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204ネタバレ?(男→古←ヘカ)

その白い磁器の様な肌は赤く腫れ、裂傷も見られる。きらきらと輝く銀糸の髪は見る影もなく泥と埃と、血で汚れていた。
それでも泣きわめくことはしなかったのだろう。目元だけは乾いていた。自分が良しとしないものに対しては何があろうとも屈しない強い芯であるが故に必要以上に暴行されたことは想像するにたやすい。挑む様に決して折れぬ瞳で見ることは相手を逆上させ、煽るだけだと知りながら、怯えることも泣くことも屈することも良しとしない古市はただ振り落とされる暴力にひたすら耐える。そうなった古市を見る度に男鹿は苦しくなる。あの時ちゃんと手放せていれば古市はこんな理不尽な目に遭うこともなかった。それでの己の欲望(欲望、というのだろうか。けれど男鹿が古市に向ける感情は淀んではいないが綺麗なものとは言い難い。)故に遠くへ古市を離してやることは出来なかった。今だって、守れなかったくせに他の男に抱かれている古市にも勝ち誇ったように口の端を吊り上げる男にも腹を立てている。
「古市を、返せ。」
「貴様がそれを言うのか?貴之を守れず、傷つけるだけの存在の貴様が?自惚れるなよ、役立たずが。」

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男鹿に「この役立たず」って言いたかっただけの小話←
優しさに胡座かいてると誰かに掻っ攫われるよ!

秘め事は真夜中の内に(おがふる)

「来週末、空いてるか。」
珍しいこともあるもんだ、と古市は思った。今まで予定なんぞ聞いたことも聞かれたこともなかったからだ。強いて言うならば、古市が週末にデートするから邪魔するなと言うくらいなものだった。(勿論男鹿は即座にそれを邪魔しに行くという予定を週末に入れる。)最近は無くなってきたが、休日はどちらかの家でゲームする、というのが暗黙の了解だった。外に出るともれなく絡まれる為、自然と家の中で遊ぶ方へと移行していったのだ。ともかく、そんな二人であったから休日の予定なんぞ聞くこともなかったのである。
「一応空いてるけど…どうしたんだよ、急に。珍しい。」「花見、行かねーか。二人で。」
「三人、の間違いじゃねーの?」
ベル坊を数に入れないなんて酷い親父だな、なんて呆れた視線を向けてやればそこには思いのほか真剣な顔をした男鹿がいた。古市は驚いて思わず凝視してしまった。
「二人で、だ。ベル坊もヒルダも行かねー。」
お前、ベル坊と15mちょいしか離れらんねーんじゃなかったのかよ、ヒルダさん行かないのかよ、潤いが無くなるだろうが。いずれのツッコミも古市の口から発せられることはなく、ただ心底訳がわからないといった様に、一言。

「…なんで?」



男鹿が古市を誘う数日前。ベル坊と男鹿は向かい合い、何故か正座していた。ミルク片手に部屋を訪れたヒルダは何事かと形のいい眉を歪めた。
真剣な表情をした男鹿が、一言。

離婚の危機だ。

真顔で言ってのけた男鹿にヒルダはこれ以上ないほど眉間にシワを寄せ、文句を言ってやろうと口を開きかけた瞬間、こつん、と軽い音がした。
「坊ちゃま…?」
目を見開いて口をぱかりと開けたベル坊が男鹿を見たまま固まっていた。口を開けたせいでおしゃぶりを落としたらしい。
「…ふぇ…」
「ベル坊?」
「坊ちゃま…!?」
まさか。
「ビェェェェェン!!!」
久々の大癇癪である。


「貴様が古市にフラれようが捨てられようが心底どうでもいいが…、坊ちゃまが望んでおられる以上なにがなんでも古市を説得しろ!!絶対だ!」
せっかく作ったミルクは哺乳瓶ごと大破しジャンプは塵と化し、二人とも焦げくさい。最近ではあまりぐずったりしなかったのだが、まさか古市のことで癇癪を起こすとは、思っていた以上にベル坊は古市を気に入っているのだとヒルダは認識を改めた。
「言われなくてもそうするっつーの。つうか俺、古市に捨てられでもしたら死ぬわ。」
またしても真顔で言い切った男鹿についに踵落としが決まった。実に華麗で的確なヒルダのそれは、男鹿を床に減り込ませたのだった。

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まだ八重桜が咲いてるから花見ネタまだ大丈夫だよね!←
続きます。

ヒュペリオン2(何年か後でベル+ ラミ)

おがふる前提成長したベル+ラミアin魔界(ほんのり古←ラミ要素有)


