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26日/『君捧』SS

『all you can eat!』


 お風呂から上がって水を飲もうと訪れたキッチン。
 扉を開けるとそこは、お菓子の焼ける甘い香いに満ちていた―――

「パパ、なに作ってるの? 凄くいい匂い。これって紅茶かな?」

 私の問いかけに、オーブンの窓越しに中の様子を見ていたパパが振り返った。

「アールグレイ入りのパウンドケーキだよ。明日、自治会の集まりがあるから、そのお茶請けになればいいなと思ってね」
「へぇ〜。相変わらずマメだね」

 パパの作るお菓子や料理はご近所でも評判が良い。
 人当たりが良くて穏和な性格。職業は不安定な小説家だけれど、緻密に練り込まれたストーリーには定評があり老若男女問わずファンも多い。
 都合のつけやすい自由業を活かして地域の活動にも積極的に参加する姿は、本人は気づいていないがご近所の奥様方の癒しになっている。

『娘のお婿さんになってくれないかしら〜』
『私があと10年、15年若かったらねぇ〜。旦那なんかポイッて捨てちゃうんだけどねぇ〜』
 ……などと話に花を咲かせては、最後には必ず、
『でも駄目よぉ。だってホラ、英ちゃんってば花白ちゃんを溺愛してるし、結婚したらウチの娘が毎日焼きもち妬いちゃうわぁ〜』
『ホントにそうよね〜。花白ちゃんが中学生の頃なんて「花白ちゃんの制服のスカート丈が短い気がするんですけど、僕が注意したらセクハラになりますか?」って真剣な顔で聞いてくるんだから笑っちゃうわ。あれ、夏に成長期で身長が伸びて冬服のスカート丈が短くなっただけなのよ。まぁ、ずっと一緒だと気づかないものだけど。義理とは言え娘にセクハラになりますかはないわよね〜。ならないわよって〜」
 ーー―と、パパのド天然発言語録話で幕を閉じるのだった。

「そうかな? あぁ、そうだ花白ちゃん。そろそろ冷蔵庫で冷やしている芋ようかんが固まっている頃だろうから、ちょっと味見して貰えるかな?」
「わーい。芋ようかん大好き〜。と言うか、ようかんってお家で作れるもんなんだね、知らなかった。これも持って行く用なの?」

 言われるまま冷蔵庫を開けると、中段目に黄金色のようかんが入ったホーローのタッパーが目に入った。食感に変化を持たせる為か、小さくサイコロ状に切った芋が所々に見える。
 早速手に取ってみるとひんやりと冷たかった。ーーー食べ頃だ。

「意外と簡単なんだよ。お年を召してる方もいらっしゃるから和菓子もあった方がいいかなと思ってね。パウンドケーキも念の為にプレーンの方も用意してあるんだ。……あ、カロリーオフのおから入りのも作れば良かったかな」
「……パパってほんっとーにマメだよね」



 ―ーーさぁ、甘いあまいお茶会を始めましょう。
 お菓子もちろん―――all you can eat!(食べ放題!)


*END*
 パパはご近所のマダムに大人気。
 一見、自宅が職場な小説家はコミュ力が低めなイメージ(偏見)ですが、パパは特殊環境なお家に生まれた為に幼い頃から自然に高いコミュ力を身につけて行ったのでした(*´∀`*)という設定です。
 まぁ隠す程のお家ではないので言います、パパの実家は由緒正しい老舗旅館です。
 長男で大学は経済学部でしたが文学部の友人に誘われるまま文学サークルに入り、試しに書いたミステリー小説を学祭で発行した同人誌に掲載。
 それを偶然、まだペーペー編集者の綾瀬が友人と一緒に友人の母校である英の通う大学の学祭に訪れ、たまたま同人誌を購入して読み、翌、学祭2日目に販売している文学サークルに乗り込んで英を捕獲。手直しさせて賞に応募。見事大賞を取り小説家デビュー。
 因みに実家は英の姉が継いでいます。

君捧SS「大晦日」

12月31日 23:55の会話

「ねぇ、パパ。あと少しで、今年も終わっちゃうよ。なんかあっと言う間だったよね〜」

「ほら花白ちゃん。零時まであと5分しかないよ。早く年越しそば食べないと」

「ん〜。でもさ、なんか不思議に思わない? あと5分…いや4分か。で、このパパとの会話も“去年”のことになっちゃうんだよ? 昨日の話なのにだよ? 去年なんて言われたら、昔のことみたいに聞こえるよね」

「確かに。“昨日”って言葉なら、『あぁ、昨日のこと』って身近に感じるけど、“去年”って言葉は『え、去年?』って昔のことに感じるよね」

「ってことは、例えば喧嘩したまま年越しちゃったら、去年の喧嘩を引きずってるってことになるじゃない? なんか去年から引きずってるって言われたら、まだ根に持ってるって感じがしてなんか嫌だよね。昨日の話なのに。次に会うまで引きずるのとか普通なのにね? なんか理不尽」

「……それ昔、百合さんも同じようなこと言ってたよ。『もし私が英君と年の瀬に喧嘩したら、元旦に「去年のことだから許してあげる」って言ってあげるわ』って。あぁ、百合さんは許してあげる側なんだって思ったよ」

「あはは。さすがママだよね!」

「あ。花白ちゃん、もう零時になっちゃったよ。年越しそば食べきってないけど……」

「えっ! ちょっ! ヤダ! 食べきらないまま年を跨いじゃったよ〜! 年明けに実力テストあるのに〜!」

「わっ、花白ちゃん。喉に詰まるからゆっくり食べて!」


*END*
※年越しそばは新年を迎える為に今日までの厄を絶つと言う意味で食べられ、新年に跨いで食べることは縁起が悪いこととされています。(※諸説あり)


 今年最後のSSは君捧となりました。
 2016年も亀更新でしたが、足を運んで頂き有難うございました!
 来年も当サイト絆〜KIZUNA〜を宜しくお願い致します(*´∀`*)
 皆様、よいお年を!

