ふわふわしてて、
一瞬何が起きたのか、わからなくて。

あ、そうだ、忘れ物。って思い出した瞬間、
目の前の彼女が
今さっきまで自分の机で、笑ってたことも
同時に思い出して。

がらにもなく恥ずかしいような、
くすぐったいような、感覚で。

咄嗟に出た言葉が、
「忘れ物取りに来ただけだよ」

扉の前にいる彼女の脇を通り、
ドキドキしながら、手に変な汗を感じながら、
自分の机から教科書を取り出して、
しっかりバックにしまって。

何か、なにか言いたい。
でも何を言うんだよ、何て声かけるんだよ。

扉の前でこちらを向いてる彼女を見て、
頭は最高速で回転しているのに、言葉がでない。

どうしよう、どうしよう。
一秒一秒が、すごくスローだった。
一歩一歩が、すこぐ重たかった。

彼女の脇を通り過ぎるとき、
必死に絞り出したことばが、

「それじゃあ、気をつけて帰れよ」

笑えてたかな、少しは恰好良かったかな。

もやもやと、ドキドキと、
恥ずかしいのと、よくわからないので、
胸の辺りが締め付けられてる感覚。

自分がにやにやしてる感じがして、
ほっぺをパンパンと叩く。

早く帰って課題やらなきゃ。