私は愛する彼の子を産んだ。
しかし生まれたのは双子…のバケモノだった。
異常に膨れた腹からはもう小学生一年生程のからだの双子。
その皮膚はトマトの内側の、シャリシャリした部分のようであり、外見は角張ったロボットのよう。
生きて動きはするが一日中、庭のベンチに腰掛けたまま微動だにしない…言葉も発さない。ものも食べない。
私は嘆いた、彼を問いただした。彼の目は赤くなっていた。
次の日、私は買い物に行く途中で大学の先輩に会った。
やつれて見る影もない彼女は、車椅子にバケモノを乗せ押していた。
我が子とソックリだったが、下半身は普通の男の人だった。
「彼氏なの。赤色病よ」
先輩は聞いたこともない病気の名を発した。
結婚式を目前に発病したという。
シャリシャリした赤白い皮膚の男は、食事排泄は機能したままであり、先輩が介護しているという。
私はこどもが赤色病であることを告げた。
次の日、庭に先輩の彼氏が置き去りにされていた。
そして先輩が自殺したことを知った。
私はそれが乗る車椅子を我が子の座るベンチの横に置いた。
涙も出てこない。
私の彼に事情を話しにいくと、彼の顔が真っ赤になっていた。
ああ、彼も赤色病なのだ…
だから、こどもは…
先輩の彼氏であるものの排泄の世話をしながら、惨めな気持ちが込み上げてきてそこで初めて泣いた。
悔しかった。
私の彼が「何故泣くの」と後ろから問うた。もう、首まで赤くなっていた。
彼も明日にはこのベンチに座ったまま動かなくなるのだろう。
バスを待ちながら、今晩のおかずを考える。
トマトを買おう。
山ほど。
庭のバジルと和えたらきっと美味しいだろう。
シャリ。
シャリシャリ。