君捧SS「レトロゲーム」おまけ

 120文字程度のSSで連作してみよう企画。

『君に捧げる物語』
「レトロゲーム」おまけ
SIDE:長堀千早


1.
 レトロゲーム展に友人と遊びに来た。
 幼い頃に祖父の家の近所の駄菓子屋に置かれていたのと同じゲームの筐体機を見つけ、懐かしさから思わず頬が緩んだ。
 どのくらい時間が経ったのか、予め崩して持っていた30枚の10円玉が無くなった。


2.
「――チッ、両替してくるか」
 席を立ってキョロキョロと両替機を探していると、ふとワニをハンマーで叩くゲームの方から小さな声が聞こえて来た。
 まるで蜜事中のような、甘い女の声――


3.
 一体声の主はどんな奴なんだろうかと、僅かに湧いた好奇心。
 微かに顔が確認出来るまでに近づいた先にいたのは、見知ったクラスメイトの顔。
「水瀬……?」
 自分と深い関わりのある、霜月蓮の親友。
 予想だにせず聞いてしまったクラスメイトの甘い声に、不覚にも顔が赤くなってくるのが自分でも分かる。


4.
「……見なかったことにしよう」
 そうだ、俺は何も見なかったし聞かなかった。 誰に聞かせるでもなく呟き、両替機を探していたことも、友人達と来ていたことも忘れ、俺はその場を後にした――


*END*

 思わぬ不幸な目撃者、千早。
 明日彼はどんな顔をして教室に行くんでしょうね(*´∀`*)ふふ

君捧SS「レトロゲーム」2

 120文字程度のSSで連作してみよう企画。

『君に捧げる物語』
「レトロゲーム」2
SIDE:パパ


6.
 玄関に買い物袋と鞄を置き、荷物を気にする花白ちゃんを抱き上げて寝室に向かう。
 そっとベッドに下ろし、彼女の顔を囲うように両肘をついて覆い被さる。
「だめ、ちゃんと冷蔵庫に……ふ、ぁ……っ!」
「平気だよ。要冷蔵品は買ってないから。だから、僕に集中して?」


7.
 耳元で囁けば、触れる吐息に花白ちゃんがビクリと身体を震わせる。
 顔中に触れるだけのキスの雨を降らせていると、僕の首に彼女が両腕を絡ませてくる。首に伝わる微かな腕の震えに煽られた僕は、白い首筋に歯を立てた―――


8.
「―――ぃたっ!」
 痛みから上がった小さな悲鳴にすら、僕の心は満たされていく。
 酷いと涙声で責める彼女にごめんねと謝り、赤くなった首筋を今度は労るように舌を這わせていく。
 そうしている内にもう一度噛みつきたい衝動に駆られ、自分にもこんな狂気的な一面があることに気づかされる。


9.
 二人で過ごす日々の中で、僕の新しい一面が生まれたのだろうか。
 日々育つ君への想いの花は、絶えず種子を増やして咲き続ける。
 永久に咲き続ける、その花の名は――


*END*

 最後レトロゲームから逸れましたが、花白の天然っぷりに振り回されるパパを書けたので満足です(*´∀`*)と言うか、二人は天然カポーです。

君捧SS「レトロゲーム」1

 120文字程度のSSで連作してみよう企画。

『君に捧げる物語』
「レトロゲーム」1
SIDE:パパ


1.
 花白ちゃんとの買い物中に通りかかったゲームセンターの一角でレトロゲーム展をしていた。
 僕には懐かしい10円ゲームばかりだっだけれど、花白ちゃんにとってはどれも初めて見る筐体機だったようだ。
 キラキラと目を輝かせてプレイする姿はとても可愛らしいけれど、彼女との年の差を改めて感じて切なくなった。


2.
 ひとしきりレトロゲームを楽しんだ後、数年振りに2人でワニをハンマーで叩くゲームをすることに。
 暫くするとワニのスピードが速くなり、焦りだした花白ちゃんから「やっ! あっ…ぁっ!」と、まるで情事中のような甘い声が零れ出し、僕は急いで花白ちゃんの手を引いてゲームセンターを後にした。


3.
 離れた人気のない通路で手を放し、「まだ途中だったのに〜!」とむくれる彼女の唇に口づける。普段の僕らしからぬ行動に、目を閉じる直前に花白ちゃんが目を丸くしたのが見えた。
 僕を煽った花白ちゃんが悪いんだよ……?


4.
 人気もなく死角にもなっていたから誰にも見られていないと思うけれど、深いキスを終えた花白ちゃんの顔は真っ赤で、誘うように潤んだ瞳で見つめられ僕は途方に暮れる。
 ……しまった、ここから動けない。


5.
 花白ちゃんに顔を下に向けて足元を見ながら歩くように言い、急いで帰路につく。
 いつもなら気にならない横断歩道の赤信号が、今日はやけに長く感じる。
 手を引かれる花白ちゃんが「もう平気だから」と言うけれど、平気じゃないのは僕の方。
 人目を気にすることなく、早く君に触れたい―――


2へ続く

 灰羅は幼い頃、レトロゲームではビデオゲームだとパズルボブルやぷよぷよが好きでした(*´∀`*)直ぐにゲームオーバーになったけど
 他には10円か20円で1プレイできるコインゲームで、タイミングよくボタンを押して落雷やマムシを避けて山頂を目指すと言う登山ゲームが好きでした。クリアしたら景品口から飴ちゃんが(*´∀`*)あれまたやりたい!まだどっかにないんだろうか(´・ω・`;)
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