お兄ちゃんは出て行った。
私がまだ小さい時に、出て行った。
「おにいちゃん、どこいくの?」
「ベル」
「あそびにいくの?」
お兄ちゃんはドアの前で立ち止まり、ゆっくりと振り向いた。
「そうだよ。遊びに行くんだ」
「ベルもいく」
「ダメ」
「なんで?」
「ベルはまだ小さいからお留守番だよ」
お兄ちゃんはにっこりと微笑む。
「お兄ちゃんね、退屈なんだ。平和で変化のないこんな日常が」
「たいくつ?」
「つまらないんだよ。つまらないのはベルも嫌いだろ? 楽しいほうが好きだろ?」
「うん」
暖かい手が私の頭の上に置かれた。
「いつかえってくるの?」
「いっぱい遊んだら。それまでいい子にしてるんだよ、ベル」
「わかったよ、いいこにしてる。おにいちゃんはやくかえってきてね」
「じゃあいってくるからね」
そう言って、お兄ちゃんは家を出て行った。
それからまだ、お兄ちゃんは帰ってきていない。
「どこにいるの、お兄ちゃん」
ベルはいつまで一人で待っていればいい?
まだ遊び足りないの?
ベルは退屈でもお兄ちゃんがいる毎日に戻りたいよ。
「ベルー? どこー?」
薺の声。
そういえば遊ぶ約束してたんだっけ。
楽しい毎日はベルも好き。
だけどお兄ちゃんがいない毎日はなんか淋しいよ。
いい子で待っていても帰ってこないなら、ベルは……。
「いたいた。何してるの? エミュ君向こうで待ってるよ」
「ゴメンなさい。エミュのところに行こうか!」
「また悪戯するの? もう止めようよ」
「嫌だ。悪戯は楽しいもん! 楽しくなくちゃ退屈じゃない!」
「全くもう……」
薺ゴメンね。
いい子にしててもお兄ちゃんは帰ってこないから。
ベルは悪い子でもいいの。
お兄ちゃんの言葉の意味わかるよ。
だからいい子で退屈な毎日より、悪い子で楽しい毎日をベルは選ぶの。
お兄ちゃんが帰ってきたら、悪戯は止めるから。
それまではベルの我が儘を聞いていてね。
お兄ちゃん、早く帰ってきてね……。
▼悪戯っ子はここにいる
≪楽しい毎日もお兄ちゃんがいればもっと楽しくなるのにな≫
「ジャンプすると元気が出るね! で、なんでジャンプしてるんだっけ?」
美人に描くよう頑張りました。
この中で一番年上なイメージでした。
「…(この体勢…どうやって着地したらいいんだ?)」
いつも呼び捨てにしてるので、敬称つけると違和感←
いつもボケ担当な感じな子なので今回は格好つけてみました。