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01/11 【小話】マジカル☆ラッセル第七話『魔王覚醒、敵は誰?』次回予告

※現在、気候の変化にやられています
※真面目にふざけているパラレルの次回予告です
※実年齢無視の高校生化
※ネタバレ1:ラッセルが原因不明の呪いもとい変身するための動力源により♀化してます
※ネタバレ2:スウハに黒猫耳と黒猫尻尾がついてます
※ネタバレ3:シリアス調
※注意:台本形式次回予告です


+++



ラッセル:
わからなくなってきた……。
魔王の器?
ユイルにぃさんが?
タカツキはいずれ魔王の器を壊す命令がくると言っていた。
器を壊す?
それってつまり……。


次回、マジカル☆ラッセル第七話『魔王覚醒、敵は誰?』


そんなこと、できない!

01/11 【小話】マジカル☆ラッセル第六話『嘘と罪、そして涙☆』-5-

※遅くなりましたが、あけましておめでとうございます
※真面目にふざけているパラレルです
※実年齢無視の高校生化
※ネタバレ1:ラッセルが原因不明の呪いもとい変身するための動力源により♀化してます
※ネタバレ2:スウハが猫耳+猫尻尾姿になります
※ネタバレ3:敵味方逆転の前兆


+++


「申し訳ないが奴を寝かせるのにベッドを借りた」
 スィーヅに促されて入った部屋の先には、確かに人影が見える。
 後ろ手にされた状態でベッドの上に寝かされ、スィーヅと良く似た形の漆黒の衣装と解かれた長い黒髪に目が行く。
 その瞳は瞼で深く閉ざされ、首元からは白い包帯が覗いていた。
「誰だ、この人は?」
 抱っこしていた子猫姿のスウハを柔らかなクッションの上へ寝かせた後、目の前で眠っているその人物の姿を見てラッセルは思わず息を呑んでいた。
「……先程も言ったが、タカツキだ」
 スィーヅは嘆息しつつ言葉を返す。
「……冗談、だよな?」
 ラッセルは沈黙した後、引き吊った笑みでスィーヅを見上げる。
「……声を聞けばなんとなくわかるはずだ」
「こ、声でしかわからないのか」
 スィーヅはどう説明しようか考えるような沈黙の後、真面目な顔で言う。
 おかげでラッセルは困惑したようにおろおろとスィーヅ曰わくタカツキだと言う人物を見てしまう。
(そ……想像と違う……)
 もっとおちゃらけた情けない姿を晒しているものだと思っていたのに、目の前にいるのは静かに眠っている精悍な顔立ちの男性なのだ。
 そして、その瞼がピクッと動き、うっすらと開く。
「きゃっ!」
 ラッセルはビクゥッと肩を跳ね上げた後、スィーヅの後ろに隠れる。
「……目が覚めたか」
 一方でスィーヅは冷静にタカツキを見下ろした。
 タカツキは返答を拒否するようにくっと唇を閉ざし、冷ややかな双眸でスィーヅを見上げる。
(黒と灰色の瞳……?)
 スィーヅの後ろから鋭い双眸を見下ろし、ラッセルは息を呑む。
 特に灰色の瞳の形が独特であり、なんだか引き込まれてしまいそうになる気がした。
「……タカツキ、ユイルの居場所を教えて欲しい」
 静かな口調でスィーヅはタカツキに尋ねる。
 しかし、タカツキは口を閉ざし、話す気配が見られない。
 その反応をわかっていたようにスィーヅは嘆息する。
「……私は手荒な真似が嫌いだ」
「……よく言うものだな」
 しれっと呟いた声を聞き、スィーヅの後ろに隠れるようにして様子を伺っていたラッセルの目が丸くなる。
「えっ!?」
 声を聞いても落ち着いた口調のせいで別人のように感じてしまう。
 おろおろあわあわとするラッセルの視線に気づき、タカツキはしみじみと呟く。
「……相変わらず間の抜けた面だな」
「そのムカつく言い方! お前、本当にあの眼鏡なんだな!」
「……さっきから言っていたぞ」
 ふしゃーっと文句を言うラッセルを背に隠し、スィーヅは嘆息する。
「タカツキ、もう一度言う……ユイルの居場所を教えてくれ」
 するとタカツキは口を閉ざす。
「っ、どうして、ユイル兄さんが狙われないといけないんだ! わたしの『ジュエル』と交換させるのが狙いだからか!」
 カッと頭に血が昇り、ラッセルはタカツキに詰め寄る。
「我が王の復活のために必要だったお前の『ジュエル』はすでに必要なくなった」
「それはどういう」
「ラッセル、それ以上聞いてはいけない……」
 その淡々とした言葉にラッセルはムキになり更に言い募ってしまう。
 咄嗟にスィーヅはラッセルを制していた。
 しかし、タカツキはふっと口元に笑みを浮かべる。
「ユイルが我が王の器として選ばれたからな」
「器……?」
 ラッセルはその言葉の意味がよくはわからなかった。しかし、良い意味ではないことは察しているらしく怪訝な顔をする。
「タカツキ!」
 スィーヅは彼の胸倉を掴んで、強引に上半身を引っ張り上げて言葉を制する。
 その際、後ろ手にされて交差させられた手首に半透明な枷がはめられているのが見えた。
「事実を言って何が悪い?」
「もう少し言い方を……」
「ユイルの身体に我が王の『ジュエル』が定着した今、ユイルは貴様達の討つべき敵となったわけだが……それをお前の口から伝えられるのか、甚だ疑問だな」
 はっと鼻で笑ってタカツキは目を伏せる。
「っ!」
 スィーヅはその一言に思わず絶句した。
「ユイル兄さんがわたし達の討つべき敵って……どういうことだ!」
「彼は我が王……天界側で言うところの『魔王』復活の要だ。つまり、いずれは天界からその器を破壊する指示が出る」
「破壊って……」
 ラッセルの脳裏に天使の持つ槍に引き裂かれるユイルの姿が浮かび、青ざめる。
「っ……ふざけるな! 大体わたしはそんなっ」
 そのイメージを振り切るようにラッセルは声を荒げていた。
 そのまま、否定の言葉を願ってスィーヅの顔を見上げたとき、彼は頬に冷汗を伝わせていた。
 そして、タカツキは口元にどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「それでもなお、ユイルの居場所が知りたいのなら教えてやってもいい」
「くっ……」
 先程とは違い、スィーヅは顔をしかめて、唇を噛み締める。
 タカツキの瞳は挑発的な光を宿し、そんな彼の姿を映していた。


