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人それぞれの

一ヶ月半もかかって本を読んでいる間、ちょっと浮気をしてしまいました。
読む本ならまだ沢山あるのに、本屋に立ち寄りつい買ってしまうのが悪いんですが。



レビューを見ると低評価だったりするのですが(浅田次郎が調子に乗ってるとか)、私的には満足ですね。
壬生義士伝も輪違屋明里も大好きなら、浅田次郎も大好きですからね。

本の半ばに、JIRO’S ALBUMというのがあるんですね。
幼少時から、刊行当時までの浅田氏の写真が収録されているんです。
ご自分では強面だと書かれていましたが、いや優しい顔してんじゃん。
猫と一緒のアップには多少びっくりしましたが(笑)。でも眼鏡でハゲでデブ(エッセイにそうあった)のオッサンに、私ときめいてしまいましたよ。

巻末には浅田版新選組人名緑というのがあって、人物の紹介と共に、その人物が物語中にどんな言葉を発したかも記されているんですね。
それを読んで、いちいち場面を思い出して、泣きそうになってしまいました。

「わしは、またひとりぼっちになってしもたではねが。のう、貫一、わしをひとりにしないでけろ。お前がいねえと、わしは生きて行けねのじゃ。」
やはり、大野次郎右衛門は良い役柄ですわな。

本文中にもありますが、人それぞれの中に、様々な新選組がいます。それでいてみんなに愛され続けている。
歴史上の人物ではありますが、「これはこうあるべきだ」っていうのが無いんですよね。みんな色々な人物像を描いたりしてますから。

私は新選組が好きですが、自らわざわざ資料を紐解いたりはしません。ていうか読めんだろし、出来ない。
だから、これまで触れてきた映画や小説やドラマや漫画で、その中のカケラを拾い集めて、私の新選組を作っています。

まだまだ新選組は奥深く、知らない事の方が多いです。
浅田氏が熱く勧める、子母澤寛の「新選組始末記」も読んだ事がありません。読まなくちゃ。

1ヶ月半




この本を読む前は、読み易い本ばかりを二日三日に一冊ペースで読んでいたのですが。
この上下巻には、一ヶ月半を費やしました。
昨日やっと読み終えたのですが、「やっと読み終わった!」という感じ。


幕末という時代は元々好きで、人よりは少し知ってるつもりでした。
だがしかし、幕末の頃の地元(水戸藩)について何も知りませんでした。

水戸家は徳川御三家で力を持っていた筈。
なんでわざわざ水戸の人が、井伊直弼を暗殺したの?
ぐらいにしか考えてませんでした。

そんな浅薄な小娘が読み始めるんですから、最初のうちは読んでいて苦しかったですね。
全体的に人物そのものの描写が少ない気がして、時代背景の説明ばかり。それがなけりゃ話が成立しないのにね。

前半、その数少ない人物描写の中でも、血気盛んに井伊直弼暗殺を企てる者たち。
「何でそんなに必死なの?」
と一歩引いてしまう自分がいたり。

計画のうちでは、井伊直弼暗殺を成功させた後、薩摩藩などの協力を得て…というのがありましたが、そんな事実はない。
暗殺止まりで、彼らの理想が実現しない事が解ってましたから。

それが私ら現代っ子と、幕末を生きた人の違いなのかなと。
幕末という時代のせいなのか、彼らは狂信的に何かを信じる事が出来た。
実現し得る筈ない理想のために、がむしゃらになれたんですね。

中盤、井伊直弼の暗殺シーン。
時代劇のような出来過ぎた殺陣などの想像なんて出来ないような、泥臭い描写でした。
全てが白黒で流れていくような、それこそが本当の斬り合いだったのかなと思います。


タイトルは桜田門外の変ですが、暗殺だけがメインなのではなくて、後始末まで全てが描かれているのがこの小説でした。

主人公である関鉄之助、前半はやはり血気盛んな若者であった彼でしたが、後半は徐々に追い詰められていく。
当初の計画は頓挫し、幕府から藩から追われる身となって、更に病にまで犯されてしまう。
あんなにも元気に溢れていたのに、もう立つのすらしんどくなってしまった姿をみて、黄昏だなあと思いました。
全体を読み通してみて、私は後半部分の、鉄之助が追い込まれていくのが好きです。
遠く離れた存在なんかではなく、やはり人間だった訳で、漂うその哀愁に惹かれてしまったんですね。

そのただの人間たちが、歴史を動かした。
桜田門外の変は、幕末の歴史の中でも重要な意味を示します。改めてそれが解りました。
そしてやっぱり、すげえ、と。


読むのに一ヶ月半もかかったので、読み終える瞬間が惜しくもありましたね。
読み辛くて苦しかった時もありましたが、この本を読めて良かったと、今は思います。

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