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道化師の戯言

道化師は見上げる
闇に浮かぶ月を





光輝く貴方へ
届かぬ貴方へ

永久に美しいままで
いておくれ

そして私に微笑んでおくれ

もしそれが叶わぬのなら
今の貴方をこの瞳に
焼き付けよう

もしそれが叶わぬのなら
貴方という存在を
この体に刻み込もう

私が語り部となって
貴方を永遠にしよう



何処までも高く
浮いている貴方

何処にもいけない
哀れな道化

2つの道は交わらない

それが掟だと言うならば

私は甘んじてそれを
受け入れる



けれど想い続けること

それすらも叶わないのなら
それすらも許されないのなら

私は仮面を剥いで
貴方の下へ向かう

どこまでも





眠りの森の道化師は今日も歌う
眠りの森の道化師は今日も踊る

月と道化師

貴方が輝く光であるならば
私は悍ましい闇であろう

貴方が暖かい日向であるならば
私は冷たい日陰であろう

貴方が綺麗な月であるならば
私は醜い道化師





道化師は月に
見惚れていた

池の水面に写された
朧げな貴方

それを目指し
藻掻き続ける哀れな姿



触れられないと
知っていた

届かないと
分かっていた

けれど止まる訳にはいかない
貴方は森を照らす
唯一の光なのだから





届かぬ思い 悠久の旅路





眠りの森の道化師は今日も歌う
眠りの森の道化師は今日も踊る

道化師の夢

道化師はさまよう
眠りの森を




道化師は
歌う事が仕事

道化師は
踊る事が仕事

道化師とは
道化でいる事


人を欺き
自分をも騙す
それが道化師




道化師は夢を見た

それは仮面を外す夢

自分が自分でない夢

自分を開放する夢

感情を出す夢

森から出る夢

独りでない夢

共に歩む夢




でもそれは叶わぬ夢

私は道化師だから




その夢が叶う時

私が道化師でなくなる時

それは全ての終わり
全ての崩壊を意味する

だから道化師は
独りで歩かなければならない

夢が始まるその時まで




眠りの森の道化師は今日も歌う
眠りの森の道化師は今日も踊る

道化師の仮面

個を覆うペルソナ

道化師は森の中で
真実の仮面を被る




森を出る時
道化師は別の仮面を被る

その姿はもはや
道化師とは言えない

森の外で出会っても
誰も道化師と気付かない

道化師は自ら
それを望んでいた




違う者になれたからこそ
道化師は森から出られる




道化師は常に
仮面を被っている

素顔は道化師にすら
分からない




仮面を取り
自分を見つめ直す

道化師には
どうでも良い事

それぞれの仮面
それが自分

そう生きてきた




眠りの森
不可思議な現実

森で起こった真実
それは決して外に漏れない

森と自分を守るため
道化師は魔法をかけた

だから森は
不可侵でいられる




いつも道化師は独り
それは自分で望んだ痛み
自分で学んだ真実



眠りの森の道化師は今日も歌う
眠りの森の道化師は今日も踊る

道化師の届け物

道化師は歌う
何かを求めて




道化師にも友達はいた
隣国の王子と
狩りの苦手な狩人だ

彼らも歌が好きだった




王子は道化師と同じくらい
歌と踊りが上手かった

けれど王子は
道化師とは違う

彼は自らは歌わない

求められた時だけ歌う

王子の歌は誰もが好きだった

王子の歌は優しいのだ




狩人は歌が苦手だった

踊ることも上手くいかない

道化師と王子は
彼に歌を教えた

踊りの上達は無かったが
狩人は次第に
歌が上手になっていった

狩人は自信が付き
色々な人に歌を披露する

道化師と王子は
嬉しかった

初めて人を変えられた

二人は今日も狩人を見守る




ある日眠りの森で
歌っている者がいた

道化師はその歌に耳を傾ける

彼は旅する詩人だった

道化師は彼の歌が好きになった

彼の不安定な歌声に
癒しを求めた

道化師と詩人は友達になった




詩人は時々
眠りの森で体を休めた

出発の時間がくるまで
共に歌った

時には時間を忘れて
歌う事もあった




共に踊った日
詩人は森に忘れ物をした

道化師はすぐに届けようと
勇んで詩人を追いかけた
しかし森からは出られなかった

道化師は森の中でしか
生きられない




詩人は忘れ物を取りに着た

それはとても大切な物



でもここは眠りの森



森のすべてを
知る道化師でさえ

その腐敗は止められない

道化師は
歌いながら
崩れかけた物をあつめてゆく



でもここは眠りの森



持ち主の詩人でさえ

本当にそれが自分の物なのか
分からない

それが眠りの森





眠りの森の道化師は今日も歌う
眠りの森の道化師は今日も踊る
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