 ―――お前に殺せるのならば。





次回へ続く

12/30 【小話】マジカル☆ラッセル第六話『嘘と罪、そして涙☆』-4-

※現在、気候の変化にバテてます
※真面目にふざけているパラレルです
※実年齢無視の高校生化
※ネタバレ1:ラッセルが原因不明の呪いもとい変身するための動力源により♀化してます
※ネタバレ2:スウハが猫耳+猫尻尾姿になります
※ネタバレ3:敵味方逆転の前兆


+++



「ユイル」

 暗く堕ちていく意識の中で誰かに呼ばれた気がしてふっとユイルは目を覚ます。
 そこは上も下もわからない無重力に支配された暗闇の中だった。
「ユイル、よかった……」
 冷たい指先の手で頬を撫でられ、ぼんやりとした瞳でユイルはその手の主を見る。
「貴方は……」
 そこには長い黒髪に猫のような形の紅い瞳をした中性的な顔立ちの人物がいた。
「私は……シュゼやタキの主だ」
 その名の呼び方から、すぐに誰のことを言っているのか察する。
「では貴方が……彼等が言っていた王……」
 ぼんやりとする思考の中で呟いたとき、目の前の彼はふふっと嬉しそうに笑ってみせる。
「『魔王』とは呼ばないのだな」
「貴方は、優しい目をしていますから……」
 ユイルの呟きにぽかんと目を丸くした後、可笑しそうに細めてくすくす笑い彼の身体を抱きしめる。
「こんな瞳に、そんなことを言われるのは久しぶりだな」
 そのまま、ユイルの顔を覗き込み、申し訳なさそうに眉を寄せて目を細める。
「ユイル、シュゼやタキがお前の身にしたことを許してほしい……全ては私が悪いんだ」
 少し間をおいた後、ユイルは目を伏せる。
「……そうですね」
 ユイルはそっと彼の冷たい手を取り、自分の胸元に当てる。
「貴方はあの夢の中でこの奥に貴方という存在の欠片を埋め込んだ」
「……ああ」
「やっと、貴方があのときなんて言ったのか思い出せました」
 そう呟き、ユイルは微笑む。
「おやすみなさい、王様」
「かたじけない……。しかし、王様呼びは止めてくれ……私の名はアベルと呼んで欲しい」
「わかりました、アベル」
 胸元に触れていた手がユイルの中に溶け込むように消えていく。
「この恩は私が目覚めたとき、返そう……」
 黒い光に包まれ、ユイルの中へと消える。
「ええ……楽しみにしていますよ……」
 その光の残滓を胸に抱くようにして、ユイルは目を閉じる。

