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脱出―GAME― シナリオ形式

脱出ーGAME―

=人物=       
ミナ(3)猫
斎藤(45)便利屋
涼太(21)便利屋の新人


〇排水溝の中

   静かな暗がりの道をミナが歩いている。

ミナN「私の名前はミナ。孤独を愛するおひとり様女子ってやつだ。
    間違えちゃいけないのは、付き合ってくれる人がいないからしかたなく一人でいるってわけじゃなくて、
    一人が好きだから一人でいるってこと」

   壁を隔てた向こう側から、

斎藤(声)「なぁなぁ……涼、今回の問題、どうやったら効率よくうまくいくかわかるか」
涼太(声)「えー。作戦は斎藤さんが考えてくれるんじゃないんすか?俺わかんないっすよ」

ミナM「他の参加者かな。おじさんたちが騒いでる。
    私は騒いだりなんてしない。いつも冷静沈着。そんな私にはこういう頭を使うゲーム
    ――いわゆる迷路とか脱出ゲームなんていう遊びがぴったりだ」

斎藤(声)「あぁ、もう無理だ!!俺の専門分野じゃねぇ!!」
涼太(声)「斎藤さん、離脱はできないですからね!やるしかないんですから」
斎藤(声)「わかってるけどよ〜」

ミナM「もう、うるさいわね……」
ミナN「私はくるっと方向を変えると、出口に続いているであろう道に体を滑り込ませた」

〇排水溝内入り口

   工具で道を塞ぐ鉄格子を外そうとしている斎藤。ガチャガチャと音が鳴り響く。

斎藤「だからな。ここをこうしてこうすると、ふたが開くだろ?」
涼太「いや、でもそうすると斎藤さんしか入れないじゃないっすか」

〇排水溝の中

ミナN「遠くでさっきのおじさんたちが頭を悩ませてるのが聞こえる。
    あんな簡単な仕掛けすら破れないなんて……知らない人に言うのも何だけどちょっと頭が良くない。
    ちなみに私はあーんな仕掛けすぐに解いちゃった!」

   ミナ、進行方向を向き歩く。

ミナN「私は脱出ゲームが大好きで、暇さえあれば新しい問題にチャレンジしてる。
    こういうゲームって数をこなしてると同じような仕掛けに出会うこともあって――」

   ミナ、ピタッと歩みを止める。

ミナM「て、行き止まりだわ。あっちに行きたいのに鉄格子が嵌められてて通り抜けられそうにない。
    けど……こういう時こそ腕の見せ所なのよね」

   ミナ、周辺を観察しながら、

ミナM「怪しそうな足元の石を蹴っ飛ばして、と……何もない。ってことは。
    ぐるりと見渡して頭の上を見る。怪しい……周りの天井と色が違う、茶色い鉄板だ。
    もしかすると目の前の行き止まりはフェイクで天井のほうに何か仕掛けがあるんだろうか。そっと押してみる。動かない」

ミナM「(困った様子で)どうしよう。今まで解けなかった問題はないのにヒントがなさすぎる。
    どうすればこのゲームから脱出できるのか……。
    そういえば、さっきはおじさんたちがうるさくて離れてしまったけど、
    さっきの部屋の方にこの出口を抜けるヒントがあったんじゃない?……うん、戻ってみよう」

   ミナ、排水溝の入り口方向へ駆け出す。

〇排水溝内入り口

   狭い道を屈みながら必死に進む斎藤と涼太。

斎藤「くそーーっせまいな!!」
涼太「斎藤さん、太ったからじゃないですか?」
斎藤「うるせえ!!まさかこんな狭いところに入る羽目になるとは思わなかったんだよ!」

ミナM「げ、さっきの二人だ……うるさい男性ってあんまり関わりたくないのよね。でも回れ右してもまだ通り抜ける方法わかってないし……」

涼太「あ」
ミナ「え」
斎藤「あ?なんだ?」

ミナM「ばっちり、若いほうの男の人と目があってしまった。嫌な顔で見てたのがバレて絡まれたりしたらどうしよう……」

涼太「(とびっきり優しい声で、)怖がらなくて大丈夫だよ。僕たち悪いものじゃないから」
斎藤「どした?って、(ミナを見つけて)ああああああああ!!!!」
ミナ「ひゃっ!?」

ミナN「大声に驚いていると、おじさんが屈んだままのしのし迫ってくる」
ミナM「やだ、なんなの!?」
ミナN「ぐっと肩を掴まれた、と思ったら、おじさんは天井をふさいでいる鉄板に体当たりして―――」
斎藤「おりゃあ!!」
ミナ「ぎゃあ!」

