黒バス/赤黒/特殊パロ/サイトにUPしてたものを移動させただけ/何があっても許せる
2020-11-7 20:54
神を従えし子7
血相を変えた紫原が意識を失っている黒子の身体を桜井から奪い取る。
彼は昼間に不良から逃げ惑う黒子と桜井を助けてくれた。恩人である彼にいきなり警戒心を剥き出しにされて桜井はたじろいだ。
昼間に何か失礼なことをしてしまっただろうか。――いや、不良から助けてもらった時点で彼には迷惑を掛けている。取り合えず謝っておいた方がいいだろうか。
「アンタ、なに?」
「……え?」
なに、とは?
紫原の言葉に桜井は瞬いた。
彼が何を言いたいのか分からない。
どう答えたら良いのか分からず、言い淀んでいると紫原が更に言葉を投げ掛けてきた。
「アンタから変な気配がする…黒ちんに何をした?」
「何を…って…何もしてません…けど…」
本当に何もしていない。ただ飲み物を買っている黒子に話し掛けて倒れそうになった彼の身体を支えただけだ。特別なことは何もしていない。それよりも紫原の言っていた"変な気配"の方が気になった。
周囲を見渡しても桜井たち以外に人影はない。もしかして幽霊?いやいや、そんな、まさか。
「あくまでもしらを切るつもりなんだ?」
「しらを切るって…僕は何もしてません!本当です!信じてください!」
何とか誤解を解かなくては。
此方が必死になればなるほど紫原は更に警戒を強めて桜井から護るように黒子を強く抱き締め一歩後ろに下がる。
何が何だか分からない。
どうして彼は桜井に対して警戒心を剥き出しにしている。どんなに弁明しても紫原は一向に桜井を信じてくれない。頑なに信じようとしない。
おもむろにグッタリとしている黒子の身体をそっと抱き上げた紫原は身を翻し、桜井に背を向けた。
紫原が肩越しに桜井を一瞥する。
「これ以上、黒ちんに近付いたら許さないから」
「……え…」
「黒ちんに何かあったらアンタを問答無用で捻り潰すから…覚悟しておいてね」
鋭い視線が桜井に突き刺さった。
伸ばし掛けた手がピタリと止まる。
紫原から本気の殺気を向けられ、桜井は小さく身体を震わせた。足が竦んで動けない。
黒子を抱き上げたまま休憩所を抜け、廊下の角を曲がって行く紫原。
大きな背中が見えなくなると同時に身体から力が抜けて桜井はその場に座り込んだ。身体の震えはまだ収まらない。
―――不意に背後からカタンと小さな物音が聞こえてきた。
我に返って後ろを振り向けば、休憩所の隅にある座席に黒いフードを被った男が足を組んで座っていた。帝光学園の生徒だろうか。
フードの下――辛うじて見える口元が笑みを作る。
「君は可哀想だね」
男は座席から立ち上がると此方に向かってゆっくりと歩み寄ってきた。そして目の前で立ち止まり、しゃがみ込んだ男は桜井の顎をつかむとそのまま桜井の顔を上向きにした。
―――嫌な予感がする。
今すぐ此処から逃げ出したいのに身体が動かない。自分の意に反して身体は頑なに動こうとしない。まるで自分の身体じゃないようだ。
そうこうしているうちに男が口を開く。
嫌だ、なにも聞きたくない。
耳を塞ぎたいのに腕が上がらない。指すら動かせない。
「……何も分からないまま"君"は消えていくんだよ」
僕が――消える?
