部屋に置かれた椅子に座ったまま、窓の外に目を向ける。大粒の雨は、やみそうにない。
ガルカーサさまが宿のお部屋をとって下さって、シャワーを浴びて、着替えて。そして今に至るのだけれど、無性に落ち着かない。違う…、落ち着けないのだ。
結局部屋は一つしかとれなかったらしく、私はさほど広くない部屋でガルカーサさまと二人きりになった。
ガルカーサさまは先ほどシャワーを浴び終え、いまはベッドに腰掛け髪を拭いている。私はそちらをちらっと見て、すぐに目をそらす。
(こんな状況で、落ち着けというほうが、無理…!)

「アイギナ、」
「はいっ」
強ばった私の返事に、ガルカーサさまは苦笑いを浮かべた。「そんな緊張しないでくれ」笑いながらそう言って私に向けられた優しい目。それを見た私は顔が熱くなる感覚を覚えた。
「アイギナ、寒くないか?」
「寒く…ですか…?」
(…寒いと言ったらガルカーサさまはどうするのだろう…。)
きっと、暖炉の火を強くしたりして下さるのだろう。そう確信出来るけれど、でもどこかで違う事態が起こることを期待してしまう。
「少し…寒い、です…」
「……抱きしめても、良いか?」
「え…」
言葉に、つまる。
一瞬、なんと言われたのか分からなかった。

期待していた事態が、起きているのだと気付いたときには顔が熱くなっていた。
「……」

ガルカーサさまのお言葉に、はい、と言いたいのに、その二文字が、出ない…。