鳴らなくなったスマホ。


けんちゃんとはラインじゃなくてメールだった。
既読になったのにすぐ返事が来ないとか、
返せないとか、
お互い悶々とするのが嫌だから。



それに、
返信を待つ僅かな間に
何か用事をしながらワクワクと待つ。

それが好きだった。




一日が、
けんちゃんの 『おはようございます』で始まり、
けんちゃんの『おやすみなさい』で終わる。



私が一人で休憩の時は
ちょっとメールしてみる。


『けんちゃん、お勉強してる?』


『論文書くのに飽きたので、おやつ食べてました(・∀・)』



帰りに大学を出る時、

家に帰った時…



私が残業してたら
『ねーさんは残業ですか?(´・ω・`)』


と、心配メールが入ってる。



そして夜、
眠くなるまでメールでお喋りする。




あれ以来
受信ボックスの中はメルマガだけだ。





思えば、
彼との出会いはSNSでの繋がりだったから、
携帯電話から始まった。


こんなちっぽけな手のひらの上で
きっと生涯ずっと大切だと思える人と出会い、

そして手のひらの上でお別れした。

皮肉なことに…




娘が今まさに就活中だけど、
就活もやはりスマホだものね。



不採用も、
一次通過の連絡も。




今後の人生を大きく左右するのに、
昭和の私たち世代は想像もしなかったよね。



嬉しいことも、

悲しいことも、

大切な思い出も、



全てこの 手のひらサイズの中にある。







けんちゃんが、

大学院合格を喜ぶ笑顔のショットもね。