乾いている。
この地に縛り付けられて一体どれだけの時が経ったのだろう。光は我を狂わす。この一筋の光りも射さぬ空間だけが我を冷静にさせ、過ぎたる時へ想いを馳せる時間をくれる。
最後に聞いた声は、誰のものだっただろうか。
毎日、そんなことばかりを考えていた。
この身は呪われ、自らの意思を持って動くこともできない。残された執着だけが、この肉を持たぬ体を動かすのだ。
この国への思いが尽きたわけではない。
だがこの執着は、その思いすらも食い尽くして、体内を這い回るどす黒い蛇のように私を逃してはくれないのだ。
ふと、声が聞こえた。
生きているものだったろうか。
誰かが逃げてくれ、と言っている。何故そんな悲痛な顔をするのだ。体も声も、この世のものではないというのに。
緑の服を着た誰かが来た。
遮られた光を呼び戻すかのように、一閃の焔が放たれた。射し込む光を受けたその人物は、まるで光そのもののような輝く髪をしていた。
声が聞こえる。
光を見て恐れに狂う我を、侵入者を排除しようとする浅ましい執着を、それは打ち払って見せた。
光に晒され魂までも焼き付くすこの痛みが、こんなにも穏やかな気持ちを呼び起こす。
逃げろと言ったのは、私の部下だったか。
私が意思を取り戻し、死者からほんの少しだけ生者の領分を取り戻した時、彼は私の話を静かに聞いていた。
どうか皆も聞いてほしい。
歩み寄る体も、伝え届ける声も、映す涙も持たないが、どうか同じく私の浅ましき執念に囚われたものたちよ。
どうか最後に聞いてほしい。
「 」
光が射し込む。最早痛みもなく、あるのは静かな眠りへの導きだけだった。
(朝というものを知らなかったのだ。迎えることができないほど私の手は暗闇に囚われていたから)