『しばらくは―――お前の傍で眠らせておくれ』


*


 ぐったりとしている子猫のスウハを抱えて、ラッセルは自分の住むマンションの一室へと戻ってきた。
 そこには沈痛な面持ちで俯くスィーヅが佇み、ラッセルに深く頭を下げた。
「……すまない……」
「えっ?」
 突然のことにラッセルは驚いたようにスィーヅを見る。
 激しい戦闘でもあったのか衣服がところどころボロボロになり、怪我をしたのか、返り血なのか……赤く染まっていた。
「守れなかった……」
「っ!」
 何をとも、誰をとも言われなくてもラッセルには伝わった。
「そんな……」
 ぽろぽろと涙が零れ落ち、その中の一粒がスウハの耳に当たる。
「……そちらも襲われたのだな」
 ぐったりとしたスウハの様子を青みがかった灰色の双眸で静かに見下ろす。
「そうだ……スウハが庇ってくれて……」
 しゃくりあげながらラッセルはスィーヅを睨み上げる。
「なのに……どうして……っ」
「……ユイルを取り戻すまでは、謝ることしかできない」
 その声音は感情を押し殺すように淡々としていた。
「えっ……取り戻すって……場所はわかってるのか!?」
 ラッセルは思わず驚いたように叫んでいた。
「場所はまだわからない……ただ、タカツキを捕らえたから吐かせるつもりだ」
 不安げに聞いていたラッセルの後半の一言にぽかんと目を見開く。
 脳裏に嫌味な笑みばかりを浮かべるダボダボ白衣の眼鏡天使の姿が過ぎり、彼女はのけぞった後、絶叫した。

「えぇええぇえっ!?」





-5-へ続く

12/30 【小話】マジカル☆ラッセル第六話『嘘と罪、そして涙☆』-3-

※現在、気候の変化にバテてます
※真面目にふざけているパラレルです
※実年齢無視の高校生化
※ネタバレ1:ラッセルが原因不明の呪いもとい変身するための動力源により♀化してます。今回はセーラー服を着用。今回は出番なし
※ネタバレ2:スウハが猫耳+猫尻尾姿になります。今回は出番なし
※ネタバレ3:ユイルが捕らわれてます
※ネタバレ4:シュゼがユイルを徹底的に痛めつけています
※注意:痛そうな描写があります


