スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

雨(道晴)

「今日は雨……か」


サラサラと空から流れるは水。

6月。

梅雨入りした江戸には休む暇もなく雨が降り注ぐ。

そのせいで街はすっかり静まり返っていた。

道満は晴明の部屋の縁側から、空の涙を見つめる。

道満の隣には晴明が、無表情のまま雨を見ていた。


「………」

「…今日の予定はまた後日にするしかないか」

「…!………」


そんな晴明を知ってか知らずか、道満が溜め息混じりにそう呟く。

実は今日、二人は河川敷の紫陽花を見に行く約束をしていた。

美しく咲き生える紫陽花を晴明に見せてやりたかったのだ。

しかし空の機嫌は一向に良くなりそうにはなかった。


「晴明、紫陽花は別の日にしよう。こんな天気では俺達まで濡れてしまう」

「………」

「聞いているのか?晴明」


未だ無言のまま雨とにらめっこをする晴明。

その晴明を見て道満は軽く溜め息をついた。


「……何処へいく。道満」


席を外そうとする道満を、不意に晴明が呼び止めた。


「何処って、巳厘野の屋敷に戻るだけだ。今日は雨が降って予定も中止になってしまったしな」


つまらなそうな口ぶりの道満。

そんな道満の腕を晴明が掴んだ。


「……晴明?」

「……ッ」


晴明が唇を噛んだのが分かった。


「……くな…」

「え…?」


俯いたまま、声を絞り出す。


「……行くな…道満…」

「!」


小さな声だった。


「…何故…ぬしが帰る必要があるのじゃ……」


道満の着物を掴む晴明の手が強張る。

いつもと様子の違う晴明に道満は僅かに戸惑う。


「…晴明…、」

「…わしを独りにするな……」


僅かに、晴明の身体は震えていた。

その身体に道満はそっと腕を添え、抱きしめてやる。

自分より幾分も細く華奢な身体が、小さく跳ねた。


「…そうだな。…すまない、晴明」

「……っ」


縋り付くように自分に抱き付いてくる晴明を、道満は愛しく思った。


「………紫陽花…見に行きたかった…っ…」

「…あぁ、俺もだ」

「…だから…その代わりにわしの側にいろっ…」


溢れ出る自分の気持ちに素直になりながら、道満に擦り寄る。

晴明の気持ちを真っ直ぐ受け止める。


「…今日はずっと一緒だ。晴明」

「………馬鹿者」


小さく呟く晴明の額にそっとキスを落としてやった。







**************

梅雨をメインにした道晴SSです。

急にデレた晴明兄様が書きたくて書いたものです。

でも何故か完成するのに10日かかったという…

早く本調子になれるよう頑張ります。

あたたかな(万鴨・万誕)



「……ねぇ、万斉殿」

「ん〜〜…、何でござるか、鴨太郎殿」

「…そろそろ、どいてもらえないかな」

「何故でござるか?」

「な、何故って…その、膝が痛いし…」


恥ずかしいから。

そう小さく言うと万斉殿はくくっ、と喉奥で笑った。


「わ、笑わなくてもいいじゃないっ」

「ふふ、いや、すまぬ。頬を染める鴨太郎殿があまりに可愛くて、つい」


なおもクツクツと笑う万斉殿を、頬を膨らませて見下ろす。


今僕が万斉殿にさせられていること。

それは膝枕。

万斉殿のお誕生日。

どうしたら彼に喜んでもらえるだろうという思いから、手作りのバースデーケーキと粗品を持って彼のところへと押しかけた。

彼に直接聞いてみると、僕を見てこう言った。

『膝枕をしてくれ』と。

それで万斉殿に喜んでもらえるならと、恥ずかしい思いを振り払い、ろくにお誕生日のお祝いをしないまま了承しちゃったんだけど……


かれこれもう20分はこうしている。


「…万斉殿…、飽きない?」

「全然。」


むしろ超幸せでござるー、と僕の膝上でゴロゴロと甘えてくる万斉殿は、本当に幸せそう。

そんなに気持ち良いのかな?

僕の方はだいぶ膝が麻痺してきたんだけど……

でも、まぁいっか。

万斉殿に喜んでもらえるなら。

そう思ってしまう僕がいる。


何だかおかしくなって、僕は万斉殿の頭をそっと撫でた。


「ん…、鴨太郎殿…?何を笑っておられるのだ?」

「んーん、何でもない」

「気になるでござる」

「ひみつっ」


急に楽しそうに笑う僕を万斉殿が不思議そうに見つめる。


「それより万斉殿、これが終わったら早く万斉殿のお誕生日をお祝いしようね」


万斉殿の頭を撫でる手を止めずに万斉に話し掛ける。


「…あぁ、そうでござるな。でも、」

「…?」

「今はまだもう少し、鴨太郎殿の温もりに触れていたい…」


すっ、と伸ばされた万斉殿の大きな手が僕の頬に触れた。





**************

大変遅くなってしまい申し訳ございませんんん!!!

やっと書き上がりました、万誕SSです。


テーマは『膝枕な万鴨』。

幸せいっぱいの万鴨が書きたかったのです!←

読んでくださった皆様に感謝!

お粗末様でしたorz
<<prev next>>
カレンダー
<< 2010年06月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
アーカイブ