自分のなかの何かが蠢き、急に息が苦しくなる。
胸元をつかんでうずくまる桜井の背を男の手が優しく撫でる。
「もう君自身ではどうにも出来ない。……抗うのは止めるんだ」
「……っ…ぅ…ぁ…」
嫌だ、嫌だ、消えたくない。
自分のなかで何かがどんどん膨れ上がっていく。それに比例して"僕"の存在が小さくなっていく。
上手く呼吸が出来ない。薄れていく意識のなかで桜井は助けを求め、手を伸ばした。
誰か、誰か助けてください―――。
助けを求め伸ばされた手は力なく落ちた。
閉ざされた瞼の隙間から流れる一粒の涙。
それを指で掬い、男は小さく笑う。
* * *
―――眠い。
一晩ぐっすり眠ったお陰で身体の痛みは大分マシになったが、強い眠気だけはどうしても取れなかった。最初は寝過ぎたせいかと思っていたが、顔を洗っても強い眠気と頭のぼんやり感は治ってくれなかった。
朝食を摂っていた手を止めて大きな欠伸を一つする。
強い眠気のせいで食欲がない。
余り減っていない朝食を見下ろして黒子は小さく息を吐く。
(…これ以上は食べられそうにないですね…仕方ありません…残しましょう)
持っていた箸をお盆に置いて目を瞑る。
昨晩は休憩所で倒れたボクを紫原君が部屋まで運んでくれたらしい。
普通の人間よりも巨体な彼がいきなり部屋に訪ねて来ただけでも驚いたのに彼の腕のなかで意識を失っているボクを見て更に驚いたと同室者が話してくれた。
勿論、同室者にはその時に「迷惑を掛けてすみませんでした」と謝っておいたが後で紫原にも謝らなくては。不良から助けて貰い、更には二回も運んで貰い、彼には迷惑を掛けっぱなしだ。
そんなことを考えながらウトウトしていると不意に聞き覚えのある声が黒子の名前を呼ぶ。
「テツヤ―――!!」
背中に強い衝撃を受けて危うくお盆にそのまま顔を突っ込みそうになった。
緩慢に顔を上げて肩越しに後ろを振り向けば、自分の背中に楓とミコトが引っ付いていた。しかも二人は心なしか涙目になっていた。
「テツヤどうしちゃったの!?どうしたら一晩でそんな薄くなれるのっ!?」
「う、薄いって何がですか?あ、影が薄いことですか?これは元から…」
「違うっ!私が言ってるのは影のことじゃない!生気のことよ!!」
「せ、生気…ですか?」
楓の声が耳に突き刺さって一瞬だけ眠気が吹っ飛んだ。が、直ぐにまた強い眠気に襲われる。
眠い目を擦りながら楓と同様に黒子の背中に引っ付いているミコトを見る。彼は楓の言葉を聞いて頻りに頷いていた。
「赤司が感じていた違和感はどうやら気のせいじゃなかったみたいだな」
断りもなく黒子の隣にお盆が置かれる。
顔を上げると其所には珍しく真剣な表情をした高尾が立っていた。
椅子を引いて黒子の隣に座る高尾。向かいの席には何時ものように赤司と緑間が座った。
「……生気が薄くなっていると言っていたな。それはどう言う意味なのだよ?」
「そのままの意味よ。昨日の朝見た時は普通だった…どうして一日でテツヤの生気がこんなに薄くなってるの?」
楓の大きな瞳が揺らぐ。
各自、昨日のことを思い出してみるが黒子の生気が薄くなるような出来事はなかった筈だ。まあ、強いて言うなら不良に絡まれたことくらいか。
それ以外に黒子自身も心当たりはなく、皆の注目を浴びるなか首を左右に振った。
「このまま生気が薄くなったらどうなるんだ?」
「―――最悪、死ぬだろうな」
高尾の疑問に答えたのは楓ではなく、今まで黙々と朝食を食べていた赤司だった。
赤司の答えを聞いて楓とミコトが顔を真っ青にしてうつむく。
どうやら彼の言っていることは本当らしい。
箸を置いた赤司が緑間、高尾、そして黒子を見る。
「俺は黒子を死なせたくない」
眠気でぼんやりとしていた黒子の耳にスッと入ってきた赤司の言葉。
ハッとして顔を上げると彼の赤い瞳と目があった。
「今はまだ何が原因で黒子の生気が薄くなっているのか分からないが、絶対にその原因を突き詰めてやる」
「……赤司君…」
「黒子は死なせない。――黒子は俺が必ず護るよ」
勿論、君たちも協力してくれるよね?