+++



 暗い屋敷のとある部屋の中にある広いベッドの上にユイルは寝かせられていた。
 その手足は黒い鎖で固定され、自由を奪われている。
「……やはり、まだ定着はしないか」
 ベッドの縁に腰掛けたシュガイアは目を閉じたユイルの頬に触れ、顔を近づける。
 まだ少しだけ甘ったるい花の残り香がした。
「……ぅっ」
 触れたせいか、ユイルは小さく呻き、ゆっくりとその黄金の双眸を開く。
 そして、シュガイアの顔が間近にあり、はっと目を見開いて身体を強ばらせる。
「……目が覚めたか」
「貴方は……っ!」
 咄嗟に起きあがろうとしたとき、ギシッと鈍い音を立てるのみで身動きが取れず、ユイルは自分の手首に巻きついた黒い鎖に息を呑む。
 足を動かそうと力を込めても同じ様に固定されているらしく、悔しそうに顔をしかめることしか出来なかった。
「……お前にはここで役目を果たしてもらわねばならない」
「役目……?」
 淡々と呟かれた言葉にユイルはシュガイアを警戒したように睨み上げる。
「……我が王の仮初めの器(からだ)として、その身を捧げろ」
「なっ……」
 冷ややかに告げられた言葉と共にすっと胸元の上に手を翳され、黒い光が宿る。
「ぁあっ、うあぁああ!」
 全身をかき乱されるような痛みにユイルは悲鳴を上げる。
 固定された手足をばたつかせるように動かそうとしてギシギシとベッドが軋む。
 あまりの激痛にユイルは魘されるように懇願の言葉を口にしていた。
「嫌だッ、嫌だ、嫌だ、止めてくださっぁあッ、止めてッ、シュゼさ……っ、ぁあぁああ!」
 ビクビクと痙攣し、ユイルは自由に身体を動かせない中で身を捩り、悲鳴を上げる。
「……この力に適応出来なければ、いずれ精神を侵蝕されて死ぬだけだ」
「っ―――」 
 掠れて声にならない悲鳴を上げながら、ユイルの瞳から涙が零れ、こめかみへと流れていく。
 悲しみからではなく、全身を支配する激痛から生理的に流れた涙を拭うことすら許されず、ユイルは悔しげに歯を食いしばる。
(痛い、苦しい、嫌だ、助けて―――っ)
 脳裏に過ぎったのは、自分を助けようと必死に戦ってくれた熾天使の姿だった。
「スィー……ヅ……さ……」
 その名を聞いたとき、シュガイアの眉間に皺が寄る。
「……誰も助けには来ない。いや、仮に助けに来たとしてもその頃にはお前は我が王として奴と対峙することになる」
 その言葉にユイルは抗うように唯一動かせる首を横に振る。
 そして、その胸元に黒い輝きを宿したクリスタルの欠片が現れる。
 シュガイアが一度取り出したときよりも一回り大きくなり、少しだけ球に近づいた形になっていた。
「はぁっ……はぁ……」
 痛みが引き、ユイルは胸元を上下させて、荒い息を吐く。
 そのまま、シュガイアは手を伸ばしてそのクリスタルにそっと触れた。
「っ、あ」
 直接身体に触れられたわけではないのにビクッとユイルの身体が跳ねる。
「ほぅ……一応、繋がってはいるのか」
「やめっ」
 その様子を一瞥し、ユイルの抵抗の言葉を無視してシュガイアは欠けている面へと触れた。
「くはっ……」
 ビクッと再びユイルの身体が跳ねる。
 まるで、身体の神経とクリスタルが繋がっているかのような錯覚に陥りつつ、ユイルは抵抗するように手足を動かそうともがいていた。
 しかし、シュガイアの手に黒い光が宿り、欠片の部分へと自らの力を流し込んだとき、ユイルは目を見開き、ビクンと身体を弾ませた後、短い悲鳴を上げた。
「ぁあっ!」
 ドクンと鼓動が高まり、ふっと意識を手放す。
「何故、我が王がお前の中に力を移し与えたのか不思議ではあるが……」
 シュガイアはまじまじとユイルを見下ろす。
 その姿は再び長い黒髪と中性的な顔立ちをした人物へと変わっていた。
 うっすらと開かれた瞳は紅く染まり、猫のような瞳へと変わっていた。
「……ぅ……シュ……ゼ……」
 整った唇が僅かに動き、そう呼ばれたとき、シュガイアはその頬へと触れる。
「……やっと目が覚めたのか」
 どこか穏やかな声で呟いたとき、目の前に横たわっている彼は悲しそうに眉を寄せて目を細めていた。
「何故……こんな惨い方法で……私を……」
 その言葉を聞いたとき、シュガイアは僅かに目を見開き、そのままそっと伏せた。
「……お前に一刻も早く目覚めて欲しかったからだ」
「その気持ちは……嬉しい……。けれど、こんな……ことまでしなくても……私は……ぅっ」
 姿がぼやけ、ユイルの姿に戻りかけそうになる。
「くっ……まだ、あいつの意識が強いのか」
「シュゼ……止せ……それは……当然のこと……。確かに……私はこの身体に……自分の意識ともいえる……『ジュエル』を……宿したが……それは……」
 閉じそうになる瞳を辛うじて開き、ユイルの姿へと戻りつつ、言葉を続けた。
「ただ……清らかな……魂の傍で眠り……回復を……待つため……だった……」
 そして、深く息を吐いた後、仄かに笑む。
「シュゼ……どうか……私が回復するまで……待っていて……ほしい……そして……ユイルを……守って……くれ……」
「それは……」
「頼むぞ……シュゼ……」
 拒否をさせない物言いと共に彼は目を閉じる。
 そこにはぐったりと横になっているユイルがいた。
 そのまま、欠けたクリスタルがすぅっと胸元の中に溶け込み、消える。
 シュガイアは少しの間呆然とユイルを見下ろしていた。
 しかし、ぐっと拳を握り締め、唇を噛み締めた後、目を伏せる。

