私が趣味を語り出すと、押し付けみたいになってしまうので、人前ではあまり話したりしません。
(そう思ってるのは私だけで、周りはうんざりしてるかもしれんが。)
まあブログなんで、その押し付けがましいのも許されるという事で。
ある時、人と話していて「耳なし芳一」ってなんだっけ?という話題が出て、この本には小泉八雲の同名タイトルの話が収録されていて、買ったのがきっかけです。
大好きな浅田氏が選んだ、大好きな話なんだからと、期待を膨らませて読みました。
百物語/森 鴎外
私は夏目漱石が駄目です。読めません。
なので森 鴎外も、残念ながら苦手分野に入ってしまいました。
読むには読んで、話も上手く練られているなとは思うんですが、どうにも読み進めるのが困難で。
最初から挫けかけました。
秘密/谷崎潤一郎
この本で唯一、以前読んだ事がある短編でした。
初めはそれと忘れて読んでいたんですがね。途中で、「この次の展開が解る」と漸く思い出しました。
私は作品をもう一度読み返したりは滅多にしないんですが、この作品は、二度目でも面白さが色褪せませんでしたね。ぞくぞくしました。
疑惑/芥川龍之介
芥川龍之介の文章や世界観は好きなのですが、それでもスラスラ読める作品ではなかったですね。気合いを入れながら読みました。
まだ沢山の話を読んだ事はないんですけど、空気感、みたいなものが未だに掴めませんね。
この作品を読んで、「こんな話も書くんだ」と思わされました。
死体紹介人/川端康成
川端も、得意ではない分野に入るのですが。
でも、最初から入り易くはなくても、段々とのめり込ませる力のある文章ですね。
この作品も奇妙な話です。
あと、女性観に関しては古い感じを受けましたが、話の内容は、古いものだと感じられないぐらいでした。
山月記・狐憑/中島敦
文章の書き方が古い型だし、漢字がやたら沢山あるし、最初はうわっと思いました。
山月記は教科書に出てるらしいですが、あったっけと、私には記憶がないぐらいです。
話の内容は、狐憑の方が好きですね。読み易いし。人間の軽薄さと残酷な面が、短い話の中に凝縮されていて、上手いなあと思いました。
ひとごろし/山本周五郎
この本の中で一番面白いと思ったのが、このひとごろしです。
個人的に時代劇が好きっていうのもあるんですがね。それに、文章がスラスラと自分の中に入ってくるんです。時代ものを書く人は、一貫した上手さがあるように思います。
見た事もない時代でも、情景がありありと思い浮かべられるんです。
主人公が「ひとごろしー!」と叫びながら逃げ回る姿が、頭の中ではっきりと描く事が出来て、滑稽でつい笑ってしまいました。
青梅雨/永井龍男
一家心中してしまう話なんでしが。短めな話だし、印象が薄いですかね。
心中する前の、家族の日常。そこから僅かな翳りとか不安とかを、文章から読み取るみたいな形なんすかね。
うーん。
補陀落渡海記/井上 靖
これは井上 靖の書き方が上手いからなんでしょうか、情景やら人物の表示などが、スッと自分の中に入ってくるようでした。
海を渡った坊さんの中で、立派な人もいたり、理解し難いのもいたり。中でも、自分からではなく周りに押し切られて、渡海を決められてしまった主人公。悩む背中が、容易に思い浮かべる事が出来ました。
西郷札/松本清張
松本清張も、作るのが上手い人ですよね。
絡み合う人間の思惑が、色々な場面で交錯していく。話を作っていて、よくこんがらないものだなと、上手いもんです。
この作品も、人間の浅はかさや醜さが、浮き彫りになっていますね。それは今も変わらない事で、ある意味風刺なのかもしれません。
赤い駱駝/梅崎春生
これは面白い面白くないではなく、兎に角、印象に残った作品です。
浅田氏も述べた通り、読んでいる最中は「ねっとり」した感じがしました。
何気ない思想が、やがて狂気へと変わっていく。人間、特殊な状況に置かれると、どうなってしまうか解らないですからね。
でも、主人公の気持ちが解るようで解らない、自分がいます。
手/立原正秋
これもなかなか、奇抜というか奇妙な話です。
よくよく考え過ぎてしまうと、「これは死姦願望なんじゃないか?」とかいうところに辿り着きました。絶対に考え過ぎでしょうけどね。
耳なし芳一のはなし/小泉八雲
この本の中で、一番好きな話ですね。同じようなフレーズを使ったかもしれませんが。笑
これは昔からあった話なんでしょうけど、小泉八雲の視点だからこそ、描けたものなのかもしれませんね。
ああ長かった!
頑張ったよ私!