「ベルゼ様、お伝えしたいことがございます。お時間、宜しいでしょうか。」
背丈も伸び、声も変わった自分の様にラミアも美しく成長した。少々高飛車ではあるがフォルカスの助手も立派に勤めているらしい。そんな彼女が無躾にもこんな夜分に王子の自室に訪ねてくるなど珍しいこともあったものだ。当然、ヒルダは軽く眉根を寄せ、窘める。
「ラミア、どうしたのだ。こんな時間に訪ねてくるなど非常識だぞ。」
「解っています。無礼は承知です。けど…、今でなければいけないのです。」
「それほど急ぐことなのか?私が、」
「ヒルダ。いいから。ラミア、それは俺だけが聞いたほうがいいこと?それともヒルダも聞いてもいいこと?」
言い募るヒルダを制し、魔族の王子、かつて人間を親としたカイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世が辛そうに顔を歪めるラミアを見つめた。
「…出来れば、人払いをお願いします。」
「判った。ヒルダ、頼む。」
「坊っちゃま…!」
「大丈夫だよ、ヒルダ。このラミアは本物だし、ラミアが俺に危害を加えることもない。だから頼むよ。」
ベルゼのお願いにヒルダはぐっと言葉を詰め、やがて脱力した様に深い溜息をつき、「…少しだけですよ…」と重厚な扉の向こうに姿を消した。その姿に、なんとなく彼の人を見た気がした。遠ざかる足音を聞きながらベルゼはラミアに此処に来た理由を問うた。
「で、どうしたの?珍しいじゃん、こんな夜中に。」
「…今日、薬草調達及び調査の為にバティンの庭園に行きました。」
バティンの庭園とはウ"ラドの魔境の奥深い場所で、その昔バティンという悪魔が住んでいたとされる危険区域だ。樹海の最深部は少しずつ調査が進んでいるとは言え、まだまだ未明の土地であった。
「え、1人で?危なくね?」
昔その区域に入ろうとしてヒルダにこっぴどく叱られたのでよく覚えている。
「いえ、調査隊と一緒でしたので大丈夫です。…ベルゼ様、」
一度言葉を切り、きゅ、と綺麗に揃えられた膝の上で両手を握りしめる。そして、意を決して震える口を開く。
「古市に、会いました。男鹿とは話しませんでしたが、共に居るようでした。」

ベルゼが三白眼気味の目を見開く。喉が震えて声が詰まる。けれど伝えなければ。これが私が古市と男鹿の為に出来る最後の罪ほろぼしだ。
「古市から伝言があります。…『ごめんな』…だそうです。」
何に対しての謝罪なのか。そこに込められたいくつもの想いに泣きそうになる。謝るのはこちらの方なのに、憎悪も憤怒も侮辱も全て背負って彼らは消えた。本来ならばそれら全ての矛先は自分であったのに、誰にも自分が恨まれることのないように傷つくことがないように彼らはわざわざ裏切り者となったのだ。どこまでも優しい、俺の両親。

「ラミア、飲もう。飲んで全部、酒のせいにしちゃおうよ。」
俺が泣くのもラミアが泣くのも酒のせいなんだ。
どこからくすねてきたのか小さな琥珀の瓶の中で酒が波打つ。もう決壊寸前の情けない笑顔だ。私もベルゼ様も。味も分からず飲み干した酒に喉を焼かれ、少し笑って、二人して、泣いた。
優しい2人の人間を想って、泣いた。

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バティン…ソロモン72柱第18位30の軍団を率いる蒼白公。悪魔にしては珍しく愛想が良く、召喚者に薬草、宝石の知識を授けたりする。蛇の尾を持つ人の姿で青い馬に跨がって現れるという。

「裏切り者」となって姿を消していたおがふる。成長したおがふるの「子供」のベル坊と古市が初恋だったラミア視点で。好きのベクトルは違えども確かに好きな人達だったんだ、と何年か越しにやっと泣けた二人。

エーデルワイス(おがふる)

男鹿にとって古市とは"花"だった。見ていれば荒んだ心も癒されたし、和やかな、自分とは縁遠いと思っていた穏やかな空間を手に入れられた。
花とは自分を省みずに他人に尽くすそうだ。己の持つエネルギーを他人に分け与え、結果自分は枯れてしまうと知りながら頓着せずに他人の為に心砕く。
正しく古市だと男鹿は思う。見た目の美しさもさることながら芯の強さも凛とした誇りも好ましい。
そんな古市を男鹿は心から愛した。それを純愛と言うのか、はたまた狂愛と言うのかは小さな魔王のみぞ、知る。


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おがふる+なんとなしにベル坊。男鹿に献身的な古市ってお花ちゃんだよなあと。
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