「……御意」

 暗い部屋の中でその一言が寂しく響いた。





-4-へ続く

12/29 【小話】マジカル☆ラッセル第六話『嘘と罪、そして涙☆』-2-

※現在、気候の変化にバテてます
※真面目にふざけているパラレルです
※実年齢無視の高校生化
※ネタバレ1:ラッセルが原因不明の呪いもとい変身するための動力源により♀化してます。今回はセーラー服を着用。今回は出番なし
※ネタバレ2:スウハが猫耳+猫尻尾姿になります。今回は出番なし
※ネタバレ3:タカツキがスィーヅに喰われます
※注意:流血・グロ描写があります


+++



「くはっ」
 ギシギシと体に巻き付いた護符の帯で締め付けられ、スィーヅは顔を歪める。
 護符に力を吸い取られているかのように身体に力が入らない。
「タカツ……キ……ッ」
 深紅に染まった瞳で彼を睨みつける。
「俺が憎いだろ?」
「っ……」
 静かに呟き、タカツキはスィーヅを見据える。
 そして、スィーヅはくっと唇を噛み締めた後、タカツキを見た。
「違う、私は……お前を憎んでなどいない……」
 ただ、と呟き、俯く。
「どうしてお前はいつも手段を間違うんだ……」
 その瞬間、タカツキは目を見開き、僅かに動揺を見せた。
 スィーヅはその一瞬を逃さず、護符に巻き付かれたままドンッとタカツキの身体に体当たりし、その首筋に顔を近づけた直後、クワッと口を開け牙を突き立てる。
「っ!」
 ビクッとタカツキの身体が跳ね、咄嗟に右手に持った日本刀を振り払う。
 しかし、斬りつけられる直前に血に染まった口元を離してスィーヅは間一髪でその刃を避けた。
 そのまま身体を拘束していた護符の力が弱まった隙に自らの魔力で弾く。
「このっ……くっ」
 赤く染まった首元を庇うように左手で押さえつつスィーヅを見たとき、くらっと目眩がしてタカツキは顔をしかめる。
 そのまま、地面へと緩やかに降り立った。
「……形勢逆転だな」
 タカツキを追うように地面に降り立ち、スィーヅは静かに見据える。
 タカツキは荒い息を吐きつつ、地に片膝を付けるようにしゃがみこんでいた。
 そのままスィーヅはタカツキに歩み寄り、すっと深紅の瞳を細める。
「黒曜(こくよう)を捨てろ」
 感情を殺した声音で呟いたとき、カランとタカツキが手にしていた日本刀が地に転がる。
(くそっ……身体が……勝手に……)
 そして、スィーヅの足元に青白い光を放つ魔法陣が広がる。
「固有結界『杯』発動」
 タカツキの作り出した固有結界の内部にスィーヅの固有結界が形成される。
 その瞬間、タカツキはくっと唇を噛み締め、足元に紫色の光を放つ魔法陣を浮かべる。
 だが、スィーヅは身を屈め、タカツキの顔を自らの手で挟むようにして自分へと向けさせる。
「貴様には色々と訊かなければならない。だから……逃がしはしない」
「くっ……」
 深紅の瞳と目が合い、タカツキの足元に描かれた魔法陣がかき消される。
 同時に、円形に張り巡らされた固有結界もひび割れてパリーンと砕け散った。

「眠れ」

 そっと囁かれた言葉に抗えず、タカツキの意志に反して瞼が閉じていく。
「スィー……ヅ……」
 ふらっと前のめりに倒れ込み、くたっとスィーヅに寄りかかる。
 すぅっと寝息が聞こえたとき、血の香りがして、スィーヅは誘われるように赤く染まったタカツキの首筋を見る。
 ドクンと鼓動が高鳴り、自らの吸血衝動が抑えきれない。
 わなわなと口元が震え、頭を押さえる。
「っあ……ぁあ、許せ……タカツ……キ……」
 罪悪感に苛まれながら俯いたとき、意識のないタカツキの身体を押し倒し、両手首を押さえつける。
 そして、血の滲む首筋に口元を近づけながら、笑みが浮かぶ。
「お前がいてくれて良かったよ、タカツキ」
 その瞳は深紅に染まったままうっとりと酔いしれるように細められ、狂気を帯びた光を宿していた。





-3-へ続く
プロフィール
彼方さんのプロフィール
地 域 東京都
系 統 普通系
職 業 夢追人