でんりょう再び

俺は今年は1日も授業休まないと決めた。
前期が始まってから二ヶ月、今のところ順調に無欠で頑張っている。友人の康平も遅刻したりすることはあるけど、まあまあ頑張ってる。最近はほんと康平と一緒にいることが多くなってきた。
「デンゼル今日も休みかよ? さすがにやばくねえ?」
「知らねえよもう。あいつやる気なさすぎだろ」
「りょう二限ないっしょ? あいつにちょっと喝入れにいってくれよ」
「えーお前が行けよ」
「俺は二限入ってんだよ。頼んだぜー」
もっと言い返してやろうかと思ったけど先生が授業を始めてしまったから俺と康平は黙って教科書を開いた。
そういえばデンゼルに今週一度も学校で会ってない気がする。いい加減単位とれなさそうな気がしてきたから、仕方なく俺はデンゼルの家に行ってやることにした。
授業が終わってから俺の自宅までの家路よりも倍は遠いデンゼル宅へ行き、呼び鈴を鳴らしたが思ったとおり出てこないので鞄にしまってある合鍵で勝手にお邪魔した。
中に入るといろいろずれてて綺麗とは言えないベッドの布団が膨らんでいた。あーまだ寝てんのかよ。
「デンゼル、おきろー」
布団の上からぽんぽんと叩いてやるが、反応ナシ。
「お前そろそろやべーって」
ゆさゆさ。
やはり反応ナシ。
「いい加減にしろよテメー…」
痺れをきらしてぺろっと布団を剥いでやると、中から覘く安らかな寝顔。デンゼルはハーフだからもともと顔がめっちゃ整ってはいるんだが、そこに俺のバカップルというか恋人バカ補正が入るからそれはもう可愛くて可愛くてたまらない。起こさなきゃいけないことをすっかり忘れてついつい髪や頬を撫でながらその寝顔に見入ってしまった。
あんまり可愛いもんだからそのうちぎゅーってしてやりたくなって、ベッドにあがって布団の中に身をすべりこませてデンゼルをぎゅーってする。デンゼルの顎下というか胸元に頭を擦り付けると、デンゼルの吐息とか匂いをすぐ近くに感じられていつもの情事後みたいな落ち着きを感じる。本来の目的を忘れて俺は微睡みの中に沈んで行った。



目が覚めると、腕の中になんかいた。
「んあ?」
俺の胸元に顔をうずめているから誰かは正確にはわからないが、この慣れた抱き心地は一人しかいない。りょうだ。
「お前何して…」
眠気まなこで猫を扱うみたいにりょうの服を掴んで引っぺがすと、埋められていて見えなかったその寝顔が顕になった。
やっば。可愛すぎる。
すぴすぴ寝息をたてて、無意識か俺の方にすり寄ってくる。かわいい。
「りょう」
名前を呼んで揺すると、しばらくして伏せられた睫毛がゆっくりと動いた。小さなうめき声とともにその瞳が徐にこちらを とらえる。
「おはよ、何してんの」
「おはよ……あ”っ!!!!」
がばりと高速で起き上がったりょうは、何かをきょろきょろと探し始める。今何時だと聞いてくるから手元のスマホを確認する。一時だ。
「はあ!? いちじ!!!!」
「どうしたんだよ落ち着けよ」
「お前を呼びに来たんだよ! おい三限でっぞ!!」
「ええ〜いいじゃん、もう少し……」
りょうの腰に抱き付こうとしたら引っぱたかれた。そして馬鹿野郎とののしられる。
仕方がないからのそのそとベッドから起きる。心配してわざわざこんなとこまで来てくれたんだし、可愛い寝顔も見れたし、今日は全休の予定だったけど仕方がない。かわいいりょうに免じて学校に行くとするか。