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起爆装置は胸のなか


「千登世、会社でモテてるみたいよ」

不用意に落とされた爆弾は、私を焦らせるのに十分すぎるほどの威力を持っていた。

「え、忍足さん、ほんと?」
「うん。この間さ、千登世とランチミーティングしたんだけど、社内の女性社員がみんなこっちガン見してんの。もう、ごはんが食べずらかったよ」

ランチミーティング
を、忍足さんとしていたのは聞いていました。
お兄ちゃんは色々やりたいことが多いみたいだし、触れ幅が同じな忍足さんと、相談したり、協力したりしたいんだよね。
お兄ちゃん達が全力で甘えているのに、忍足さんは笑顔でそれを受け止める。
甘えた我が儘も、厳しい言葉も、拗ねた態度も、全部。
あの兄達の全部を、だ。

「モテモテなのは、忍足さんかもしれないよ……?」
「いや、違うと思う。僕の勘がそう言っている」

悔しいけど貴方の勘はよく当たるのよ!

「なんか、つまらん」
「透世ちゃんは、昔から千登世がモテるのいやね」
「まあね」

できた兄だ。
長男で、期待を背負い答え続けている兄だ。
そんなに、そんなに、遠くに行かないでくれと思う。

「息をつまらせないといいけど」

忍足さんの言葉に、激しく同意する。
やっぱり、貴方はよく見ている。

「僕は、透世ちゃんもモテると思う」
「え、ほんと?」
「ほんと」

うそ、やった
うれしいなあ。
愛されるのは、素直にうれしい。

報われない愛を知っているからこそ、なおさら。



「忍足さん、お兄ちゃんには恋人できないでほしいなあ」


忍足さんは、曖昧に笑っただけだった。



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