赤司の問いに高尾、楓、ミコトは迷わず頷き、緑間も渋々ながら協力することを了承した。
自分のせいでまた皆に迷惑を掛けてしまう。黒子の心は申し訳ない気持ちで一杯だ。
ぼんやりとする意識のなかで何となく視線をさ迷わせると人混みのなかに見覚えのある茶髪が見えた気がした。
彼は昼間に不良から逃げ惑う黒子と桜井を助けてくれた。恩人である彼にいきなり警戒心を剥き出しにされて桜井はたじろいだ。
昼間に何か失礼なことをしてしまっただろうか。――いや、不良から助けてもらった時点で彼には迷惑を掛けている。取り合えず謝っておいた方がいいだろうか。
「アンタ、なに?」
「……え?」
なに、とは?
紫原の言葉に桜井は瞬いた。
彼が何を言いたいのか分からない。
どう答えたら良いのか分からず、言い淀んでいると紫原が更に言葉を投げ掛けてきた。
「アンタから変な気配がする…黒ちんに何をした?」
「何を…って…何もしてません…けど…」
本当に何もしていない。ただ飲み物を買っている黒子に話し掛けて倒れそうになった彼の身体を支えただけだ。特別なことは何もしていない。それよりも紫原の言っていた"変な気配"の方が気になった。
周囲を見渡しても桜井たち以外に人影はない。もしかして幽霊?いやいや、そんな、まさか。
「あくまでもしらを切るつもりなんだ?」
「しらを切るって…僕は何もしてません!本当です!信じてください!」
何とか誤解を解かなくては。
此方が必死になればなるほど紫原は更に警戒を強めて桜井から護るように黒子を強く抱き締め一歩後ろに下がる。
何が何だか分からない。
どうして彼は桜井に対して警戒心を剥き出しにしている。どんなに弁明しても紫原は一向に桜井を信じてくれない。頑なに信じようとしない。
おもむろにグッタリとしている黒子の身体をそっと抱き上げた紫原は身を翻し、桜井に背を向けた。
紫原が肩越しに桜井を一瞥する。
「これ以上、黒ちんに近付いたら許さないから」
「……え…」
「黒ちんに何かあったらアンタを問答無用で捻り潰すから…覚悟しておいてね」
鋭い視線が桜井に突き刺さった。
伸ばし掛けた手がピタリと止まる。
紫原から本気の殺気を向けられ、桜井は小さく身体を震わせた。足が竦んで動けない。
黒子を抱き上げたまま休憩所を抜け、廊下の角を曲がって行く紫原。
大きな背中が見えなくなると同時に身体から力が抜けて桜井はその場に座り込んだ。身体の震えはまだ収まらない。
―――不意に背後からカタンと小さな物音が聞こえてきた。
我に返って後ろを振り向けば、休憩所の隅にある座席に黒いフードを被った男が足を組んで座っていた。帝光学園の生徒だろうか。
フードの下――辛うじて見える口元が笑みを作る。
「君は可哀想だね」
男は座席から立ち上がると此方に向かってゆっくりと歩み寄ってきた。そして目の前で立ち止まり、しゃがみ込んだ男は桜井の顎をつかむとそのまま桜井の顔を上向きにした。
―――嫌な予感がする。
今すぐ此処から逃げ出したいのに身体が動かない。自分の意に反して身体は頑なに動こうとしない。まるで自分の身体じゃないようだ。
そうこうしているうちに男が口を開く。
嫌だ、なにも聞きたくない。
耳を塞ぎたいのに腕が上がらない。指すら動かせない。
「……何も分からないまま"君"は消えていくんだよ」
僕が――消える?
