていたが、征司が小学二年生の頃に祖父が亡くなり、跡継ぎの長男夫妻の代になってからはその集まりもなくなった。それ以降は親戚とも疎遠になっていた。父方の親戚は遠方に居る為に元々疎遠だ。
 彼らと共に暮らすなら、征司は引っ越しをしなくてはならないだろう。両親との思い出の残る家から離れるのは絶対に嫌だった。

(だってもう、お父さんとお母さんに会えない……)

 もう匂いも、温もりも永遠に感じる事が出来ない。
 だって彼らは死んでしまったのだから―――

 心の中で口にすると、一気に現実が押し寄せて来る。
 辛くて苦しくて、不安で堪らない。心の底から大声で叫びたくなる。

 震える唇を開いて、征司は答えた。

「家から……離れたくない。岳人やおばさん達とも離れたくない。あの人達の所には行きたくない……!」

 きっと今までと同じ生活は送れないと分かっていた。家に残っても、親戚の誰かについて行っても。
 それでも、あの家から離れるのだけは嫌だった。

「そっか。じゃぁさ、私がせーじ君のお家に一緒に住んでもいい? そりゃ、私もまだ社会人一年目だからご両親並みには贅沢はさせてあげられないけどさ。そこそこ貯金もあるし、一日三食と誕生日とクリスマスのケーキや安めのプレゼントも約束出来るよ。独り者同士、仲良くしようよ。いや……、して下さい。かな」

 思いがけない言葉だった。
 余りに驚いた顔をして見つめていたせいか、悠紀が「やっぱ初対面に等しいし、怪し過ぎて駄目……だよね」と眉を下げた。

(本当……?)

「本当? 引っ越さなくても、良いの?」

「良いよ。がくと君ともおばさんともさよならしなくて良いよ。私と一緒に暮らしてくれる?」

 再度問われ、コクコクと頷くと、ギュッと抱き締められた。
 痛みを感じる程の力で抱き締められたが、不思議と嫌ではなかった。悠紀のコートから母親がつけていた香水と同じ香りが漂って来て、安心したからかもしれない。

(お母さんと同じ匂いだ……)

「おかぁ……っ……ひっ……。ふぅっ……おとぉさん……うっ、おかぁさ……」

 急に目頭が熱くなって、涙が溢れ出した。
 嗚咽を漏らしながら泣く征司の頭を、悠紀が慰めるように撫でてくれる。その仕草も、母親を思い出させた。

「気が済むまで泣くといいよ。頑張ったね、せーじ」

 悠紀の腕の中で、征司はいつの間にか泣きつかれて眠ってしまっていたらしい。
 次に目が覚めたら翌朝で、征司は自室のベッドの上に居た。ベッドの直ぐ横のカーペットの上には、悠紀が毛布にくるまって眠っている。
 目覚めた悠紀によると昨夜の内に親戚達に征司を引き取る旨を告げ、悠紀が征司の保護者になることが決まった。

 この日から、六芦征司と野々宮悠紀は家族になった。


プロローグ*END*

22日/『恋人の条件』プロローグ

 昨日の年下男の話で脳内妄想が止まらず、プロローグ的な物を勢いで書いてみました(´・ω・`)


『恋人の条件』

 両親を空へと見送ったのは、ちらほらと雪が舞う曇りの日だった。
 空を覆い尽くす灰色の雲と同じ色をした煙が、火葬場の煙突から空へ向かって伸びて行く。

「この雪、お父さんとお母さんが降らせたのかな……」

 雲に溶け込んで行くように消えて行く煙を見ながら、六芦征司(りくろせいじ)は小さな声で呟いた。

 火葬場の待合室で火葬が終わるのをジッと待つことができず、征司は一人火葬場の外に出た。

 征司の両親は大手の輸入家具ショップでバイヤーをしていた。その為、両親のどちらかが仕事で海外へ行くことも珍しい事ではなかった。
 しかし二月のある日、新プロジェクトの関係で両親が揃って一週間イタリアへ行くことになった。

 近くに親戚も居らず、征司はその間隣の家に預けられた。隣の西(にし)家には征司と同い年で親友の岳人(がくと)が居たから淋しくはなかった。

 一週間が過ぎて迎えた、八日目の朝。両親から空港に着いたと電話で連絡を受け、いつもと同じく岳人と一緒に学校へ行った。

 今日は土曜日で、授業は午前中で終わり。家に帰れば、一週間振りに会う両親が笑顔で出迎えてくれる。
 ―――そう思っていた。

 二時間目が始まって直ぐに、教室に慌てた様子で男性教諭が入って来た。担任に何事かを告げると、担任は征司に今すぐ帰る準備をしなさいと言い、訳の分からぬまま鞄に教科書等をしまって帰宅の準備をした。
 連れて行かれた職員室で、痛ましそうな顔で征司を見つめる教頭の口から、信じられない言葉を聞かされた。

 ―――『ご両親が事故に遭われて亡くなった』と。


 高速道路を走行中差し掛かったカーブで、隣を走っていた大型トラックがハンドル操作を誤って突っ込んで来たらしい。
 車は大破し、両親は即死。車の後部座席とトランクから転げ落ちたイタリアの土産が道路の上に散乱していたと言う。
 両親には遺体の損傷が激しいからと会うことは叶わなかった。遺体の確認は西夫妻が、葬儀の手配も夫妻や近隣の人々が行ってくれた。

 そして迎えた火葬の日。
 征司は慌ただしく過ぎていった今日までの事を、余り覚えていない。
 今、火葬場の煙突から出ている煙も、葬儀の時に棺の中で眠る両親の姿も、現実の物だとは思えなかった。

「ねぇ君。そんな所で突っ立ってると、雪だるまになっちゃうわよ?」

 空へと続く煙を見つめて、どれくらい時間が経ったのだろうか。
 征司は聞こえて来た若い女性の声にハッと我に反り、声の聞こえて来た後方を振り返った。

「誰……?」

 振り返った先に立っていたのは、全く見覚えのない女性だった。
 うっすらと雪の積もったピンク色の傘を差した、二十代前半の女性。ワンピースタイプの喪服に上に、ファー付きの黒いロングコートを羽織っている。緩やかに巻かれたセミロングの茶色い髪。メイクは控え目だが、どこか華やかさを感じさせる容姿だった。
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