5分の1の感覚器官で始まる物語、
視覚に入り込む、触れない幻
掴もうと手を伸ばせば、指の隙間から逃げる水槽のなかの水泡。
それと共に逃げたオレンジ色の死体、それはいつかの僕のようで
――ああ、そうだ。如何して僕はこんな処に居るのだろう――
もう何も覚えてなんかいない。ただずっと終わりを待っているんだ、
遥か昔感じていた光達がいつしか滲んで、水槽の底に茶色い水溜まりを作るまで。
遠くでワルツが聴こえる
青い鳥のコ-ラス
重いざらつきの広がる口内、
苦い鉄の味
終曲を匂わせて上がる水温、
始まりに向かうわずかな鼓動
名も知れぬ花が咲いたなら、
僕は小さく囁く 「アメ-ジン」
――終わりの始まりまで、あと5秒
2010-10-29 22:34