こちらではお久しぶりでございます。今月からパート始めたSEAです。
ゲームやってたり図書館通ったりオフ会行ったりと充実した生活してました。最近はそっちのジャンルで支部にて小説UPしてたりします。
人形シリーズ(真田→人形から人間に戻った王子、柳→古本屋、幸村→人形屋で真田人形の本来の持ち主)の別サイド。
今回は王子の真田も王子じゃない真田も出てきません。従者レンジの話です。
初めて書く従者目線の話。
今まで書かなかったのは、従者の裏事情を書いてからにしたかったからでした。ひとりごとに書いて支部に載せたしいいかなって。
今更ですがピクシブに人形シリーズ短編まとめ投稿してます。→
コチラ
まだサイトメインに載せてないものも含みます。いずれ整理して載せます…
一気に書き上げたので読みにくかったらすみません。
ヤンデレくさい従者です。シリアスめ。
王子への想いを胸に、彼から預かったガラスの靴を前に考え事する話です。
久しぶりすぎたので簡単なあらすじも付けておきました。
以下よりどうぞ!
☆あらすじ☆
テニス部で練習中に気を失った真田(15)は、目が覚めたら知らない部屋のベッドに。
横に控えていたのは、友人・柳にそっくりな男だった。
泣きながら「おかえりなさいませ、王子」と言われ動揺する真田。
どうやらここは今までいた所とは違う世界らしく、自分にそっくりな王子は8年前から行方不明になっているらしい。男の名はレンジで、王子の従者だそうだ。住民はなぜか全員眠っており、従者は王子の帰りを待つために魔法か何かで不老不死になったとか。
真田はしばらくこの城で世話になることになるのですが、それは別の話で。
これは8年前、王子がいなくなる前の従者の話。
・・・・・
[王子の従者とガラスの靴]
ああ、早く。
早く隠さねば。
一人の従者は焦っていた。
王子から預けられたガラスの靴を、どうしてしまおうか。
この靴はおそらくただの靴ではない。我が国の技術では、ガラスを靴へと加工して人が履けるようにすることはできない。
城で聞いたことがある。かつてこの城には魔法使いが住んでいたが、まだ幼かった王子に化けてイタズラをしたため、先代の王によって城から追放されたこと。
変身以外にも多くの魔法を使える、優秀で恐ろしい男。
今は国の外れの森に住んでいるということ。
このガラスの靴は、おそらく簡単には隠せまい。
魔法を使って、元の場所に戻されるかもしれない。
たとえ壊したとしても、同じように作ることができるだろう。
つまり、俺がしようとしていることは無駄になるのだ。
わかっていても、隠さなくてはいけなかった。
なぜ従者である俺は、ここまで必死になっているのか。
あの王子に、どこから来たのかもわからぬ怪しい娘と婚姻させたくなかったから?
……違う。王子はあの娘に対して恋愛感情は持っていなかった。
それでも、やがてあの娘と結ばれることになってしまう。王や側近たちは、王子が妃となる女性と結ばれ、王位を継ぐことを期待している。どこから来たか、どのような育ちか、など気にしない。たとえ貧しい者であろうと、これから王家の女性になるための教育を施すことだろう。
俺は王子が王位を継ぎたくないことを知っている。
王子には年の離れた兄がいたが、自分の夢のために城を出ていっている。その兄の子、サスケに王位を継がせようとしていた。権力争いを避けるために。
まだ幼い少年であるサスケが成長するまで、自分は王子のままでいるつもりだった。彼が継ぐ意思を示せば、王子は甥を支える。継がないつもりならば、自分が王位を継ぐ。
しかし今の俺の愚かな行動は、俺自身の感情によるものだ。
城の事情も王子の意思も関係がない。
俺は、従者であるこのレンジは
「王子……ゲンイチロウ」
王子は従者と二人で居るときだけ、気安く名前で呼ぶことを許してくれた。
家族のようなものだから、と。
その信頼も、友情も、俺は壊そうとしている。
「愛しています」
ガラスの靴とともに、粉々にしてしまおう。
持ってはいけなかった感情のままに。
ずっとそばにいたかった。
それは王子があの娘と結ばれてからでもできたはずだ。
だが、俺には耐えられない。幸せな二人を見守るくらいなら、いっそのこと……
目の前には、金槌で粉々になったガラスの破片。
日光に照らされたそれは、今まで見たどんな宝石よりも美しかった。
やはりこれはただの靴ではない。ただのガラスでもない。
……ああ、綺麗だ。
「さあ、早く帰らねば。王子に報告しなくては」
靴を無くしたから、彼女を探すことはできなくなった。
このことで裁かれても悔やむことはない。俺が勝手にやったことだ。
王子がいなくなったという報告が届いたのは、城に戻ってすぐのことだったと思う。
end.
・・・・
誰にも明かされないであろう従者の悲しみの話。
博識で賢い従者レンジは、これからどうなるかがある程度予測できていました。
それでも、彼は自分の行動を止めることができなかったのです。