先月末に出た「大奥」最新巻。
10月にはなんと実写映画になるということで、本屋さんにも うず高く積まれてました。
よしながファンとしてとても嬉しい!
というわけで、感想でも。
ネタバレ要素満載ですのでご注意ください。
長く描かれてきた綱吉の章完結と、間部詮房の章序章が今回の収録内容。
今巻を読み終わった瞬間思ったことは、「幸せとはどうしてこんなにもはかなく、せつないものなのか」ということでした。
胸が痛みます。
以下、心に残った点を箇条書。
■死ね、綱吉。死ね
■生きるということは 女と男ということはただ女の腹に種を付け子孫を残し家の血を繋いでいく事ではありますまい
…大奥に綱吉の治世を憎む男子が入り込み、綱吉を襲う。なんとか事なきを得た綱吉だったが、死を覚悟した間者に治世に対する恨み言を吐き捨てられる。
犬に襲われたこどもを助けることができず、見殺しにするしかなかったこと。
男のいない世でひとり、大奥に若い男をはべらせる老婆の死を、皆 願っていると。
その言葉は真実で、その通り、自分は死ぬべきで…死にたいと思う綱吉だったが、綱吉が唯一愛した男・右衛門佐によって、止められる…
この辺りの展開には本当に息を呑みました。
そして、はかないはかない幸せ。
綱吉がそれを掴もうとした瞬間、消えてしまったのが哀しくてなりません。
■きっと宮廷の男で私ほど幸せな男はおるまいと…
…右衛門佐が亡くなってからの綱吉の穏やかな生活と、死を描いた章における一節。
右衛門佐が死に、静かな生活を送る綱吉だったが、麻疹をわずらった綱吉は床に伏せる日々。
そんな綱吉のもとに深夜、綱吉の御台がやって来る。
正式な夫として唯一認められた存在だったはずが、子をなすこともできず、綱吉の寵愛を得ることもできなかった御台。
綱吉の夫になれると知ったときの胸の高鳴り、幸福感、そして綱吉に愛されなかった絶望。
選ばれなかった者の気持ちが胸にせまりました。
■上様、あなた様は あなたという方は…
■みな上様に恋をしているのでござりまする…
幼い日からつねに綱吉の傍らにいた側用人・吉保。
吉保は麻疹に伏せる綱吉の顔に、濡れた布をかぶせ吉保は綱吉を抱きしめる。
「なんて可哀相なお方!ちっとも分かっておられなかったのですね!周りの者達が一体どれほどあなたに恋い焦がれていたか…皆がどれほどあなたを自分一人のものにしたがっていたか」
吉保の哀しい叫びが、苦しむ綱吉とともに描かれる。
初めて知りました。吉保までもが綱吉を愛していたなんて…。
綱吉の残酷な魅力と、それに翻弄された人々のせつない叫びに彩られた…彼女らしいといえばらしい生涯の幕引きでした。
■新章・間部詮房の章
しばらく将軍の話が続いていた大奥ですが、今度は将軍の側近・側用人のお話。
徳川の治世中期〜後期には側用人は将軍以上の権力を持っていたとされています(この時代になると将軍が幼かったりしたことも多いですから。将軍と側用人の関係は天皇と摂政の関係に似ている気がします)
母親への嫌悪を抱きつつ家に縛り付けられていた左京という名のうつくしい青年が将軍家宣をただただ敬愛する側用人・間部詮房と出会うところから物語は始まります。
まだ物語は始まったばかりですが、大奥のお話では幾度となく取り上げられている烈火の恋の物語なので、それをよしながさんが描くとどんな物語になるのか!?
今から本当に楽しみです。
来年にならないと次巻が読めないなんて、なんとも殺生な作品です。
それくらい、面白い!