話題:童話
「これが、その“落としもの”なのですが…」
そう云いながらラマン巡査はキャンディの缶箱の蓋を開け、問題の【キラキラ】を取り出してアランに見せました。
「…えっ?」
アランの瞳は瞬きを止め、代わりに口が小さく開きます。
その反応は、この【不思議な落としもの】を初めて目にした時のラマンやマルグリット夫妻と同様の物でした。
「これは…いったい何なのですか?」
当然の質問です。ですが、その疑問に答える事はラマン巡査にもマルグリット夫妻にも出来ません。
「それが…実は、私たちにもよく判らないのです」
ラマンは正直に答え、少々バツが悪そうにマルグリット夫妻の顔を見ました。
ベネディクト菓子店の甘い香りが漂う店内に僅かな沈黙の時間が流れます。
「で…これが、うちの店の前に落ちていたと」
「ええ…拾われたのが、こちらのマルグリット夫妻という訳でして…」
ラマンの言葉に、マルグリット夫妻がほぼ同時に頷きます。
「それで…もしかしたら何かご存知なのではないかと考え、こうして伺ってみたのです」
アラン・ベネディクトは軽く腕を組み、少し考え込んでいましたが、やがて小さく首を振りながら答えました。
「…やっぱり、何も思い当たりませんねぇ」
「そうですか…」
ラマン巡査とて、此処に来れば直ぐに事件が解決すると思っていた訳ではありません。それでも、この不思議な事件を解く鍵は何となく“ベネディクト菓子店に在る”ような気がしていたので、アランの呆気ない反応に落胆の色は隠せません。
アランの視線は先程から、ラマン巡査の手のひらの上でキラキラと輝き続ける【不思議な落としもの】に注がれたままです。
「これは果たして“物”なのでしょうか?」
そんなデジャヴめいたアランの質問に答えたのは、マルグリット氏でした。
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