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2018年10月14日 07:21
小説 3P
R-18
甘んじて
1ページ目、2ページ目必読!(お知らせがあります)
c*車魚
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甘んじて天泣
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【お知らせ】
作品の投稿についてのお知らせです。
マイピクの皆様、フォロワーの皆様、ブクマしてくださっている皆様は是非ともご一読ください。
これまで作品の投稿は、新作はタグをつけて投稿し、数日後にタグを外して全体公開、その後は過去作品すべてをタグなしで全体公開としていました。
ですが、今後は過去作品はすべてマイピク収納する事にいたしました。
投稿の際に非公開フォロー、非公開ブクマをお願いしていましたが、残念ながら非公開にしてもらえない方がおられますので、勝手ながらこのような方法にさせていただきます。
今後は公開ブクマ等は見つけ次第ブロックさせていただきます。
新作は引き続きタグを付けて数日全体公開したのち、マイピク限定公開となります。ただ、数字ががっつりお仕事している作品に関しては全体公開なしで限定公開のみにする方向も検討中です。私の作品はそんなに数字がお仕事することはないのでその時にまた考えます。
今ある過去作品については、少しずつ下げて、11月までにはすべてマイピク収納する予定です。
ただし、シリーズに関しては新作投稿時にシリーズすべてを閲覧できるようにしようと思います。
以前にもすべての作品をマイピク限定公開にしようと考えた時期がありましが、その時は予想以上にたくさんの方からのご要望もあって、タグなし全体公開にする事にしました。
お願いすれば、理由を説明すれば、理解してもらえると考えていましたが、その自分の考えの甘さを痛感しています。
マイピク承認に関しても、今までは正直緩かったのですが、色々と思うところもあり、このままではいけないと考えています。
これからはきちんと確認させていただいてから承認していこうと思います。
既にマイピクの皆様についてもフォロー、ブクマ、プロフのアイコン含む内容等をこちらで確認させていただき、ルールを守っておられない方は、大変申し訳ないのですがブロックするか、マイピクを外させていただく場合がございます。お心当たりのある方は、今一度ルールをご確認の上、ご協力をお願いします。
大多数の方はルールを守ってくださっています。ですが、全員が守らなければ意味がありません。
私個人の身勝手でこのジャンルを危険に晒すことはしたくないです。
こんな私の話を読みたいと思っていただいて本当に有難いのですが、デリケートなジャンルですので、ご理解の上で閲覧、マイピク申請していただければ嬉しいです。
マイピク申請してくださる方は、お手数ですがプロフを一度ご覧になってからお願いします。
長々とお付き合いいただきましてありがとうございます。
次ページに簡単な設定も書いてあります。そちらも目を通してください。
【必読】
本作品は三次元同人を扱っています。
非常にデリケートなジャンルですので、三次元同人、J禁P禁の意味が理解できない方、また以下の言葉の意味がわからない方は閲覧しないでください。
『車魚』
☆フォローやブクマをされる際は必ず非公開に設定していただきますようご協力をお願いします。
公開にされている方は大変申し訳ございませんが、ブロックします。
また、ご感想などはコメント欄ではなくメッセージにて頂けると嬉しいです。
☆作品の投稿について
新作はタグをつけて投稿しますが、タグは数日後に予告なく外します。その後は、過去作品はすべてマイピク限定公開となります。
シリーズものですので、大まかな設定を書いておきます。
二十代前半の付き合いたての初々しいお二人をイメージしています。
シリーズを最初から読んでいないと意味がわからないと思いますので、お気をつけください。
それでは次ページより本文です。
ルールを守ってくださる方のみ次へお進みください。
車を店の前に付けて、つよしを迎えにもう一度店内に入る。
自動扉が開いた瞬間、目に飛び込んで来た光景に思わず足がピタリと止まった。
そこにはつよしと後輩の他に予想外の人物が居た。
今日のゲストだった女の子、倉田すずだ。
以前共演したとかで、腹立たしいほどつよしと仲が良い、若い女優さん。
彼女はおどおどと、つよしと後輩の顔を交互に見ながらところなさげに佇んでいて、後輩は怖いくらい真剣な顔で相変わらず赤い顔をしているつよしを睨み付けるように見つめている。
そんな視線をさらりと受け流しているつよしの顔には、勝ち誇ったような笑みが浮かび、上機嫌な様子で口角を上げている。
そして、何故か彼女の腕を掴んでいた。
…なんだ、これ?
