約1週間後。。
サニー「ほう、ほう。なるほどねえ。詳しく話をきかせてもらってやっといろいろわかったよ。君たちの世界ではそんな武器や戦闘機械があるのか。しかしまあ、なんだね。動力源が違っても、似たような進化を遂げるもんだね」
イザーク「ふん。こちらの世界は蒸気が動力だとはな。信じられん。まあ、核をうたれるくらいなら、まだ蒸気のほうがましな気もするがな」
ディアッカ「俺はこの世界も結構気に入ってきたんだけどね」
イザーク「貴様、今あちらではどういう状況なのか忘れたわけではないだろうな!?」
ディアッカ「はいはい、忘れてませんって」
サニー「じゃあ、今日はこのくらいにしようか。続きはまた明日ってことで」
イザーク「ふん、まあいいだろう」
サニー「そうそう、そういえば昨日のうちのシアターのショウはどうだった?チケットあげたんだから、見てくれたよね?」
イザーク「世界平和のために役に立つものではなさそうだが……まあ、平和を維持する目的くらいにはなるんじゃないか」
ディアッカ「相変わらず素直じゃないねえ。サニーサイド、こいつ昨夜は興奮しっぱなしだったんだぜ。これはあのラクス・クラインの歌にも匹敵する素晴らしい舞台だ!ってさ(笑)」
イザーク「貴様は余計なことを言うんじゃない!」
サニー「ははっ、何にせよ、気に入ってもらえたのなら良かったよ」
イザーク「失礼する!」
ディアッカ「おい、待てって、イザーク!」
開場までまだ時間のあるロビーでジェミニが掃除をしている。が、イザークたちの目の前でジェミニはバケツごと滑ってこけた。
ジェミニ「いったーい」
イザーク「何をやってるんだ、まったく!」
手をジェミニに差し出しながらディアッカ「ジェミニ、大丈夫か?」
ジェミニ「あ、ありがとう、ディアッカさん」
イザーク「だいたいお前は掃除の仕方がなっとらん!いいか?モップかけというものはだな、こう、腰をいれて、こうだ!」
ジェミニ「うわー、イザークさん、上手ですね〜」
イザーク「な、何をしている!さっさと着替えてこい!そんなびしょぬれで掃除を続けてたら、風邪をひくぞ!ほら、さっさと行け!
ジェミニ「あ、はい!ありがとうございます!」
ジェミニが去る。
イザーク「ディアッカ、貴様はぼけっとしてないで、さっさと手伝わんか!」
ディアッカ「はいはい(笑)」
夕刻食堂にて。
リカ「今日はなっ、コジローにガンダムとかいうやつを見せてもらったぞ!スターよりずっとおっきいのな!」
キラ「スターって?」
リカ「リカが乗るやつだ!」
キラ「へー、そうなんだ(にこにこ)」
アスラン「キラ……、今のでスターがどういうものかわかったのか?」
キラ「うぅん……どうかな(にこっ)」
アスラン「キラ……(がっくり)」
リカ「アカツキとかいうやつはすっごいのな!金ぴかなのな!こないだ連れてってもらった動物園で見たライオンより金ぴかだったぞ!」
キラ「そうだね(笑)」
リカ「それでな、ちょっとだけな、キラとアスランのガンダムにも乗せてもらったぞ!コジロー、いいやつなのな!」
キラ「楽しかった?」
リカ「おう!スターと中身が全然ちがってびっくりだぞ!あんなわけわかんねーやつ、よくキラとアスランは動かせるな!すごいな!」
キラ「ありがとう。それはそうとリカ、今度はどこ行こうか?」
リカ「んーと、動物園も遊園地もデパートもシネマも行ったしな。ガンダムもシャトルも乗ったしな。じゃあ今度はおつきさまに行きたいぞ!ここじゃ、おつきさまに行けるってコジローが言ってたぞ!ホントか?」
キラ「うん、ほんとだよ。僕たちも昔月に住んでたんだ。」
リカ「うっひょー、すごいな!リカ、楽しみだ!」
キラ「よし、じゃあ早速明日、行こうか?」
リカ「おう!行くぞ、リカ。おつきさまに行くぞ行くぞ、くるくるくるー!」
アスラン「キラ、俺たち毎日リカと遊びほうけていて、これでいいのか?」
