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僕と先生/坂木司



話題:本の感想


前作「先生と僕」に続いて二葉と隼人の事件簿シリーズ第二弾。
大学二年になった家庭教師(仮)の二葉と、その教え子である隼人くんが、二人の周りで起こる「日常の謎」を解き明かしていくほのぼのミステリ。短編5作収録。この二人、やっぱり癒されます。
同作者のひきこもり探偵シリーズよりも年齢が低いせいか、ミステリの度合いも低め。大前提だけど、人が死ぬとか傷つくとかの事件は起きません。後味のいい話が多い。

普段はクールと称される隼人くんだけど、ちゃんと年相応に見える場面があるとホッとする。前作よりも中学生らしい一面が増えたような気がする。でも、前作同様に計算高い部分も健在。いいキャラしてます。中学生ながら、物怖じせずきちんと自分の考えを持っている隼人くん。彼の言葉に、なんだかこちらも考えさせられます。でも隼人くんみたいな子は一度ポッキリ折れておいた方がいいかも。
二葉の心配症は相変わらずだけど、心配するところが斜め上すぎて可愛い。そう来るか!と色々突っ込みたくなる。心配症を除けば、なんだか坂木に重なるところがあるなあ。はっきりと物を言う隼人くんの言葉は確かに正論なんだけど首を傾げるところもあって、人よって受け取り方はさまざまだと思う。でも次に続く二葉の言葉が読み手のモヤモヤを解消してくれる。そう一筋縄じゃいかないんだよ、ってやさしく諭すみたいに。ミステリの面での先生は隼人くんだけど、さすが年上というか、人生経験では二葉の方が上だよね。
二葉が属する推研メンバーも登場。和気あいあいとその中に交ざる隼人くんは微笑ましい。話に出てくるミステリ小説にはちょっと手を伸ばしてみたくなります。

なんだか読み終えたくなくて一日数ページだけめくっていたら、こんなに時間がかかってしまいました。続編は出ないのかな。

以下、各章のあらすじと感想。少しネタバレ注意。
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チーズと塩と豆と/江國香織ほか


話題:本の感想

 

短編集を探していて見つけた一冊。かわいらしい装丁に惹かれ、図書館から借りてきました。
角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織という、四人の直木賞作家が書き下ろしたアンソロジー。みんな有名作家さんだけど、こうやって手に取るのは初めて。
読みやすく癖のない文体で綴られる、人々の心の揺れ。どことなく寂しい雰囲気のなかで、こちらの心までも揺さぶられる。
ゆったりとした時間が流れるような、そんな素敵な話。テーマが食事のせいもあり、読んでいるとお腹がすいてきます。

四作とも舞台はヨーロッパ。むっと匂い立つような緑、見渡す限りの田園、からからに渇いた土の色。夏の生ぬるい空気、そして人々をつなぐ異国の料理。まるで自分自身がヨーロッパを旅しているような、そんな色鮮やかな光景が目に浮かぶ。
作品名のような、凝らない素朴な料理の描写は、人々の心をそのまま映すよう。うまく言えないけど、すごく良かった。

個人的に洋名の人物ってちょっと苦手なんだけど(覚えられない的な意味で)、登場人物が少ないせいかそこまで気にならなかった。どうでもいいけど、短編ひとつ読み切るたびにものすごい脱力感が。人物に感情移入しすぎなのか。

一番のお気に入りを挙げるとしたら、やっぱり「神さまの庭」かな。初っ端から引き込まれる。
母の死をきっかけとした父との衝突。田舎の因習に辟易し家を出た「わたし」に、父は何かと「ちゃんとしたものを食べろ」と言う。
世界中を飛び回る長い旅路の途中、人との出会いを通してその言葉の意味に気づく「わたし」。
何のために食事をするのか。そして誰かとともに食事をすることの意味。これまでいろいろな話に取り上げられたテーマだろうけど、そんなごくありふれたことに気づかせてくれる話。

作者の他の作品にも手を伸ばしてみたくなるような一冊でした。

お出かけついでに


話題:今日買った本

坂木司の『僕と先生』、買ってしまいました。
本当は図書館で借りるつもりだったけど、いつの間にか予約が3件…。待ちきれないので、思い切って買ってきました。ほくほく。

シリーズ前作の『先生と僕』から7年近く?かな。
何年か前に前作を読んで、「続編はないのかー」と残念に思っていました。坂木司に興味を持ったきっかけが『先生と僕』だったので、正直すごく嬉しい。
じっくり読みたいと思います。

そういえば明日は本の返却期限でした。
図書館行かなきゃ。

日々の非常口/アーサー・ビナード



話題:本の感想



書店で何気なく手に取った一冊。
エッセイはあまり読んだことがないんだけど、はじめの数ページをめくってみたらすごく面白かったので購入。

アメリカから日本に来て間もない時期、作者が体験した日本のアレコレについてを記したエッセイ集。作者の日常を通して、文化の違いや社会・政治問題まで、幅広いテーマを取り上げた一冊。

作者が異文化に触れて戸惑ったり、奥深い日本語の表現になるほどと感心したり。日本以外にスポットを当てた話もあり。読んでいて、思わずクスッと笑ってしまうような面白さがいっぱい。
一つ一つの話が短いのでさらっと読める。通勤通学の移動時間にぴったり。

日本人ながら、共感できる箇所がたくさん。
言われてみれば考えたことがなかった日本語の不思議や、英語にはない日本語特有の表現。長く日本にいるとなかなか気づかないような、外国人ならではの視点が面白い。

以下、少し内容に触れます。
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仔羊の巣/坂木司


話題:本の感想



タグを使うのは初めてなのでどきどき。
「青空の卵」に続いて坂木司連作第二弾。
今回もリーマン坂木くんとひきこもりの鳥井くんが活躍します。
読み終えた後ほっこりするのは相変わらず。やっぱり登場人物の心の揺れとか心理描写とかそういうのが上手い。でも坂木の心の綺麗さを前にすると、自分の心の狭さと性格の悪さが露呈する。なんだか複雑な気分。
前作に引き続いて巣田さんや栄三郎おじいちゃん、そして警官の滝本小宮コンビが登場。使い捨てのキャラクターを作らない姿勢からは、自分のキャラクターを愛してるってことが伝わってきます。個人的に巣田さんは好きなキャラなので出してくれて嬉しい。

以下、ネタバレと各章の内容について。
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