稲荷パロ蓮華。案の定ここで終われませんでした。
次で終わります。多分。
稲荷神の子・蓮二と迷子の少年。彼の手を引いて連れてきた先は…
書きたかったことの半分くらいは今回書けました。
年齢操作注意。
それでは以下よりどうぞ〜
[狐と少年・交流]
ここを抜ければ、綺麗な水のある場所に行ける。
そう思いながら少年の手を引っぱる狐だったが。
「少し待て!待たんか!」
少年に怒られて立ち止まる。
ずっと手を引いていて気づかなかったが、急いで歩いたために少年の息があがっていた。
「すまない。急ぎ過ぎたか」
「いや、それもあるが…その」
ちらっと横の店を見て、またこちらに視線を戻した。
ここは最初に蓮二が訪れた店だった。
まだたくさんのお面が残っている。
「なんだ、欲しかったのか」
「そういう、わけでは」
「買うなら早く買え」
「む…」
強く言われて大人しくなった少年は、諦めて自分の欲しいものを選んだのであった。
お面を買って、人ごみを抜ける。
提灯がぽつぽつと並び、木に囲まれる。祭りのにぎやかな音が遠くなる。
「…れんじのお面を見て、気になったのだ」
「俺の?これは適当に選んだのだが」
「ということは、何も知らずに買ったのだな」
「こういうものはよくわからなくて…お前は知っているのか?」
「俺も詳しくは知らないのだが、今テレビで人気のあるヒーローらしいのだ」
「ほう」
少年が買ったものは、蓮二と同じ顔の色違い。
蓮二は白、少年は黒。
ただし、少年は顔には着けず、もらったビニール袋に入れたままだ。
「甥が気に入っているらしくて、お土産に持って帰ろうと思った。それだけだ」
「お前が欲しかったのではない、と?」
「別にその番組を俺が見ているわけではない!甥が、さすけくんが見ているから毎週一緒に付き合って見ているだけだ!」
それは結局毎週見ているということでは…と蓮二は思ったが、機嫌を損ねそうなのでやめておいた。
「真剣戦隊ブシレンジャー、というそうだ。俺が買ったのはブシブラック、れんじが着けているのはブシホワイトだ」
「どういう奴だ?」
「ブラックは主人公のブシレッドの先輩にあたるヒーローで、いろいろと教えてくれるのだ。ホワイトは…元はこちらの参謀だったのだが、裏切って出て行ってしまった…」
「ひどいやつだったんだな、ホワイト」
「しかし!」
少年は拳を握り締める。
目が輝いているように見えた。
「ブラックとホワイトは熱い戦いを繰り広げた!あれは死闘と言っても過言ではない…そして、ブラックがホワイトを説得した!また一緒に戦おう、と!」
その様子を思い出したのか、拳が震えている。よほど感動したのだろう。
「なんだ、詳しいではないか」
「あ、いや…甥がそう言っていたのだ、うむ」
「ふふっ」
少年は恥ずかしくなったらしく、顔を俯けてしまった。
年の割に古風で尊大だと思っていたが、気に入ったものに対しては年相応な態度になるようだ。
「笑うな!そんなことより、膝の手当てをするのではなかったのか?」
「そうだった。こっちに水があるから、まずは洗おう」
蓮二が連れてきたのは、商店街の近くにある神社だった。
自分達が住む神社と違って、狛犬が二頭並んでいる。
神社の鳥居の横に、目的のものはある。
見た目は小さな池だが、水の色は透明で、底の石が夜でもはっきりと見えた。
「ここに湧き水がある。祀られている者たちの力で、何百年も清浄に保たれている。ときどき俺も飲みに来ている」
「本当に大丈夫なのか?」
「ああ。俺も力を籠めるから、問題無い」
「ちから?」
「しゃがんでくれ」
不思議なことを言い出した蓮二に少年は首を傾げつつ、流れる水の近くに座り込んだ。
蓮二の手が、水に触れる。
冷たいが、この身体なら体温で少しぬるくできるだろう。
自分の手を洗ってから、両手で水を掬い取り、
――どうかこの少年の傷が早く癒えますように。
少年の膝小僧に浴びせた。
「……っ!」
さすがに染みているようだが、目を閉じてグッとこらえている。
これを三度繰り返して、膝に付いた血や砂を洗い流した。
「もう洗えたか。痛かっただろう?すまなかったな」
「……うむ」
少年は小さく頷く。下を向いていて、顔はよく見えなかった。蓮二は見ないでおくことにした。
それから傷口が穢れぬよう、自分の浴衣の袖を小さく破り、湧き水にさらして固く絞ってから、少年の膝に巻き付ける。
「破いてしまってよかったのか?」
「気にしなくていい」
「ずいぶんと、世話になってしまったな…」
「いや、まだ残っているから礼を言うには早い」
「あっ」
そう。まだ少年の家族は見つかっていない。
青ざめる少年に、蓮二は微笑む。
「だが、それももう大丈夫だ。今わかった」
「そうなのか!?」
「俺は耳が良いのでな。『げんいちろう』と年配の男の声が微かに聞こえてきたぞ。先ほどまでは騒がしくてよくわからなかったが、おそらくはお前のおじいさまなのだろう。それに」
蓮二は湧き水から離れて、木々の合間へ向かった。
慌てて少年は後を追う。
「ここは少し高台にある。その声の主であろう老人の姿も見える。ほら、あのたこ焼き屋の近く」
「どこに……あ、おじいさまの麦わら帽子!でも、このままだとまたはぐれるぞ」
「俺が連れていこう」
そう言うと、蓮二は少年の前で少ししゃがんだ。
これは少年にも見覚えのある体勢。
「きさま、おんぶで俺を運ぶというのか!?」
「このくらい、軽いものだ」
「無謀にもほどがあるだろう!自分で歩ける!」
「お前は膝を怪我している。俺にとってはこの方が早い」
「本当に、大丈夫か…?」
先ほどよりも心配そうな声が背後から聞こえてきた。
蓮二は何も言わないが、
――いいから、早く乗れ。
そう言っているようだった。
狐が少年を運んでいく。
高台から一気に駆け下りていく。
狐の荷物は少年に預けた。
少年はそれを自分の荷物と共に握って持ち、両腕を狐の前へ。
落とされないように、しっかりと掴まっている。
あまりの早さに空気がぶつかり、少年の目からこぼれた涙が、風に流れていった。
怖い。会いたい。
あとできちんとお礼を言いたい。
そんな思いも、狐の背中に。
つづく
・・・・
ブシレンジャーとサムライマンで悩みましたが、真田は侍というよりは武士かな、と。
真剣戦隊ブシレンジャー、毎週日曜朝7時30分から放送中。メインはブシレッド・ブルー・ピンク・イエロー・グリーンで、頼れる先輩のブラック、ブラックの元同僚かつ親友で今は敵方にいるホワイトが登場します。この二人はメイン並みの人気を誇り、多くのグッズが売られています。主題歌は『Let's Say-Bye!!』で、幼児から大きなお友達の間で大人気の曲です。
…というところまで考えました(笑)
稲荷神の蓮二は狐から人間に化けても身体能力は人並み以上です。本来の姿ならもっと早く行けたでしょう。