キラ「いいんだよ。マリューさんたちが、リカの遊び相手をしててくれって言ってくれてるし」
リカ「なんだ?アスランはおつきさま、嫌か?どっか具合悪いのか?」
アスラン「いや、そんなんじゃないよ(微笑)」
リカ「うーん、だったら、アスラン、リカの子分にしてやる!どうだ、嬉しいか?」
アスラン「ええっ!?いや、別に子分になりたくは……」
リカ「親分はだめだぞ。親分はリカだからな!アスランは子分だ!」
アスラン「あ、いや、その……」
キラ「くすくすっ。いいじゃない、アスラン。子分にしてもらいなよ」
アスラン「キラまで……はぁー」
新次郎「うわっ、すごいですね、イザークさん!伝票があっというまに整理されていく」
イザーク「ふん、ザフトのエリートたるもの、このくらいはできて当然だ!」
ディアッカ「なあ、イザーク。なんで俺たち伝票整理なんてやってるんだ?」
イザーク「馬鹿者!このちびっこい子供一人に、こんな大量の仕事をまかせておけるか!」
新次郎「あの、何度もいうようですけど、僕、19歳なんですけど……」
イザーク「見ろ!あからさまな嘘をついてまでけなげに職務に励もうとするこの子供の心意気、お前は黙ってみすごせるのか!?」
ディアッカ「いや、そいつほんとに19歳なんじゃないの?」
イザーク「お前の目は節穴かっ!これのどこが19歳だ!」
新次郎「えーと、僕、悲しめばいいのか、喜べばいいのか……」
遠くからダイアナの声がする。
ダイアナ「か……固い……」
イザーク「ほら、ディアッカ!もたもたせずに行って来い!」
ディアッカ「あー、はいはい。(ダイアナのとこに来て)あー、何、このねじを締めればいいわけ?」
ダイアナ「すみません。昨日の舞台でこのねじがゆるんでしまったみたいで……」
ディアッカ「オッケー、まかせてよ。どうせやるなら男の手伝いより、綺麗な女性の手伝いするほうがいいや」
ダイアナ「え?」
ディアッカ「あー、こっちの話」
原っぱにてピクニックをする3人。
リカ「うまーい!このステーキは最高だな!アスランが焼いたのか?」
アスラン「あ、まあ」
キラ「アスランは手先が器用だから」
リカ「じゃあ、今度、リカがホットケーキ焼いてやる!」
アスラン「ああ、そうだな。楽しみにしてるよ」
キラ「リカ、僕には?」
リカ「キラにもだ!パパ直伝のすっごくうまーいホットケーキだぞ!」
キラ「うわあ、おいしそうだね!」
リカ「うまうまだぞー!」
お弁当を食べ終わって、はしゃいで走り回るリカ。
少し離れた木陰で休むキラとアスラン。
アスラン「なんか、こういう生活もいいもんだな」
キラ「そうだよね」
アスラン「今までは、いつも戦争のことが頭から離れずに、ただ平和のために戦い続けて、いざ、得た平和をどう享受していいのかわからなくて……。カガリのボディガードをしたりして、どうしても俺のできる、持てる力を生かそうと……いや、俺には戦闘のための力しかないかのように感じていたんだ。」
キラ「うん」
アスラン「だけど、リカとすごしてるこの穏やかな日々……すっかり戦争の中で見失ってたけれど、俺はこんな生活がしたくて戦ってきたんだよな。一見意味がないように見えて、何気ない大切な日常。これを得るために俺は戦ってきたんだ……」
キラ「そうだね」
アスラン「まったく、本末転倒とはこのことだな。戦ってるうちに目的がわからなくなってしまうなんて(苦笑)」
キラ「僕も、一時はそうだったから。ただ、アスランに、今後の身の振り方として、こういう選択肢もあるんだよって教えたくて……。マリューさんに話したら快諾してくれたから」
アスラン「……。それで俺たちはこんなに毎日遊びほうけていられたのか!?」
キラ「怒んないでよ、アスラン。マリューさんだって、AAのみんなだって、アスランのことを思って、許してくれたんだから。それに、リカの世話をしてもらえて助かるってみんな言ってるし!」
