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いとしい、いとしいと言う心

うちの一番上のお兄ちゃんは、高慢で我が儘な女王様みたいな人だ。

目配せひとつで意思を伝えて、ため息ひとつで誰かを落ち込ませる。それなのに、人一倍の負けず嫌いで、努力と計算を惜しみ無く捧げていく。水面下の白鳥みたいに澄ましながら、波を掻き分けて進んでいく人だ。

だから

だから、きっと
誰かはそんな姿を見て、憂鬱になったりするんだろう。


思う。

「遠くで見ている分はいいけれど、近づきすぎると潰れてしまう」


でも、この距離で満足できない時がある。
見つめるだけでなく、意図を持って触りたくなるのだ。

キーボードを打つ後ろ姿に、そっと近づく。

「肩でも揉みましょうか?」
「やった。誉めてやろう」
「光栄です」

軽いやり取りをしながら、私の指はいらない力が入る。邪な気持ち、隙間から溢れる汚泥、甘い香りの爪先。
脛椎が美しくて、撫でたくなった。

「なあ、」
「なあに」
「まだ、好きなの」

ああ、頬を叩かれたような衝撃。
諦めなよ、そう言った。
バカだなあ、バカだなあ



「できたら、とっくにやってるよ」



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