傍目から見れば、三角関係の縺れによる修羅場のようにも見える三者の様子に、俺の身体は急激に温度を下げ、言い様のない不快感が全身を駆け巡っていく。
「…何してんの?」
自分でも驚くほどの低い声が出てしまい、つよし以外の二人が弾かれたように俺を見る。
だが、つよしだけはすぐにこちらを見ずに、酷く緩慢な動作で自身の手から倉田すずの腕をするりと滑らせるように解放した。
にこやかな笑みを浮かべたままゆっくりと時間をかけて俺の方に向いたつよしの後ろで、倉田すずがそろりと一歩後退して、その背に隠れるような位置に移動したことによって俺の視界から消えたことが、またしても俺を苛立たせる。
ムカムカと胃の中が煮え滾るような感覚に無意識に眉間に深い皺が寄った。
「なーんも。ちょっと世間話してただけ」
つよしがいつものように間延びしたゆったりとしたしゃべり方で俺を見ながら言った。
とてもじゃないがちょっと世間話してただけ、という雰囲気では無かったように感じたし、俺の登場によって明らかに他の二人は動揺しているように見えた。
訝しげな視線を向けてもつよしは表情を少しも変えずに、にっこりと微笑む。
これ以上は追求するな、という作ったような笑顔に俺が気が付かない筈もなく、内心やれやれと溜め息を吐く。
こういう顔をしている時のつよしは、何を話していたのかと聞いたとしても素直に答えないだろうことは分かりきっている。
言いたくないというのなら無理に問い詰めようとは思わない。
それでも俺には分かってしまった。
つよしが決して上機嫌などではなかったことに、むしろ不機嫌なのだということに、つよしと目が合った瞬間に気が付いたからこそ、このまま放置することは出来ない。
かと言って、今ここで問い詰めても押し問答になるのは目に見えている。
だとすれば、つよしの不機嫌の原因が何であれ、一刻も早くこの場から離れるのが得策だ。
聞きたいことも言いたいことも山ほどあったのだが、俺はそれをぐっと呑み込んだ。
「ふーん…まぁええわ。つよしくん、帰んで」
短くつよしを促して、そのまま出口へと向かったけれど何故かつよしは付いてこず、不思議に思って振り返ろうとした時、意外な声に呼び止められた。
「あのっ、光一さん。話があるんですが、今から少しだけお時間をいただけませんか?」
やや緊張した面持ちで俺を見る後輩は、いつもと雰囲気が違うように感じられた。
光が乱反射してキラキラと瞬いている瞳は真剣そのもので、少しだけ不安げに揺れている。
普段ならいくらだって時間を割くし、それこそ何時間でも話を聞いてやるのだが、生憎と今夜だけは彼に付き合ってやることは出来ない。
このところ毎晩のように彼を含む後輩たちに付き合って飲みに行っては愚痴を聞いてやったり悩みを聞いて出来る限り解決するようアドバイスをしたりと、俺なりに先輩として求められれば答えてきた積もりだ。
別に恩に着せるわけではないが、本来出不精な俺は毎晩外出すること自体なかなかしんどかったりする。
それでも誘われればいそいそ出向いて行くのは、それが可愛い後輩だからに他ならない。
もっとも最近はつよしと会う予定もなく、連絡もないことに少なからずダメージを受けていたので、俺的にも気を紛らせることが出来て助かってはいた。
だけど、それはあくまで他に予定がない場合だ。
そして後輩には今夜は予定があるとすでに伝えてある。
数日ぶりにつよしに会えるというだけでも今夜は最初から他の予定など入れるつもりなどなかったし、ましてやその最愛の恋人は発熱してしまった。
加えてつよしの様子がどこかおかしいと感じている俺は、一刻も早くつよしとふたりきりの空間に閉じ籠りたくて、幾分冷たく後輩をあしらった。
「今から?今日は予定があるって言うたやろ。悪いけど、今度にしてくれ」
俺の拒絶が伝わったのか、一瞬ビクリと肩を震わせて、それでも後輩は何かを訴えるように俺を見つめてくる。
「少しだけでいいんです。お願いします」
深々と頭を下げてくる後輩に対して申し訳ない気持ちが湧かない訳ではなかったが、俺としても誠意は尽くしているつもりだ。
いつもなら俺が断りを入れれば、すぐに受け入れてくれる後輩が、今日は一歩も退かないといった様子で随分と聞き分けのないことを言う。
「今日はほんまに時間ないねん。つよしくん送らんとあかんし」
懇願するような視線を向けられても少しも心が動かされることはない。
つくづく俺を揺さぶれるのはつよしだけなのだと思い知る。
それどころか、嫌悪感さえ感じ始めた俺の心情を知ってか知らずか、それまで静観していたつよしがこのタイミングで徐に割り込んできた。
「僕はタクシーで帰るから、送ってあげたら?」
「……はぁ?」
ふざけんなよ、と言外に怒りを滲ませて睨み付けるが、のほほんとしゃべるつよしは何処吹く風で意に介した様子もない。
「ひとりで帰れるし、僕のことは気にしなくていいから」
誰が独りでなんか帰すか!
