7月の始め

実家に届け物をする為にバイクを出した


時刻は17時半を少し回っている


通勤時間帯

実家に寄った後に 更に予定を抱え 怪しい雲行きをおしてのバイクだった



移動時間がはっきり読めるのが バイクの利点だ



それでも ハマりやすい道路状況を考えて 高速を選択

実移動距離で約1.5倍 高速代も掛かるが 時間には代え難い



インターのETCゲートを抜ける時に
向かう先の空が やけに暗いのが見えた

「なんかヤバいな」

そうは思っても もう車に乗り換える時間は無い



走り出してしまえば
周囲の車よりも 少し速い速度を維持できて
高速は快適だった



都県境を超えた頃

いよいよ空が暗くなり 空気がスッと冷える



パカン


ん?

ヘルメットに何か当たる音がした


虫が当たったのかな?



カツン パツン コツン
コツコツコツ…



それにしても多い



そう思った次の瞬間 どしゃ降りの雨の中に居た


スポーツツアラーの小さいカウルに 身を沈め腰をシートの後方にズラすと 車体が一気に安定する


身体は少し窮屈だけど 気持ちが楽になった



僕は
雨の走行は苦手だ

4輪に比べ 何かあった時のマージンがあまりに少ない


それでも 速度を維持したまま行けたのは
安定したポジションを見つけられたからだろう



全体の流れは雨の所為で 少しゆっくりとなる

前に追い付くと 早めに追い越し車線に出て ライトを上向きに変えた



この速度に雨

いきなり車が車線変更してきたら どうにもならない


事故らない為には 速度を落とすのが一番だけど
アドレナリンの駆け巡る身体は それが出来なくなっていた


目を見開き
一台 一台の車の動きに注意し
轍の水溜まりを避ける

時々 ミラーを見て
追い付く車も気にしなければ




大型トラックの横を抜けて前に出る瞬間
トラックにぶつかった空気の塊が 僕をバイクごと押した

その揺れで
ハッと 我に返る




もう雨は上がり


夕日に照らされた路面がキラキラと光る

前走車の巻き上げる水しぶきに 小さな虹が見えた