アスラン「AAの全員の了承済みだったのか!?はあ……、俺もまだまだだな」
キラ「このお礼は、これからちょっとずつ返していこうよ、ね?」
アスラン「まったく……(苦笑)」
キラ「あれ?リカ、どこまで行ったんだろう。ちょっと探してくるね」
アスラン「ああ。俺もここを片付けたらそっちに行くよ」
キラ「うん」
鳴り響く警報音。なごやかに口げんかしながら舞台セットの修理をしていたサジータとイザークとディアッカがはっと顔を上げる。
イザーク「なんだ、この警報音は!?」
サジータ「あんたたちには関係ない。あたしはいかなくちゃならないから、あと、よろしく!」
イザーク「はあ?」
あっというまに走り去るサジータ。
ディアッカ「さあて、俺たちはどうしようかねえ」
イザーク「ただの劇団ではないとは思っていたが、やはり何かあるな、このシアターには」
ディアッカ「どうする?おいかける?」
イザーク「……やめておこう。ザフトにだって他人に知られるわけにはいかない機密があるんだ。ここの連中だって同じだろう。もし、必要になれば知らせてくるさ」
ディアッカ「じゃあ、おとなしくこのセットの修理を続けますか」
はしゃいでいるうちにキラたちから少し離れたところに来たリカ。シロツメクサだのなんだのの雑草や花で花冠を作ってノコにかぶせたり、草の蔓をノコの足にまきつけたり、ノコで遊ぶリカ。
リカ「ノコ。リカな、最初ここに来たとき、すっごく怖かった。またみんな、パパと同じでどこか行っちゃったのかと思った。」
遊ばれるのにあきらめポーズでノコ「きゅきゅ〜」
リカ「リカの好きな人は、みんなリカの前からいなくなっちゃうのかと思った」
ちょっともがいているノコ「きゅー」
リカ「それで泣いてたらな、ミリアリアが一緒に寝てくれた。マリューが『だいじょうぶ』て言ってくれた」
もがいた拍子にすっころんだノコ「きゅきゅっ」
草花にからまったノコをほどきながらリカ「ムウが頭なでてくれた。キラとアスランは、リカが悲しくならないようにいつも遊んでくれる」
リカにうっかり強くつかまれてノコ「ぎゅょえっっっ!」
ノコをなでながらリカ「あ、ノコ、ごめんな。……それでな、紐育のみんなのとこには帰りたいぞ。でもな、ここのみんなもリカのこと好きだって言ってくれる。リカもみんな大好きだ」
目をまわしつつノコ「きゅる〜」
リカ「もちろん、ノコも大好きだぞ!」
ちょっと意識取り戻したノコ「きゅぅ」
リカ「だからな、リカ、しあわせだなと思うんだ。リカ、みんな大好きだ!だからさびしくないぞ!あ、ノコ!」
ちょろちょろっと近くの木に登るノコ。
木の上のノコを見上げながら笑ってリカ「今度は木登りするか?木登りか?ノコ、気をつけろな〜」
王が舞台に駆け込んでくる。
王「お二方とも、避難してくだされ!敵がこのシアターにも襲撃してきますのじゃ!」
イザーク「何!?敵だと?どういうことだ!」
王「詳しく説明している暇はありませんのですじゃ!」
二人をひっぱる王。
イザーク「ちょっと待て。もし俺たちがここを逃げ出したら、このシアターはどうなるんだ!あいつらはまだ戻ってきてないんだろう!?」
ディアッカ「そうだぜ!さっきの警報、あいつらが何かしにいったんじゃないのか!」
イザーク「あいつらの留守も守れないとあっては、ザフトの名折れだ!」
ディアッカ「事情を教えてもらうまで、俺たちは避難しないぜ」
王「……。それでは、仕方ありませぬ。お二人だけにそっとお教えしましょう。くれぐれも口外なされぬように」
イザーク「当然だ!この俺を誰だと思っている!」
王「……敵の主力は大河殿達が現在交戦中ですじゃ。ですが、少数の敵がこちらにも向かってきていますのじゃ」
イザーク「何か、武器はないのか!?あいつらもまさか素手で戦っているわけじゃないだろう!」
王「もしや、戦われるおつもりですか!?」
