話題:突発的文章・物語・詩
旧ブログの作品。
何となく自分でも気に入ってます。
少し切なめな……恋愛詩?っぽいもの、かな。
続きよりどうぞ。
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列車の扉が、閉まる瞬間。
「負けんじゃねぇぞ!」
君は目に涙をいっぱい溜めて。
わざと、怒ったように。
普段の君からは出てこないような
乱暴な言葉を叫ぶ。
僕は呆気に取られたまま、
返事をするタイミングを逃して。
無情にも列車は動き始める。
夢を追いかけて、上京する僕と。
地元に残る、君。
ついて来て欲しいと言えなかった僕を
君は心の中で責めているだろうか。
会社勤めを辞めてまで、上京する僕を、
君は全面的に応援してくれたのに
「あたしは、ここで応援しているから」
と、笑顔で僕にそう言った。
「東京にはキレイな人もいっぱいいるよ」
「余裕ができたら、恋がしたくなるよ」
「いい恋愛しなくちゃ、いい歌だって歌えないよ」
まるで他人事のように。
僕に諭して。
さよならをした訳ではないけれど。
近い将来、僕たちに別れがやってくるのを
予感しているような口ぶりは
返って僕に後ろめたさを感じさせる。
「見送りは行かないからね」
あっさりと。
笑顔で言われていたのに。
誰に聞いたのか知らないけれど
発車時刻間際になって
君はホームに現れた。
「…来たんだ」
「時間、あったからね」
すぐにバレるような嘘も
君の精一杯の照れ隠し。
発車まで。
あと1分。
“まもなく発車します”
ホームに流れるアナウンスと同時に
君は白線まで下がって。
僕は電車の扉ギリギリに立つ。
車掌さんの吹く笛を合図に。
ゆっくりとした動きで
僕と君の間を隔てる扉が
少しずつ少しずつ閉まっていく。
「負けんじゃねぇぞ!」
その瞬間に聞こえた、
君の叫び声。
あぁ。
こんな時にもやっぱり。
しっかり背中を押してくれんだな?
「待ってるから!」
なんて。
可愛らしい言葉の方が
きっと君には似合うのに。
動き始めた電車を、
君は走って追いかけたりはしないで
ホームに立ち尽くしている。
最後の最後に僕が見た君は。
決意を含んだ、強い顔。
それが、
たまらなく愛しいと思った僕は
君をずっと思いながら
明日から生活していくのだろう。
いつか。
君を迎えに行けるかな。
いや。
きっと。
迎えに行くから。
どうか。
どうか。
変わらずに。
待っていてくれないか。
-END-
2013-5-31 09:47
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