この本を読む前は、読み易い本ばかりを二日三日に一冊ペースで読んでいたのですが。
この上下巻には、一ヶ月半を費やしました。
昨日やっと読み終えたのですが、「やっと読み終わった!」という感じ。
幕末という時代は元々好きで、人よりは少し知ってるつもりでした。
だがしかし、幕末の頃の地元(水戸藩)について何も知りませんでした。
水戸家は徳川御三家で力を持っていた筈。
なんでわざわざ水戸の人が、井伊直弼を暗殺したの?
ぐらいにしか考えてませんでした。
そんな浅薄な小娘が読み始めるんですから、最初のうちは読んでいて苦しかったですね。
全体的に人物そのものの描写が少ない気がして、時代背景の説明ばかり。それがなけりゃ話が成立しないのにね。
前半、その数少ない人物描写の中でも、血気盛んに井伊直弼暗殺を企てる者たち。
「何でそんなに必死なの?」
と一歩引いてしまう自分がいたり。
計画のうちでは、井伊直弼暗殺を成功させた後、薩摩藩などの協力を得て…というのがありましたが、そんな事実はない。
暗殺止まりで、彼らの理想が実現しない事が解ってましたから。
それが私ら現代っ子と、幕末を生きた人の違いなのかなと。
幕末という時代のせいなのか、彼らは狂信的に何かを信じる事が出来た。
実現し得る筈ない理想のために、がむしゃらになれたんですね。
中盤、井伊直弼の暗殺シーン。
時代劇のような出来過ぎた殺陣などの想像なんて出来ないような、泥臭い描写でした。
全てが白黒で流れていくような、それこそが本当の斬り合いだったのかなと思います。
タイトルは桜田門外の変ですが、暗殺だけがメインなのではなくて、後始末まで全てが描かれているのがこの小説でした。
主人公である関鉄之助、前半はやはり血気盛んな若者であった彼でしたが、後半は徐々に追い詰められていく。
当初の計画は頓挫し、幕府から藩から追われる身となって、更に病にまで犯されてしまう。
あんなにも元気に溢れていたのに、もう立つのすらしんどくなってしまった姿をみて、黄昏だなあと思いました。
全体を読み通してみて、私は後半部分の、鉄之助が追い込まれていくのが好きです。
遠く離れた存在なんかではなく、やはり人間だった訳で、漂うその哀愁に惹かれてしまったんですね。
そのただの人間たちが、歴史を動かした。
桜田門外の変は、幕末の歴史の中でも重要な意味を示します。改めてそれが解りました。
そしてやっぱり、すげえ、と。
読むのに一ヶ月半もかかったので、読み終える瞬間が惜しくもありましたね。
読み辛くて苦しかった時もありましたが、この本を読めて良かったと、今は思います。