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11月11日(桃蓬)


「今日さぁ、何の日か知ってる?」

「‥えーと…?」


リビングでくつろいでたら、不意に桜桃が口にする。
今日。11月11日。
誕生日ではない。記念日とかでもなかったはず。発注した日…とかならわざわざこんな問いかけはしないだろう。
となると思い当たる節が全くない。

うんうんと考える俺をみて彼は満面の笑みで一言。



「今日は、ポッキー&プリッツの日だよっ!」


あぁ、それで。
桜桃はイベントが好きだ。それこそ女子高生バリに。なんだか妙に納得。


「11月11日ね。言われてみればそうだ…」

「そっ、だからホラ、じゃーんっ!」

「あらまぁ…」

「買っちゃったよね、せっかく11月11日なんだからさ」


効果音付きで得意げにポッキーの箱をこちらに見せてくる。何となく買ったんだろうなぁ…とは頭の片隅で思っていたものの、実際に買っていたのを見せられると何ともいえない気持ちになる。
やっぱりか、この子はお菓子会社の策略になんてはまりやすい子なんだろうか、とか。苦笑い。


「あれ、プリッツは?」

「そこまで好きくないから買ってない。そこまでお菓子会社に貢献しなくてもいいじゃんね?」

「…しっかりしてらっしゃる」

「まぁね〜。さ、食べよ?」


策略にはまるわりにはしっかりしてるなぁ、なんて妙に感心している俺をよそにそそくさと袋を開ける彼。


「ぁ、じゃぁいただきま、す?」


一本貰おうと手をだすと彼は袋を遠のけて至極当然のように





「なに言ってんの、よもちゃん


ここはやっぱポッキーゲームっしょ?」




そういってポッキーをくわえて、来いと目で訴える彼。

‥、…。くわえろ、ってか。


「ひょもひゃん、はぁく、ひょことけう」

「ぇ、えぇー…」


チョコが溶けるから早くしろ、と急かされた。けど。
恥ずかしい。いろんな意味で恥ずかしい。
普通にくわえるのもだし、距離感とか、この年になって、その、恋人とポッキーゲームしているってゆう、事実、とか。
…恥ずかしい。


「ひょもひゃんっ!」

「っはい!」


こっちの葛藤なんか知らない(…というか知ってても決行する気満々)な彼はちょっと怒った様子で、ずいっと身を乗り出す。勿論ポッキーはくわえたまま。
しばらくその状態でにらめっこ。

…無論、折れたのはこっちである。


「…、‥わかった、から」


意を決してくわえる、これだけでもう死にそうなくらい恥ずかしい。のに、


「ふわえうらけららめらよ?ひゃんとはんえね?」

「…、‥」


くわえるだけじゃなくて、きちんと噛んで進んでこい、と。
…だから、距離感。唇、が。そうゆうの狙ったゲームなんだって、解ってる。解ってる、けど、既にときめきの域を越えてる、のに。…恥じらいを全く感じてない様子の彼をみると、この辺が世代の違いなんだろうかと改めて考えてしまう。

仕方ないから噛む、けど。
正直恥ずかしくては死にそう。
考えればポッキーゲーム自体見たことはあるものの実際にやってみるのは初めてかも。
ただでさえ近い距離がさらに縮んでいくのが恥ずかしくて、無駄な足掻きだと解りつつ極力ちびちびとミリ単位で噛み進める俺。
容赦なくセンチ単位で噛み進める彼。


「ふふ、ひょもひゃん、はお、あっあらよ」
「〜‥、‥っ」


顔が真っ赤だと指摘される。
反論よりも、彼の声が近いことにまた距離が縮まったことに気づき、そこからくる恥ずかしさでもういっぱいいっぱいだった。
とうとう噛み進めることが出来なくなってしまって、きつく目を瞑ったまま固まってしまう。

カリ、カリ、カリ。


目を瞑ってるせいか桜桃がポッキーを噛んでいる音が、一際、部屋に響く気がした。
音がどんどん近づいてくる。
その間、俺は動けないまま。
次に響いたのは、


ちゅっ


「…っ!」

「へへ、ゴチソーサマっ」


リップ音と同時に唇に暖かい感触。
驚く反面、ぁ、ポッキーなくなったんだ。とか思えてるちょっと冷静な自分がいた。
まぁちょっと冷静なだけで、あとの大半の気持ちは、恥ずかしい、だけども。
目を開けると、視界には悪戯っぽく笑う桜桃がいた。
更に、


「よもちゃん甘ぁい」


なんて、溶けて唇に残っていたチョコを舐めやがった。


「っ、うゃ!ちょ、馬鹿!」

「馬鹿ってなによ、ってゆうかもうちょい色気のある声だしてよね?まぁこれはこれで可愛いけどさ」

「無理、もうやだ恥ずかしくて死ねる…」

「そう?俺楽しかったよ」

「世代だ。最近の子は大胆すぎる」

「よもちゃんが控えめなだけじゃないの?ほらっ」

けろっと悪びれもせず、再びポッキーを取り出して口にくわえ



「まらまら、あうはらふひはっへおね?」



まだまだポッキーがあるから、付き合え。と。
とびっきりの笑顔で死刑宣告。


「一本つき合ったんだからもう許して下さい…」

「らーめ!らってひょーあひゅうひひあつひゅうひひひちらおーんっ」


今日が11月11日、ということを主張し譲らない桜桃。きっと彼の中には

11月11日=ポッキー&プリッツの日
ポッキー&プリッツの日=ポッキーゲーム
∴11月11日=ポッキーゲーム

という三段論法があるんだろう。
普通に食べるという選択肢はサラサラない。


「…、‥」

「あーぁーうー」

「早く、じゃない」

「むー」

「…恥ずかしいんだってば」


ポッキーがなくなるのが先か、桜桃が飽きるのが先か。


「あ!そっか、じゃぁよもちゃんがくわえればいいじゃんね?俺から噛み進めてくから!」

「はっ!?なにそれ本末転倒…んむっ!?」

「はぁーいっ、桜桃いっきまーすっ」

「っ、むー!」


…取り敢えずしばらくポッキーは見たくない。




end。
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ゆすらさんイベント大好きっ子!
よもちゃんイベントに強制参加させられっ子!←

*おにく4

よもちゃんは中年痩せ派と見せ掛けて中年太り派。
もとがガリガリだったので細く見えるけどちゃんと太ってます。老化怖い。


ほの暗いのが続きましたが、基本はこんな感じです。
わいわいがやがや。かしましい。

*おにく3

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*おにく1(桃蓬+紫)

TVをみてなんとなく思った。そして思ったことは口にする。
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