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心の音色


思い出せば至極下らないこと。

「秋菜はいつもそう!」
「あたしだけが、悪いわけ?陸人もそーじゃん!!」

ただ、2人とも寂しいだけなのに。
その心とは裏腹に、言葉は棘となる。

(本当に伝えたいのはこれじゃないのに……。)

喧嘩のあと、無言で背を向け寝る二人。

(寝られてるかな。)
(明日は大丈夫かな。)

いつだって、お互いの心配をして。
それなのに、何故か、すれ違う心。

朝が来て、彼女は、仕事に向かう準備。
俺は、黙って背を向けたまま。

「陸人、昨日は、ごめん。行ってきます。」

ガチャリ。
扉が、閉まる音。

しばらくした後、
自分に降り掛かる後悔たち。

(何で寝てる振りしたんだろ)
(何で喧嘩したんだろ)
(抱き締めれば良かった)
(キス、したい。)

精一杯のごめんねと、
お風呂と、君の好きなものを準備して。

待ってるね。

だから、早く、帰ってきて。




キタク。


残業2時間。
重たい足取りで家まで帰る。

「明日は学校あるから泊まれない」

仕方ないとは、思っていても、
やはり、心は深く深く落ちていく。

こんなことなら
食材買うんじゃなかったなー。

なんて、負け惜しみにも近い言葉を吐く。

何度目か、最早わからないくらいの溜息。
そしてやっと家に到着する。

がちゃり。
そこで違和感。

(電気、付けっぱなしでいった??)

そこから少し高鳴る心。
(もしかして、まさかねえ。)

「ただいまー……?」

半信半疑で声を出してみれば、
思った通り、お風呂場から出てくる恋人。

「あー!お疲れ様!!」

満面の笑みで迎えてくれる恋人。

「あれ、今日、来ないって…」
「会いたくなって、来ちゃったよ!」

今さっきまで、不貞腐れた顔だったのに
ふんわり、笑顔になるのがわかる。

「お風呂沸かしておいたよー!」
「そのお買い物なにー??」
「残業大変だったねー」

矢継ぎ早に質問されて、
それに素早く答えて。

2人で笑うこの時が、
素直に幸せだと、そう、思った。


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