   斎藤、ミナを抱えたまま、天井にタックル。頭上の鉄板が外れる。

〇住宅街の道路

   息も絶え絶えな涼太と斎藤。
   斎藤の腕にはミナ(猫)が抱きかかえられている。

涼太「ちょ、力技で地上に帰るとか……」
斎藤「軽い板だからな!あーーー狭っくるしかったが見つかってよかった!!」
ミナ「(不満そうに)うー」
斎藤「もう、どっかいったりするなよ?ってアイテテテテ!!」 

ミナ、斎藤の腕の中で暴れる。

ミナ「うなぁーーー!」
涼太「あー、もう、斎藤さん乱暴につかんじゃダメですって!しかもそのまま天井に体当たりって、この子怖がってるじゃないですか!(ミナを優しく抱きかかえて)ほらほら、大丈夫だからね。このこわ〜いおじさんも僕も街の便利屋で、君のご主人様から君を探すようにって頼まれてきたから」
ミナ「なー」
斎藤「ほらほら……飼い主さんも困ってるし、帰ろうな?ミナちゃん?もう脱走しちゃだめだぞ?」
ミナ「にゃぁ……」
涼太「んんんーーっ、かわいいねぇ〜!ミナちゃん、お外大好きなんだね!」
ミナ「にゃあ!」
涼太「でも危ないとこに入っちゃだめだよ。ミナちゃんがどこかにいっちゃうたびに君の飼い主さん、心配してるからね」
ミナ「なー…」
斎藤「うん、じゃあ、帰ろうな。これ、飼い主さんが持たせてくれた大好きなかつおのおやつだぞ〜」
ミナ「にゃー!!にゃ!にゃ!!」

ミナN「こうして、今回の脱出ゲームは終了。体力自慢のおじさんに天井を突き破ってもらって脱出成功なんて
……ちょっと怖かったけどなかなかスリリングな展開だったわ。予想もしないことが起きるからやめられない。
さて、今日のゲームもクリアできたってことにしておこう。それにしても……かつおはおいしいにゃ」


=END=

 

にわかなふたり―シナリオ形式(映像)


にわかなふたり

人物
坂巻隆聖(17)高校生
立川梓(17)隆聖の彼女


〇神社の境内(夕)
   木に寄りかかりながらスマホをいじっている坂巻隆聖(17)。
   正門の方をちらっと見て、またスマホに目を落とす。
   風で落ち葉が舞う。
   隆聖はぶるりと肩を震わせる。
   木の陰から立川梓(17)が現れ、隆聖の腕に抱き着く。
梓「お待たせー!」
隆聖「うわっ!何すんねん!」
   驚いて飛びのこうとする隆聖。
梓「ええっ、そんなに嫌がられると傷つくなぁ〜」
隆聖「梓、急やねん。驚くに決まっとるやろ」
梓「じゃあ急じゃなければ良い?」
   隆聖にぴったりとくっつこうとする梓。
   隆聖離れる。
隆聖「学校のヤツらに見られたら嫌やろ」
梓「えー。うちのクラスのユキマサカップルなんて教室内でもラブラブだよ?」
隆聖「あれは異常や!それに、関西人はあんまりベタベタとかせんもんやで!こっちのヤツら、距離近すぎや!」
梓「そうかなー」
   隆聖にくっつく梓。
隆聖「言った傍から近いな……」
梓「だって私、関西人と違うんですんやん」
隆聖「エセ関西弁やめろや!」
   梓、楽しそうに笑う。
   それを見て隆聖、呆れたように微笑む。
   梓の笑顔を見てそのまま、頬にキスをする。
梓「えっ」
   驚いた顔の梓。
隆聖「梓ってホンマ、困ったヤツやなって思って」
梓「そこは『可愛かったから、つい』とかじゃないの?」
   そっぽを向く梓。
隆聖「(笑いながら)ごめんごめん」
梓「もう……どっちが急なんだか」
   梓、隆聖に視線を合わせず、
梓「日も暮れて来たし、そろそろ帰ろっか」
   梓、焦ったように歩き出す。隆聖もそれに続く。
   隆聖、梓の手を掴み、握る。
   梓、思わず足を止める。
隆聖「今日、やっぱちょっと寒いな」
梓「さっきまでくっつかれるの嫌って言ってたのに?」
隆聖「今日は寒いし、特例や」
   梓、隆聖のほうを見て笑顔になる。
   梓、手を握りなおして恋人つなぎをする。
梓「こっちのほうがあったかいよ」
   梓、にっこり笑う。
隆聖「せやな」
   隆聖、梓に笑いかけ、二人で歩き出す。



=end=

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