何が僕のことは気にしなくていい、やねん。お前以外の誰を気にせぇっちゅーねん!
可愛さ余って憎さ百倍とはこの事だ。
つよしと会えるこの日を待ちわびていたのも一刻も早く帰って二人っきりになりたいと思っているのも俺だけなんか?
病気のつよしを置いて、他の奴と帰れなんてよく言える。
お前は本当に俺の恋人なのか、と問いただしたくなる。
それまで必死に押さえ付けていた俺の荒ぶる感情が爆発したかのように、怒りに目の前がチカチカと点滅する。
「あほなこと言いなや。そんなことできるわけないやろっ」
「よいはもぉさめたし、らいじょうぶ」
「つよ。ええ加減にせいよ?」
わざと睨み付けても効果はあまりないけれど、明らかに大丈夫ではない口調のつよしに、まだ言うのかと半ば呆れる。
そんなひらがな喋り全開で、若干呂律も回っていないクセに、どの口が言ってんねん。
もしかしなくてもまったく自覚がないらしいつよしの様子に、あからさまに盛大な溜め息を吐く。
「つよしくん、今日体調悪くてさ、熱があるのよ。やから、一人で帰らせられへん」
わざとつよしを無視して後輩に向かってそう言うと、俺以外全員が目を丸くして俺を見る。
張本人であるつよしが一番驚いたような顔をしているから、思わず脱力してしまう。
いや、お前まで驚くなよ。
ふらふらと身体を揺らしながら自分の頬を触って熱を確認し始めたつよしがなんだか危なっかしくて、少し強引にその熱い身体を引き寄せた。
覚束ない足元を支えてやりやながら、見せつけるように肩を抱く。
本音を言うと、こいつは俺のモノだから手を出すなよ、と言ってやりたい。
ここでキスのひとつでもすれば、倉田すずだってつよしへの想いを諦めるかも知れないし、つよしの気を惹こうと無駄な努力をしなくて済む。
でもそんな真似をしたら、つよしはきっと怒るんだろうな、と少し恥ずかしそうにさっきよりも少しだけ赤く頬を染めた腕の中の恋人に口角をあげる。
無意識なのだろうが、身体をくっ付けると自然と俺に体重を預けてくるつよしに、それまでの怒りも忘れて緩みそうになる頬を無理やり引き締めるのは結構大変だ。
つよしがチラリと何か言いたげに上目遣いに俺を見ていたが、それには気がつかない振りを決め込む。
「つよしくんそろそろ限界そうやから、俺ら先に買えるわ」
ポカンと俺たちを見ていた後輩と倉田さんに簡単に挨拶をして、ほとんど引き摺るようにつよしを連れて店を出る。
店の前に停めてあった愛車の赤いドアを開けて助手席に押し込むようにつよしを座らせると、自分も運転席に滑るように乗り込んだ。
「ん?」
「………」
何故か俺をじっと見て動かないつよしのシートベルトを身を乗り出してカチャリと閉めてやってエンジンをかけた。
ハンドルを握りながらチラチラと助手席を見て、こっそり溜め息を吐く。
車を発進させた途端に、つよしの纏う空気が一変してしまった。
不機嫌です、とでも言いたげにむっつりと黙り混んで、ぷぅっと膨らませた頬と可愛らしい特徴的な三角の唇をあからさまに尖らせている。
車に乗り込むまでは、ふわふわと酔っ払い特有の柔らかい雰囲気だったのに、今はその面影すら無い。
どうしたものかと頭を掻く。
何が切欠かすらわからない不機嫌モード全開のつよしは、はっきり言って面倒くさい。
まぁ、それはそれで、可愛いんだけど。
「疲れたやろ。着くまで寝とく?」
赤信号で止まったタイミングで、シートを倒してやろうかと声をかけても無言でふるふると首を振るだけでこっちを見もしない。
「気分悪くなったら、すぐ言うんやで」
困り顔で頭を撫でてやると、そこは嫌がることなく嬉しそうにちょっとだけ頬を緩ませるから心の中で笑ってしまった。
甘やかされることに慣れきったつよしの反応が可愛くて仕方ない。
