短編集。

【ご案内】
自由の国へようこそ。それは強引で、言葉巧みな窓からの飛び降り自殺。
ほんの2ページほどのものなのに、ぐっと引き込まれ、恐怖を感じた。すごい。

【あなたと夜と音楽と】
ラジオDJ二人の軽い掛け合いだけで構成される小説。
ある日、ラジオ局の前に置かれていた雛人形。そして次の時は地球のビーチボール。バカボンのパパのお面。カーネルサンダースの人形。どんどん置物が暗号の様に置かれ、同時にラジオ局近くで目撃された幽霊。

それは全て、ラジオ局の1階にある喫茶店で働いていたウェイトレスの殺人事件の犯人だと疑っていたラジオDJの相方は、真相を確かめる為、少しずつウェイトレスの幽霊が本当に出ていると信じ込ませたのだ。
本当にラジオを聞いているような、軽快な流れで面白かった。

【冷凍みかん】
汽車で旅行中の大学生は売店のおじいさんから、死に際に冷凍みかんを託される。
どんなに困難でも、冷凍みかんを溶かしてはなさない。地球儀と全く同じ模様の入ったみかんは、現在の技術では作らない素材で出来ているみかんを溶かすと、その地図にある土地で災害が起こる。
おじいさんから受け継いできた大学生が亡くなり、事情も知らない人により、みかんは溶かされる。その時、南極の氷が溶け始めていた。

そんな訳ないだろ!おとぎ話かよ!と思いつつ、妙なリアリティがあり、面白かった。どっかでこれ読んだような…。

【おはなしのつづき】
子供に白雪姫のお話を読み聞かせる父が、お妃はなんて悲しいんだろうと言う。
“鏡は、何も変えていない。ただ見たものをそのまま口に出すだけ。鏡は誰のことも愛していない。つまらない事実を伝えるだけ。なのに、鏡の言葉を信じて。自分の前から姿を消し、もう戻ってくるつもりもない義理の娘を、それでも亡き者にしたいという、その嫉妬の強さ”

亡くなった息子に向けて、おはなしを読み聞かせる父は、お妃が白雪姫を狙った様に、死神が息子に目をつけたのが、心の隙間でリンクした。辛い、でも日々は止まってくれない。父の強さが、優しさが、息子に伝わったと信じて楽になったらいいな。

『朝日のようにさわやかに』
著者 恩田陸
発行元 株式会社新潮社
ISBN 978-4-10-397108-5