溝の口に住んでた頃、休日の昼間に小杉二郎に行ったことがある。 
確かに券売機がある。

自販機というような形のが。

店に入るとカウンターと小上がり。

壁には無数の名刺が。 
カウンターへ着席して食券を置く。

店主と助手は黙々と作業をしているが、客のほうも黙々としている。

「ニンニク入れますか?」

私の心臓は一気にバクバク。

これが有名なニンニクコールか!

「は・・はい。普通の量でお願いします。野菜は少なめで・・。」 
その瞬間、カウンターの客4人の刺すような視線が私に集中する。 
何か間違いを犯してしまったのか?
私は視線という凶器でめった刺しに遭い、瀕死の体でラーメンをすする。 
同時にラーメンをすする同席者達の勢いは私の比ではない。

呼吸よりラーメンをすすることに集中しているのではないか。

そして、私が残り3分の1ほどになると、次々に席を立って行った。
これでゆっくり食える。

そう安堵したのは一瞬であった。

並ぶ男たちが次々と空席を埋めて行く。

座りざまに私を睨む。

理解できないまま再びペースを上げて食べ終え。

席を立つ。
すると、私の立ち上がるのを待っていた列先頭の男が睨みつけながら なおかつ口元を緩め、こう呟いた。

「ロットが・・・。」