俺に頭を撫でられたり世話を焼かれることをさも当然という風に受け入れるつよしに、言い知れぬ充足感が俺の心を満たしてくれる。
もっともっと甘えたになってくれたらいいのに、と思ってしまっている時点で、今後更に甘やかしてしまうだろう自分が容易に想像できて我ながらもう病的だとちょっと引く。
つよしの不機嫌に反比例するように、俺の機嫌はどんどん上昇していく。
鼻歌でも歌い出しそうな気分で夜の街を赤い車で駆けるのは、何度赤信号に引っ掛かろうが、マナー違反の車に割り込まれようが、少しもイライラしない。
寧ろ久しぶりのドライブデートを俺は不機嫌な恋人にちょっかいを出しながら楽しんだ。
何度目かの信号でつよしのふっくらした頬を指の背でスリスリと擦ってから青に変わったことを確認して車を発進させる。
車が止まる度に、どこかしら触れているけれど手を払われる事もなく、走り出すとチラチラと俺の顔を窺っているつよしに内心ほくそ笑んでいたら、突然車内に着信音が鳴り響いた。
恋人同士の甘い空間に、無粋な機械音。
上着のポケットのスマホから振動が伝わってきて、ほんの少し気分を害しながら俺は無視を決め込んだ。
「ケイタイ鳴ってんで」
また赤信号に引っ掛かったのでつよしに触ろうとしたら、先にそんなことを言われてタイミングを逃してしまった。
おん、とだけ返事をして、ほらやっぱり邪魔されたとスマホに舌打ちしたいところをグッと堪えて信号を睨み付ける。
「…出ぇへんの?」
なかなか鳴り止まない着信音を気にして、つよしが俺をチラリと横目で見る。
出るつもりは初めから無かったから軽く首を振って意思表示をしたらつよしの眉間に皺が寄ってしまった。
どうやら俺が電話に出ないことに腹を立てたらしい。
けど、もしここで俺が電話に出たとしてもそれはそれでつよしはきっと何で電話に出るんだと怒ったと思う。
間違いなく、絶対そうだ。
つまり不機嫌モードのつよしは、どっちにしろ俺のする事なす事すべてが気に入らないのだから俺に出来る事といえば、苦笑いくらいだ。
「なんで?出たらええやん」
思ったよりつよしの口調がキツいものだったので、少しだけ意外に思い顔を見つめると、気まずげにすぐに顔を背けられてしまった。
しまった、と顔に張り付けて分かりやすくアタフタし出したつよしは、懸命に電話に出なければいけない理由を並べ立てている。
時々何を考えているのか分からないくらい心情を隠すのが上手なのに、今夜はいつになく感情が駄々漏れているつよしが可愛くて、つい顔がニヤけてしまう。
「…運転中やし、もうつよしくん家に着くから後でええよ」
緩んだ口元を手で隠しながら言うと、ハッと顔を上げたつよしがキョロキョロと世話しなく黒目を動かすから、突然どうしたのかと小動物みたいな動きを目で追う。
取り敢えず見守っていると、つよしは何故かシュンとしてしまった。
眉尻を下げて、唇を引き結んで、今にも泣き出しそうな顔で窓の外の景色を見つめるので声をかけようとした時ちょうど信号が青に変わって慌ててハンドルを握る。
車が走り出して再び目線を向ければ、今度はさっきまで下がっていた眉尻がつり上がり、三角の口が尖っていた。
内心ギョッとして、思わず二度見してしまったほどの豹変ぶりだ。
さっきまでの不機嫌アピールとは違って、どうやら今度は本気で怒っているようだ、というのはわかったが、如何せんつよしのスイッチがどこにあったのかがわからない。
こうなれば、もう下手に手出しは出来ないので、俺は黙って運転するしかない。
「車止めて。んで、電話出て」
え、ここで停めんの?何てツッコミを尖っている声に入れる勇気は持ち合わせていないので、今じゃなくても…と小声で抗議してみたけど、すごい勢いで睨まれた。
「なんで?なんで今じゃダメなん?それとも僕がおったら話せんの?」
