久しぶりに少女漫画のレビューでも。

いつもいつも腐ったことばかり考えているわけじゃないのよ、皆さん知っておいて頂戴!というね、叫びです(なんだそりゃ)

+こんなところで難ですが、今日拍手くださった貴方様!ほんとうにほんとうにありがとうございます〜



あ、なんか本題が遅れました。


「蝶々雲」は「砂時計」で有名な芦原妃名子さんの短編集。

青春期特有のヒリヒリと焼け焦げそうな空気感が芦原さんの最大の魅力だと思うのですが、その辺りが本当にうまく描かれていて芦原さんの匠っぷりを感じます。


では早速一作づつレビュー!






■蝶々雲

…表題作。兵庫の田舎町で二人の幼馴染の男の子、完太とゴマに囲まれ、おてんばに成長した主人公・清。
そんな清の前に真っ白な肌にお人形のような大きな目をした東京からの転校生・六花が現れる。
都会育ちの六花はなかなか村特有の人間関係や遊びになれないのだが、いつしか清と完太、ゴマの関係に入り込んでくる。完太のことが好きな清は六花に複雑な感情を抱き始め…というお話。


芦原さんによりますと、この作品は「砂時計」の原型になった作品とのこと。
舞台設定や視点となるキャラの立ち位置は少々異なりますが、確かに「砂時計」を思い起こさせる設定がチラホラとあります。
いつもながら、芦原さんの描かれるぶっきらぼうな男の子像が秀逸。
また、一抹の寂しさも含みながら…でも「これでよかったんだ」と素直に思えるラストシーンが私はとてもお気に入りだったりします。少女漫画的王道とはいえないけど、こういうラストもいいんじゃないでしょうか。



■中学1ねんせい〜恋未満〜

ここから「ちゅうがく●年生」シリーズです。
このシリーズは…シリーズではないみたいなもので、全部中学生の女の子が主人公っていうだけで、内容的つながりは特にありません。あえていえば、その歳ならではの空気感がそれぞれある、というくらいでしょうか。

ちゅうがくいちねんせいは、恋に恋するお年頃。主人公の可菜にも好きな人がいる。可菜は大好きな藤本君が他の誰かと話してるだけで胸がキュンとしちゃったり、藤本くんのもちものに少し触れただけで大暴走しそうになるような、妄想系。もう好きでいられるだけでマンゾク…!と思っていたのに、ひょんなことから藤本君に可菜の気持ちがバレ、もうだめだ…と思ったのに、なんと藤本くんは可菜に「付き合ってもいいよ」と言って…というお話。

あらすじの続きを少しバラしてしまいと、恋に恋していた可菜はいざ付き合ってみた藤本くんが可菜の理想の王子様でないことを知る。裏切られたー!と思うのに、でもやっぱり藤本君を見つめている自分に気づく…このコメディから切ないお話に切り替わるタイミングが本当に絶妙で、「あ、アタシうまいこと芦原さんに誘導されとるわー!」と思いました。ラスト4pがものすごく好きです。



■ちゅうがく2ねんせい〜男嫌い〜

…ちゅうがくせいなのに発育がよい阿部は通学途中の電車でいつもチカンに遭ってしまう。今日こそは大声出して犯人を捕まえてやる、とチカンの手を掴んだはずなのに、阿部が掴んだその手は同級生の鳥井の手だった。チカンと間違えてしまったことをキッカケに鳥井と阿部の距離は少しづつ近づいていき…というお話。

気が強いように見える阿部の弱さ、それを自然と「守ってやりたい」と鳥井が思う心の動きが非常に自然で、短編とは思えないほどいろんなことが描かれています。さっきも似たようなことを書いた気がしますが、こちらもラストが秀逸です。キュンキュンします。



■ちゅうがく3ねんせい〜サクラチル。〜

…教育実習のため母校にやってきた菅野。若すぎる中学生を前にして、少々ノスタルジーを感じていたのもつかの間、生徒のひとり・山瀬に「死んだ魚の目!」と罵声をあびせられてしまう。
以後も山瀬は菅野の授業では堂々と内職するなど、これ見よがしな態度をとってくる。
そんなある日、菅野は山瀬が中学時代に菅野がバスケットボールで全国大会に行ったときの写真を持っているのを見つけ…というお話。

オトナになりたい、誰にも自分を傷つけさせないように、大切な人を守れるように

コドモ特有の、無力な自分となりたい自分のギャップにもがく様子が胸にせまる一作。
子供だというだけで、どうして心無い大人に傷つけられていなければならないのか…世の中って不条理にできているなぁと思う。
でも、いつか子供は大人になれる。そう思うと、子供だったせいで受けた傷は、いつか癒えて消えてくものなんじゃないかな、と
読みながらそんなことを考えさせられました。

主人公の山瀬の「泣き笑い」の表情が印象的な一作です。



主人公の年代が中学生〜高校生ということで非常に甘酸っぱい短編集。

恋をして高鳴った胸も、コドモだからと傷つけられた記憶も、その時々…青春の一瞬にだけ感じられる感情が触れると切れそうなくらいせつせつと切り取られています。

読みながら何度も胸をつかまれました。胸がきゅっとなるお話をお探しの方に特にオススメです。ぜひぜひ〜