彼と一緒に過ごす時間を
彼の親は引き裂こうと
一生懸命だった。
私はその頃、彼を頼って
彼の住む県外地へ身を寄せていて
彼の住むアパートの隣りに住んでいた。
親はすぐ乗り込み、私たちを引き裂こうと
あの手この手を使ってくる。
私が仕事からアパートに帰宅すると
私の部屋から全ての物が無くなっていた。
彼の親が、大家さんから私の部屋の合鍵を借りて
そのアパートから遠く離れたアパートへ
知らない間に引越しさせられていた。
しかし、私は彼を信じていた。
彼が居るから大丈夫。
そう、思い込んでいた。
ところが
明くる日に
私の住むところへ
花束が届き…
その花束には
メッセージが添えられていた。
『私にはまだ、貴女の一生を護れる力がありません。
いい人生を送って下さい』
と。
彼の書いた文字ではあったが
彼の言葉ではないことが
一目瞭然だった。
彼が私に対して
自分のことを『私』なんて
言うわけがない。
そんな所から
察することができた。
いつもいつも
親の言いなりに生きてきた彼は
結局、親の敷いたレールを
外れることはできない。
そういう事だった。
。