自分のなかの何かが蠢き、急に息が苦しくなる。
胸元をつかんでうずくまる桜井の背を男の手が優しく撫でる。
「もう君自身ではどうにも出来ない。……抗うのは止めるんだ」
「……っ…ぅ…ぁ…」
嫌だ、嫌だ、消えたくない。
自分のなかで何かがどんどん膨れ上がっていく。それに比例して"僕"の存在が小さくなっていく。
上手く呼吸が出来ない。薄れていく意識のなかで桜井は助けを求め、手を伸ばした。
誰か、誰か助けてください―――。
助けを求め伸ばされた手は力なく落ちた。
閉ざされた瞼の隙間から流れる一粒の涙。
それを指で掬い、男は小さく笑う。
* * *
―――眠い。
一晩ぐっすり眠ったお陰で身体の痛みは大分マシになったが、強い眠気だけはどうしても取れなかった。最初は寝過ぎたせいかと思っていたが、顔を洗っても強い眠気と頭のぼんやり感は治ってくれなかった。
朝食を摂っていた手を止めて大きな欠伸を一つする。
強い眠気のせいで食欲がない。
余り減っていない朝食を見下ろして黒子は小さく息を吐く。
(…これ以上は食べられそうにないですね…仕方ありません…残しましょう)
持っていた箸をお盆に置いて目を瞑る。
昨晩は休憩所で倒れたボクを紫原君が部屋まで運んでくれたらしい。
普通の人間よりも巨体な彼がいきなり部屋に訪ねて来ただけでも驚いたのに彼の腕のなかで意識を失っているボクを見て更に驚いたと同室者が話してくれた。
勿論、同室者にはその時に「迷惑を掛けてすみませんでした」と謝っておいたが後で紫原にも謝らなくては。不良から助けて貰い、更には二回も運んで貰い、彼には迷惑を掛けっぱなしだ。
そんなことを考えながらウトウトしていると不意に聞き覚えのある声が黒子の名前を呼ぶ。
「テツヤ―――!!」
背中に強い衝撃を受けて危うくお盆にそのまま顔を突っ込みそうになった。
緩慢に顔を上げて肩越しに後ろを振り向けば、自分の背中に楓とミコトが引っ付いていた。しかも二人は心なしか涙目になっていた。
「テツヤどうしちゃったの!?どうしたら一晩でそんな薄くなれるのっ!?」
「う、薄いって何がですか?あ、影が薄いことですか?これは元から…」
「違うっ!私が言ってるのは影のことじゃない!生気のことよ!!」
「せ、生気…ですか?」
楓の声が耳に突き刺さって一瞬だけ眠気が吹っ飛んだ。が、直ぐにまた強い眠気に襲われる。
眠い目を擦りながら楓と同様に黒子の背中に引っ付いているミコトを見る。彼は楓の言葉を聞いて頻りに頷いていた。
「赤司が感じていた違和感はどうやら気のせいじゃなかったみたいだな」
断りもなく黒子の隣にお盆が置かれる。
顔を上げると其所には珍しく真剣な表情をした高尾が立っていた。
椅子を引いて黒子の隣に座る高尾。向かいの席には何時ものように赤司と緑間が座った。
「……生気が薄くなっていると言っていたな。それはどう言う意味なのだよ?」
「そのままの意味よ。昨日の朝見た時は普通だった…どうして一日でテツヤの生気がこんなに薄くなってるの?」
楓の大きな瞳が揺らぐ。
各自、昨日のことを思い出してみるが黒子の生気が薄くなるような出来事はなかった筈だ。まあ、強いて言うなら不良に絡まれたことくらいか。
それ以外に黒子自身も心当たりはなく、皆の注目を浴びるなか首を左右に振った。
「このまま生気が薄くなったらどうなるんだ?」
「―――最悪、死ぬだろうな」
高尾の疑問に答えたのは楓ではなく、今まで黙々と朝食を食べていた赤司だった。
赤司の答えを聞いて楓とミコトが顔を真っ青にしてうつむく。
どうやら彼の言っていることは本当らしい。
箸を置いた赤司が緑間、高尾、そして黒子を見る。
「俺は黒子を死なせたくない」
眠気でぼんやりとしていた黒子の耳にスッと入ってきた赤司の言葉。
ハッとして顔を上げると彼の赤い瞳と目があった。
「今はまだ何が原因で黒子の生気が薄くなっているのか分からないが、絶対にその原因を突き詰めてやる」
「……赤司君…」
「黒子は死なせない。――黒子は俺が必ず護るよ」
勿論、君たちも協力してくれるよね?
赤司の問いに高尾、楓、ミコトは迷わず頷き、緑間も渋々ながら協力することを了承した。
自分のせいでまた皆に迷惑を掛けてしまう。黒子の心は申し訳ない気持ちで一杯だ。
ぼんやりとする意識のなかで何となく視線をさ迷わせると人混みのなかに見覚えのある茶髪が見えた気がした。
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