「酔ってない。」@/2

※成人向け表現注意※
R18








 

愛沙(どうしよう……)

身体全体がドラムになったかのように鼓動が鳴り響いている。
体重の多くをかけてもびくともしない後輩の肩に男を感じてしまって、
決死の覚悟で挑んだ作戦をふいにして逃げたくなる。

後輩の手にはいちごのキーホルダーのついた鍵。

翔琉「もうすぐですからね〜!倒れちゃだめですよ〜」

いつもどおり世話焼きな彼を騙すのは気が引けるけれど、

愛沙(ドキドキしすぎてそれどころじゃない、かも)

鍵が開く音がすると、見慣れた金属製の白い扉が開いた。

*******

翔琉「愛沙さん、愛沙さん!お家つきましたよ〜」

部屋の中に入ると翔琉は電気のスイッチを手探りで探す。
愛沙の重みのかかっていない方の手でスイッチを押そうとすると、
ふいに肩の重みが増した。

翔琉「うわぁ、ああっ――」

よろめいてしまって廊下に倒れる。
幸い、愛沙の肩を守るような形に倒れることができた。

翔琉「愛沙さん、大丈夫ですか?」

翔琉のシャツにしがみついて、胸に倒れこむような姿になったまま、
動かない。

翔琉「愛沙さん?どこか打ちましたか?」

労わるように翔琉が愛沙の腕に触れようとする、
すると、
愛沙の腕がさらにしがみついて、抱き着くような形になった。

翔琉「愛沙さん?ええと……玄関で寝たら風邪ひいちゃいますよ?もうちょっとがんばりましょう?」

愛沙「わ、私は、これでも、がんばってるんだから……」

翔琉「はいはい。さっきも居酒屋で聞きましたし、愛沙さんががんばってるのは後輩である僕にもわかりますから」

ポンポン、と愛沙の肩をたたく。
宥めるように、子供にするように優しく。
そのしぐさがもどかしくて、愛沙は上体を起こすと、倒れたままの翔琉の顔の横に両腕をついた。

愛沙「そういう意味じゃなくて……こういう意味で、がんばってるつもりなんだけど!」

翔琉「こういう……って」

愛沙「だからその……迫ってんのよ!にっっぶいなぁ!!!」

愛沙(言っちゃった)

緊張しすぎて声が裏返ってしまった。その決まらなさが恥ずかしい。
なのに、肝心の相手は

翔琉「……」

深刻な顔でこちらを見ている。
確実に甘い雰囲気ではない。

愛沙(もしかして慣れてなさすぎて変なことしちゃった!?他の人はこんなことしない?)

大きな間違いでも起こしたんじゃないか。
そう思うと背筋が冷たくなってくる。

翔琉「あの……愛沙さん」

愛沙「な、何?」

翔琉「これは、ダメな酔い方です。」

ぴしゃ、と言うと、私の腕をつかんで立たせようとする。
とても冷静に。

愛沙(でも、ここで負けるわけには、いかない……)

何に、というと何にかもよくわからなくなってきた。
何故ならそれどころじゃなく胸がどきどきとうるさいから。
アルコールなんてほとんど飲めなかった。
普段からそんなに弱いほうじゃないから酔って介抱なんてこともされたことがない。
なのにどうして後輩に送ってもらうようなことになってるのか、と言うと――

愛沙(私が仕向けたから、なんだよね……)

今更引き返すことはできないと思うとお腹の奥がきゅっとしまる。
急に思考がクリアになって来たみたいだ。

翔琉「ほーら、行きますよ〜……わぁ!」

起き上がりかけた翔琉にぎゅっとしがみつく。

翔琉「もう、ふらふらしすぎです。お水でも飲みま――」

愛沙「酔ってないよ」

翔琉「え?」

愛沙「今、全然酔ってない」

翔琉「……ええ、と。酔ってる人は酔ってないって言うものですよ。
  はいはい、ほら、お水飲んで今日は早く寝たほうが良いです」

愛沙「いつも一緒に飲んでるから知ってるでしょ?私、お酒弱くないよ」

翔琉「疲れてると回るってこともありますよ」

どれだけ誠実で、頑ななんだろうか。

愛沙(そんなに、嫌なの?)