殆んど叫ぶように言ったつよしの瞳が水分を溜めていて、今にも溢れそうになっている。
つよしの涙にめっぽう弱い俺は、黙って言われた通りに路肩に寄せるしかなかった。
ハザードランプが点滅する規則的な音がやけに大きく響いて、いつの間にか着信音は鳴りやんでいた。
シートベルトを外して、黙り混んだ助手席に体を向けて顔を覗き込んでみる。
つよしはビクッと肩を揺らして、俯いたまま膝の上でぎゅっと両手を握りしめた。
「つよしくん?」
名前を読んでみても益々握る手に力が入っただけで返事はない。
今日何度目かの溜め息が出そうになって慌てて飲み込んでから、不機嫌の原因であろうスマホを上着の内ポケットから取り出した。
着信履歴を確認して、ちょっと意外な相手だったことに驚きつつ何の用だと眉を潜める。
普段滅多に電話なんてかけてこないくせに、こんな時にわざわざかけてくるな、と理不尽にも怒りを感じて舌打ちしたい気分でスマホから視線をあげたら、つよしがこっちをじっと見つめていた。
大きな潤んだ瞳からは、堪えきれなかっただろう滴がポロリと落ちた。
「っ…つよ?」
一つ溢れてしまえば、まるで決壊したダムのようにポロリポロリと大きな滴が止めどなく丸い目から溢れ出す。
「っ…ひっく…っ…」
いよいよ嗚咽を漏らし始めたものだから、慌ててスマホを投げ捨てて両頬を掌で覆うようにして濡れた後を拭ったけれど、少しも追い付かない。
長い睫毛に縁取られた瞳からは、つよしが瞬きする度にぽろぽろと大粒の涙が流れては後を残して消えていく。
親指の腹で目元を優しく擦ってみても瞳から水分は全然減ってくれずうるうると潤んで溢れてしまう。
突然のつよしの涙に分かりやすく狼狽えた俺は、何とか泣き止ませようと必死で宥める。
「え、ちょっ…つよ、どした?」
頭を撫でてみてもつよしは時折瞬きをしながらも俺をじっと見つめるばかりで答えてはくれない。
「つよ…お願いやから、もう泣かんでや」
どうにか泣き止んでほしくて、ツンと上向いた唇をちゅぅと優しく啄んで、涙の後を辿るように頬を唇で伝って瞼に口付ける。
一旦顔を離して、ぼぉっと俺を見つめるつよしと視線を合わせて、もう一度唇を寄せて瞳から滴を吸い取る。
つよしの瞳から新たな涙が溢れていないことに心底ほっとして、最後に音も無くつよしの唇を覆って軽く舌先で拭った。
しょっぱくて、遠い昔のほろ苦い思い出の味がした。
つよしの涙は俺の胸を締め付ける。
見ているだけで、可哀想で、苦しくなるような、何ともやるせない気分にさせられる。
どうも俺は、昔から泣いているつよしがこの世で一番苦手だ。
まだ出会った頃の恥ずかしがりやで甘えん坊で寂しがりやなのに強がりな小さな子供だったつよしが、ホームシックで一晩中泣いている姿を思い出すからか。
それとも少し前の忙しすぎて自分を見失っては泣きながら必死で足掻いていた痛いくらいの姿を重ねてしまうからか。
ただ単に俺の中の庇護欲を刺激するだけなのかも知れないが、理由がなんであろうと関係ない。
結局のところ俺は、何年たってもこの泣き顔を隣で見続けて、何度だってその滴を拭うのだ。
まだ少し震える背中を宥めるようにポンポンとあやして、腕の中に閉じ込めた。
胸にすがり付いてくる温もりに、混み上げる愛しさで息すらできなくなりそうだった。
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「甘んじて」/「天泣」の小説 [pixiv] www.pixiv.net
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2018年10月14日 09:38 に更新
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