私は愛する彼の子を産んだ。
しかし生まれたのは双子…のバケモノだった。
異常に膨れた腹からはもう小学生一年生程のからだの双子。
その皮膚はトマトの内側の、シャリシャリした部分のようであり、外見は角張ったロボットのよう。
生きて動きはするが一日中、庭のベンチに腰掛けたまま微動だにしない…言葉も発さない。ものも食べない。
私は嘆いた、彼を問いただした。彼の目は赤くなっていた。
次の日、私は買い物に行く途中で大学の先輩に会った。
やつれて見る影もない彼女は、車椅子にバケモノを乗せ押していた。
我が子とソックリだったが、下半身は普通の男の人だった。
「彼氏なの。赤色病よ」
先輩は聞いたこともない病気の名を発した。
結婚式を目前に発病したという。
シャリシャリした赤白い皮膚の男は、食事排泄は機能したままであり、先輩が介護しているという。
私はこどもが赤色病であることを告げた。
次の日、庭に先輩の彼氏が置き去りにされていた。
そして先輩が自殺したことを知った。
私はそれが乗る車椅子を我が子の座るベンチの横に置いた。
涙も出てこない。
私の彼に事情を話しにいくと、彼の顔が真っ赤になっていた。
ああ、彼も赤色病なのだ…
だから、こどもは…
先輩の彼氏であるものの排泄の世話をしながら、惨めな気持ちが込み上げてきてそこで初めて泣いた。
悔しかった。
私の彼が「何故泣くの」と後ろから問うた。もう、首まで赤くなっていた。
彼も明日にはこのベンチに座ったまま動かなくなるのだろう。
バスを待ちながら、今晩のおかずを考える。
トマトを買おう。
山ほど。
庭のバジルと和えたらきっと美味しいだろう。
シャリ。
シャリシャリ。
ブラックジャックと、ひとりの中年男が、爆発物のボトルがずらりとならぶ教室に神妙な顔つきで佇んでいる。
『わたしもこんなかたちで学校を辞めたくないのだが、欲望を抑えきれないのだよ』
防犯カメラが赤く光っているが、イミテーションらしい。
爆発物のボトルは、生徒の椅子の後ろについている突起でふたを開け、ライターで火をつける仕組みらしい。
椅子を借りる生徒の机の上には、雑誌。頭上には首をつる縄。
この頭のいかれた校長は、この生徒が自殺のために爆発物をしかけたことなしたいらしい。
ブラックジャックは、『中の薬品の効果は保証しませんからな』と念をおすと、先に教室を出た。
どうやら
爆発することで今までの人格人生と180度変わることができるというもののようだ。
それにしても訳の分からない状況である。
爆発させる意味もわからないし、椅子で起動する意味もわからないし、イミテーションのカメラの意味も、首吊り縄にかわいいオルゴールがぶら下がっているのも訳が分からない。
校長は意を決したようにバルブをあけ、ライターを放った。
どぉ…ぉん…
地響きとともに、室内が煙で充満する。
『なに!?なに!??』
周りの教室から、何事かと生徒たちがわらわらと集まってくる…
がらっ
と、煙のたちこめる教室のドアが開いた。
そこにいたのは、顔面は校長そのものだが、厚塗りのヴィジュアル系メイクがほどこされ、髪もピンクのロン毛になった男だった。
『こうちょうせんせい…』
皆が固まる中、るんるんな様子で、外へ出て行く中年ピンクオカマ男。。。
ずっといってみたかったダウンタウン…若者の集まる駅…
好奇の目で見られるのも、頭のいかれた男にとっては、快感と化し、どんどん気も大きくなってゆく。
男は、駅前でナンパをしているヤンキーたちの前に立ちはだかった。
『ハッハー!君たちも大変だね!僕は〜♪』
突然始まるミュージカル。
ホップステップしながら男の両脇に収まるふたりのメガネブス。
『ナンッパ♪なんか♪しなくって〜も〜♪』
ターン、くるっ、ターン。
『モテモテって最高〜♪きみたち〜哀れ〜♪』
頬を赤らめるメガネブス。どこからきたのかメガネブス。
ヤンキーは、唖然としていたが、
『あ?死ね基地外が』
と、思い切り男の尻を蹴飛ばした。
『ぁぐっ!』
男は駅の改札に頭を打ちつけて、ぱっくり額が割れた。
『うわあああああ血がああああ』
以外と元気にダッシュで無賃で改札を抜ける男の目の前にはなぜか川が流れる
暗く大きな川だ(笑)
そこへ船でブラックジャックが登場。
『いわんこっちゃない。はやくのるんだ』
ブラックジャックは男の手を引き、船に招き入れる。
その船がどこへゆくのか、男はどうなったのか、
そのあとのことは誰も知らない…
ーendー
私は何かから逃れるように旅に出た。
私は両手を羽ばたくと空を飛べる。
見慣れた田畑、用水路、山を越え…海に出た。
気持ちのよい風を受けながら必死ともいえる動きで海面すれすれを羽ばたき続ける。
私の飛ぶ速さが異常なのだろうか…北に向かっているようなのだが、『香港へようこそ!』や『漢字でよめない』などの看板が大陸越しに見える。
この世界はおおよそRPGのマップのような簡易なつくりだ。
しかし、羽ばたきつづけているといささか私も疲れてきた。
ふと神の声が聞こえる。
『下を見よ』と。
見ると海面に何かが浮いている。
…
あざらしの顔のどアップのあれ…
鼻セレブ
のポケットティシューであった。
私は驚きながらも流れるような動きでその中身を二枚出し、左右の手に一枚ずつ持って羽ばたいた。
なんと楽。
すすみの早いことか。
私はそのまま、ひたすら飛び続けた。
しばらく飛び続けると、新緑の大陸につく。
深く覆い茂る森の中には、ウッディーな感じの小屋小屋、
私は大きな一本の木の枝に掴まり、一息をついた。
わらわらと集まってきたのは、リスやタヌキなどの可愛らしい動物たち。
思えば空気が凜としてとても肌寒い。
私は尋ねた。
『ここは…?』
動物たちはくちぐちに答えた。
『ろシアー!』
『ろしあー!!』
『ロシア〜!』
なんと、私はロシア大陸まで来ていたようだ。
動物たちに礼を言い、木の上から降り立ったところで、あまりの疲れに気を失った。
ーendー