日が落ちて、辺りはすっかり暗い。私はしんと静まりかえった薄暗い城内の廊下を歩いていた。

「アイギナ」

声が降ってくると同時に、後ろから抱き締められた。誰か、なんて振り返らなくても、分かる。
「陛下…」
私は前へまわされた陛下の手に触れた。
大きくて、力強い手。
私の大好きな手。
それが今日は、少し冷たい。
「手が、冷えてますね…」
「少し外に出ていた。今日はだいぶ冷えるな…手がかじかんでしまった」
「それで、私に抱き付いて暖をとっているのですか?」
「ああ」
私は暖炉じゃありませんよ、と笑い混じりに言うと、陛下は「暖炉にあたるより、こうしていた方が落ち着く。それに、幸せな気持ちになれる」と言って私の手を握った。次第に陛下の手が温かくなっていくのは、私の体温が陛下を暖めているからだろうか。
その一方で陛下の体温が、服越しで伝わってくる。鎧を着ているときでは感じられない体温。いま、私と陛下のそれは共有されて、一つになっているのかなと思うと、なんだかくすぐったいけれど幸せな気持ちになった。

アイギナ、愛してる。
私もです、陛下…。ただ…。
ただ?
抱き締めて下さるときは、廊下以外でお願いします。




日参サイト様の「陛下は万年発情期」との言葉をうけて書いたss^^。
万年発情期な陛下は、一人でいるアイギナさんを見かけたら(可愛いだの愛してるだの言いながら)抱きしめまくってそうなイメージです。