イザーク「このまま放っておけるか!あいつらの帰る場所をなくすわけにはいかないだろうが!何か、武器を貸せ!」
王「しかし……」
ディアッカ「なんでもいいよ。何かあるだろ?」
王「あれは、霊力がないと使いこなせず……。むむ?もしやお二人は……こちらへ!」
格納庫へ二人を連れて行く王。光武Fや天武が数機並んでいる。
王「これは、今はもう使われていない機種で、スターの改良のために実験用に置いてあったもの。今、少ない霊力でも自然界のエネルギーで補って起動できるようにする実験の途中ではあるのですが、使えるとすればこれくらいしか……」
イザーク「なんだ、やたら小さいモビルスーツだな」
ディアッカ「まあ、なんでもいいじゃん。やってやろうぜ」
イザーク「貴様に言われるまでもないわ!行くぞ、ディアッカ!」
ディアッカ「おおせのままに、ってね」
乗り込んだ二人。
イザーク「なんだこれは。この筒に腕を入れるのか?この管を接続するのか?」
王「おお、お二人のわずかな霊力でもなんとか動きそうですじゃ!」
ディアッカ「よっと、これか?お、動いた!」
イザーク「よし、なんとか感覚はつかんだ。行くぞディアッカ!!」
ディアッカ「グゥレイトォ!」
キラ「リカー、リカ、どこいったの?」
草むらの影からかぼそいリカの声がする。
リカ「キ……ラ……」
キラ「リカ!?」
草むらの向こうを見ると、すぐ崖になっていて、崖の途中の木の枝にリカがひっかかっている。
キラ「どうしたの、リカ!?」
リカ「ノコが登った木の枝にひっかかっておりれなくなったから、助けようとリカも登ったら、リカが乗ってた枝が折れて落ちて、崖に生えてた木にうまくささったけど、服がひっかかって崖のぼれなくなったー。びえ〜ん」
キラ「今、助けるから!」
キラが手をのばし、リカの首根っこを捕まえてひっぱるが、複雑に服が枝にひっかかっていてなかなか引き上げられない。そうこうしているうちにキラの足場が崩れた。
キラ「うわっ、アスラーン!!」
猛スピードで走ってきたアスラン「キラっ!?」
キラの服の端をアスランがはっしとつかみ、必死で支える。
アスラン「リカもいるのか?いったいどうしてこんな……って、今はそんな場合じゃないな」
キラ「リカの服が枝にひっかかってるんだよ」
アスラン「そうか……なら」
アスランは懐から、左目の周りに星型の模様のある、白いボール……ハロを取り出して崖に投げ入れた。
アスラン「行け、ハロ!」
ノコ模様のハロは崖をうまく跳ねてリカに近づき、ちょうど引っかかっている服の部分を小さなナイフで切った。途端にアスランの腕は軽くなり、キラとリカをすんなりと引き上げることができた。
キラ「ありがとう、アスラン」
リカ「びえーん、ありがとな!ありがとな、キラ、アスラン!」
アスラン「ほら、もうそんなに泣くな……」
キラ「リカが無事でよかった……」
リカ「ひっく、うえっく……。ノコも無事だぞ、よかったぞ……ぐすっ」
ほっとして泣きじゃくるリカの周りを、白い物体が跳び回っている。さすがにリカも何事かと顔をあげると、ノコ模様のハロが目に入った。
リカ「なんだこれ!?」
アスラン「あ……、ハロだよ。ほんとはもっとちゃんと渡したかったんだけど」
リカ「ハロ?でもノコと同じ模様だぞ!」
キラ「アスランはペットロボを作るのが得意なんだ。僕のトリィもアスランに作ってもらったんだよ」
リカ「トリィもか!?すごいな、アスラン!」
アスラン「あ、えと、その。まあ、気に入ってもらえたらいいんだけど……」
リカ「気に入ったぞ!ノコの友達だ!ノコ、良かったな!」
ノコ「きゅきゅー♪」
ノコハロ「ハロハロ〜♪」
リカ「アスラン、ありがとうなのな!」
アスラン「あ……(照)」
〔3〕へ続く
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