いつもより少し硬い声と表情がじれったくて、くやしくて、
しがみつく腕の力をふっと緩めて、背を伸ばした。

翔琉「んっ……!」

唇を押し付けるだけのキス。

一方的に押し付けて離れると、息を吐いて翔琉の表情を恐る恐る見ようとするが、
次の瞬間、近づいて来たものによって視界と――唇が塞がれた。

愛沙「ふっ……ん……」

翔琉「ん……」

つかの間のキスの後、唇が離れる。
顔が離れて見えたのは感情の見えない目。

翔琉「誘ってるって受け取らせてもらって、いいんですね?」

愛沙「……」

そう言われると言葉が出ない。

翔琉「いいですか?」
愛沙「う……うん」

翔琉「ふぅ――――酔ってて覚えてませんとかはナシですよ」

言い捨てると再び唇にキスを落とす。
今度は吸い付くように、甘く噛んで。

愛沙「ん……んぁっ」

息をつくと甘い息が漏れる。
気づくとスカートの裾のほうでストッキング越しに触れる大きな手があった。

腿から膝、ふくらはぎと伝い、そのままくるぶしに到達したかと思うと左右のパンプスが脱がされる。

翔琉「愛沙さん、ここじゃ痛いですから」

優しくささやく声が聞こえたかと思うと、
自然と手が膝の後ろに回り、体が浮き上がる。


廊下の先、暗い寝室に運び込まれるとベッドに横たえられる。

愛沙「うんっ……」

今度は首筋に吸い付くようなキスがあって、ゾクリとした感覚が襲う。

翔琉「先に、脱がせちゃいますね」

愛沙「え?」

ぐっと腰を掴まれたかと思うと下半身が浮く。
スカートに手を入れられたかと思うとするするとストッキングを脱がされた。

愛沙「あ、ありがと……う?」

翔琉「びりびりーっていうのもそれはそれで良いんですけどね」

なんだか気恥ずかしくて視線をそらす。
けれど、唇へのキスでそれは叶わなかった。

愛沙「ん……もぅっ」

離れたかと思うとまた塞がれ、名残惜しそうに頬に滑りながら離れる。
腹に温かい感触があると思うと、ブラウスのボタンを片手で器用に外されていく。

翔琉「シャツ……皺になっちゃ困りますよね」

愛沙「えっ」

翔琉「先に外しちゃいますね」

何を……と聞くよりも先に手際よく脱がされていくと、当たり前のように同じ理由でスカートもはぎ取られてしまった。
下着だけになったところで翔琉を見上げるとしわくちゃのシャツ。
いつも昼間に見ている性格を映したようなパリっとアイロンがけされたシャツとはまるで違う。
そのシャツを雑に脱ぎ去ると愛沙に覆いかぶさる。
大きな手のひらは愛沙の肌をかすめていく。

翔琉「愛沙さん……」

愛沙「あ……」

胸を柔らかく持ち上げたり先をもてあそぶようなしぐさをされながらもキスの雨はやまない。

愛沙「ふぁ……んっ」

身をよじっている間にふいに下着が緩み、膨らみが露わになる。

その先端のところに唇の柔らかい感触が訪れる。

愛沙「ひゃっ……」

片胸を手のひらでもてあそびつつ、
乳房の先や鎖骨、二の腕と、キスはどこにでも降る。

愛沙「んんんぅ、もう……」

じれったい感触に腿の裏が落ち着かない。
その様子に気づいた翔琉が動いた。

翔琉「愛沙さん……」

愛沙「あっ」

ひょい、と片足を持ち上げられてしまう。
秘めたところを隠す布の面積が心もとなく、上がってしまっている体温の中、顔がさらに熱くなるのを感じた。
あろうことか翔琉の手は一番敏感な場所を覆う布の縁をすべり、布の下へと潜り込む。

翔琉「愛沙さん、濡れてる」

にや、と笑う顔を見て、そっぽを向いた。

翔琉「恥ずかしがらないで……でも恥ずかしがってる愛沙さんかわいすぎる」

愛沙(どうしてそういうことを言葉にするの!)

恨めしい気持ちがわくものの、すぐにその気持ちもどこかへ追いやられる。

愛沙「んぅっ!やっ……!」

ぬるりとした感触のあと中に侵入してくるものがあった。
指が、中心を捕えようとやわらかく中を探っている。

愛沙「んっ、あっ、あっ、だめ……っ」

翔琉「ここじゃない?」

愛沙「ちが……わなくないけどっ!ああんっ!」

甘い声に恥ずかしがる余裕もないほど、快感が押し寄せる。
ゆらり、ゆらり、緩慢な感覚とともに。

愛沙「ふぁっ、ああん!ああんっ」

翔琉「愛沙さんっ!」

どうしようもない中心の感覚とともに、キスが口内を探る感触で淫靡な心地が体中を支配する。

翔琉「あいっ……さ、さんっ……!」

愛沙「あぁっ、ああっ、ああんっ……!」

ふいに訪れた奥の痙攣で、脱力する。

翔琉「愛沙さん、大丈夫?」

愛沙「う、うん……ごめん、慣れてなくて……私ばっかり……」

翔琉「それは全然。むしろ可愛い愛沙さんが見られて嬉しい」

にこ、と笑うのにどきりと胸が弾む。

愛沙(何か、できたらいいんだけど……)

自分から、と思うと羞恥で全身が熱くなる。

愛沙(今更、だけど、今までこういう関係じゃなかったんだし……)

どうするべきか、となんとなく翔琉を見る。

翔琉「もう……そんな潤んだ目で見ないで」

愛沙「え?」

腰に添えた手にぐっと力を入れられたかと思うと向かい合うような形に体勢が変わる。

愛沙「……っ!」

内腿に触れる感触にハッと息を飲んだ。
硬くなった男の物が触れていて、その感触を認識した途端に感情とともに蜜が湧き出るようにあふれ出ていることに気づく。

翔琉「いい……?」

愛沙「っ……」

気遣うような視線に伏目がちにうなずくと、男の先が入り口に触れる。

愛沙「んっ……はぁ……っ」

その些細な接触の感触だけで思わず腰が浮くのを背に回された腕で留められる。

じれったくて、苦しくて、心地よくて、飲み込もうとする体が蜜をどんどんとあふれさせ、腰がしなる。

翔琉の広い背中に手を回すと、お互いの距離が縮んだ。

翔琉「くっ……」

愛沙「んんっ!ああん!!」

滑らかに滑り込んだものを咥え込んだ中心が奥を探すように蠢く。
腰がゆらゆらと揺れて、

愛沙「あああんっ!」

恥ずかしげもない声が響く。

翔琉「くっ……愛沙……さん……っ」

うっとりとした声が先ほどまでよりもより甘美に鼓膜に響く。
しばらく中を満たす感覚があった後、引き抜かれる気配を感じてせつなく思っていると、

愛沙「あああああっ……!」

空虚さが襲う間際で一気に差し込まれ快感の波が押し寄せた。

翔琉「愛沙さん……っ!愛沙……!」

愛沙「ああっ、ああっ、あああっ!!!」


幾度かの波の後大波が押し寄せ、その波に飲み込まれていった―――。

 




→A/2へ続く