気付いたら、会計終わってた。
レジ終わって呆然としたわ……まさか予定外のハードカバーを買うとは。
結末だけ読んで終わるつもりだったのに。
昨日、アルスラーン戦記の新刊を買いにTSUTAYAに行ったんです。
で、そこで「アリス殺し」というハードカバーが目に止まった。
表紙には散らかった部屋、中心に虚ろな目をして座り込む金髪に青いエプロンドレスの典型的な「アリス」。
白いエプロンに飛び散る血痕、その上にいる小さなトカゲ。
そしてそのアリスの目の前に垂れ下がる首吊りロープ。
「不思議の国のアリス」好きなら目を引かずにはいられない題名と表紙。
作者は小林泰三。まだ読んだことのない作家だった。
けど大体において表で気を引く本は「拍子抜け」で終わるものだ。どうせこれもそうだろう、と思いつつ気になるから最後だけ読んでやろうと手に取った訳だ。
〈あらすじ〉主人公、栗栖川亜理(くりすがわ あり)は現実では女子大学生。だが眠ると「アリスの世界」の夢を見る。
ある日、夢でハンプティ・ダンプティが塀から墜落死した。すると現実でも同じ死因の大学生が。
夢の住人が死ねばそれが現実にも影響する。同じ死に方をする人がいるのだ。
現実では事故でもあちらの世界では殺人だ。
事件調査に帽子屋と3月ウサギが乗り出すが、よりにもよってアリスが容疑者にされてしまう。
アリスが犯人と断定されれば、女王に首を切られてしまう。そうすれば現実でも――。
事件がきっかけで同じく大学生の井森と夢の世界を共有している事を知った亜理は、協力して真犯人を見つけようとする。
と、こんな流れ。謎解きから結末を読むというミステリーでは邪道過ぎる事をした結果、私は本を抱えてレジに並んでいた。
「どんでん返し」のネタバレを全部読んでしまった訳だが、読んだからこそ冒頭からじっくり読みたくなってしまった。
深夜までかけて改めて読んで思った感想は「こりゃ騙されるわ」と「面白い」
主人公や犯人が「実は……」ってネタは散々あるけど、結末知っててもこれは拍手するしかないと思う。
ここからは多少のネタバレも含んだ感想になるので隠します
おK?
じゃ、気兼ねなくいきます。
夢の世界と現実でまず面白いのが「記憶」以外に共通点があんまりないこと。
「白兎」は目の悪い年寄りな偏屈じいさんなのに現実では亜理と同じ女子大学生の友達だったり。
協力者の井森はかなり頭がいいんですが、夢では「間抜けな蜥蜴のビル」ときた。
そりゃもう酷い。
アリスと一緒にいるからアリバイの証人になれるのに全然使えない。無実を証明したかもしれない証拠を食べる。
亜理もイライラしてるけど本人の井森はもっと苛立ってると思う。
あちらでは権力者でもこちらでは無力。性別も頭の中身も違う。
そして怖いのが現実と夢を繋ぐのが「本人の証言」しか無いこと。
井森はビルの時にアリスと合い言葉を決めて、現実でそれを亜理に確認して彼女が「アリス」であると確信します。
けれどこれが他の人には通用せず、カマをかけるか本人に夢では誰なのかを聞くしかない。
途中で出てくる警部は自分の正体を語らず、犯人は嘘を言います。こうなると誰が誰だか分からない。
しかしこれは亜理側にも役に立つ訳ですが。
そもそもアリスが容疑者にされたのは「白兎」の勘違いのせいなんですが、これが巡り巡って真犯人を突き止める要因になる。
これはにやりとするなぁ。
この話のキーパーソンは「ハートの女王」かなと。
主人公はもう活躍してるから主人公以外で注目すべきはと言ったら彼女。
不思議の世界の女王はお話通りの存在だが現実の「女王」は行動的。いやもう、女王だと思わないよ、これは。
メインじゃあ無いんですが、女王は女王。お約束のあれをやってくれます。
「アリス」はビルの他に大事な協力者がいます。ポケットの中に。
そして亜理も家族とまで言う大事なハムスター「ハム美」を飼っています。
この一人と一匹の互いの感情がね〜……固いなぁ、と。どちらか片方だけじゃこの結末には行かなかったはずです。
さて、結末は言わないでおきますがここで大事なネタバレを。
この話、メインと思われる人たちも容赦なく殺されます。亜理の協力者も次々と死んでしまいます。
そしてタイトルの通り、アリスも真犯人に殺されてしまいます。
犯人は分かったのに、自分の容疑を晴らす前に無念の死を迎える。
でも最期に笑ったのはアリスです。
亜理は勿体つけたわけでもなく、ありのままを話しています。重要なネタバレを知って読んだんですが伏線だらけです。
通常の会話で亜理はぽろぽろと「ネタバレ」に繋がる事を話しています。
なのに自然過ぎて気付かない。ビルの井森も最後までそれに気付かなかった。
亜理も隠したつもりはない。だからああなってしまった訳ですが。
単純に面白いですね。これはオススメ。
「騙される騙されるって書いてあって騙されるか」と思うなら読んでみるといいですよ。
私はかなりに気に入りました。
こういう話、好きだわ〜……
2014-5-27 11:39