短編集。

【心変わり】
転職してきた上司が最高裁判官を撃った。その事実を伝える為にダイイングメッセージを同期に残した。
「ミラーさんが心変わりした。富樫に同窓会は行けないと伝えてくれ」そうメッセージを残して。
落としそうな場所に置いてあるコーヒーのマグカップの裏に書かれた、赤いマジックの矢印。工事のお知らせ。ミラーさんというヒントから、鏡を戻すとマグカップの矢印が見え、コーヒーに毒を盛られたと分かり、ライトにHELP ME Kと書かれたものを見て俺は犯人と奴に危険が迫ったと確信する。ゼミの同期で警察官になった富樫に急いで連絡をする。

机周りからその人について推理するのを書いてみたかったという今作。

【骰子の七の目】
柱時計と腕時計。時計としてはどちらが良いかを6人の有識者達が話し合う会議にある日、地味な女が混じった。自分の推す柱時計に話がまとまりそうになった時、その女により二者択一でなくても良いのではないかと言われてしまう。
観客に2つの内1つを選ばせ支配していた自分を取り締まる為に、女はサイコロの表と裏を足した数“7”として現れたのだ。

【忠告】
妻が俺を殺そうとしていると、犬が書いた手紙を読むが、それが本物だと気付かない。しかし、心の何処かに引っかかっていた為に、犬の忠告で助かるのだ。

【弁明】
『中庭の出来事』で出てきた、噴水の回りを囲むベンチでリクルートスーツを着た就活生が亡くなった時の事を、本人が舞台に立ち、真相を話す。
劇団の先生を愛してしまい、何もなかったがその噂が広まり、先生の妻である女優の友人から、劇団を去るよう一方的に言われてしまう。一劇団員にすぎない私は、就活をするしかなかったのだ。
亡くなる前、怒っているようにも、泣いているようにも、笑っているようにも思えたのはただ、儘ならない自分の人生、今までの事を思い出していたからだ、と。

【少女界曼茶羅】
学校の教室が日々、移動して形を変えていく世界。時には商店街とふっついたり、すごく遠くまで行ってしまったり。その移動が始まったのは、人々が家に引きこもりになり、その打開策として場所の方から移動する案が定着したのだ。

【協力】
UFOの到着により猫や犬も字が書けるようになった。猫のココは夜勤に行ってる間に夫が浮気しており、その証拠品が庭の木の下に埋まっていると手紙を妻に出す。それを信じた妻は、夫が仕掛けた爆弾により死亡する。それは猫と夫の愛の為、協力して邪魔者を排除したのだ。

【理由】
猫が両耳に入ってしまった男と、自分の大事な猫が男の耳から出てこられなくなった女は、猫を愛するが故に男と結婚した。

『私と踊って』
著者 恩田陸
発行元 株式会社新潮社
ISBN 978-4-10-397111-5