※現在、気候の変化にバテてます
※真面目にふざけているパラレルです
※実年齢無視の高校生化
※ネタバレ1:ラッセルが原因不明の呪いもとい変身するための動力源により♀化してます。今回はセーラー服を着用。今回は出番なし
※ネタバレ2:スウハが猫耳+猫尻尾姿になります。今回は出番なし
※ネタバレ3:ユイルが捕らわれてます
※ネタバレ4:シュゼがユイルを徹底的に痛めつけています
※注意:痛そうな描写があります
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暗い屋敷のとある部屋の中にある広いベッドの上にユイルは寝かせられていた。
その手足は黒い鎖で固定され、自由を奪われている。
「……やはり、まだ定着はしないか」
ベッドの縁に腰掛けたシュガイアは目を閉じたユイルの頬に触れ、顔を近づける。
まだ少しだけ甘ったるい花の残り香がした。
「……ぅっ」
触れたせいか、ユイルは小さく呻き、ゆっくりとその黄金の双眸を開く。
そして、シュガイアの顔が間近にあり、はっと目を見開いて身体を強ばらせる。
「……目が覚めたか」
「貴方は……っ!」
咄嗟に起きあがろうとしたとき、ギシッと鈍い音を立てるのみで身動きが取れず、ユイルは自分の手首に巻きついた黒い鎖に息を呑む。
足を動かそうと力を込めても同じ様に固定されているらしく、悔しそうに顔をしかめることしか出来なかった。
「……お前にはここで役目を果たしてもらわねばならない」
「役目……?」
淡々と呟かれた言葉にユイルはシュガイアを警戒したように睨み上げる。
「……我が王の仮初めの器(からだ)として、その身を捧げろ」
「なっ……」
冷ややかに告げられた言葉と共にすっと胸元の上に手を翳され、黒い光が宿る。
「ぁあっ、うあぁああ!」
全身をかき乱されるような痛みにユイルは悲鳴を上げる。
固定された手足をばたつかせるように動かそうとしてギシギシとベッドが軋む。
あまりの激痛にユイルは魘されるように懇願の言葉を口にしていた。
「嫌だッ、嫌だ、嫌だ、止めてくださっぁあッ、止めてッ、シュゼさ……っ、ぁあぁああ!」
ビクビクと痙攣し、ユイルは自由に身体を動かせない中で身を捩り、悲鳴を上げる。
「……この力に適応出来なければ、いずれ精神を侵蝕されて死ぬだけだ」
「っ―――」
掠れて声にならない悲鳴を上げながら、ユイルの瞳から涙が零れ、こめかみへと流れていく。
悲しみからではなく、全身を支配する激痛から生理的に流れた涙を拭うことすら許されず、ユイルは悔しげに歯を食いしばる。
(痛い、苦しい、嫌だ、助けて―――っ)
脳裏に過ぎったのは、自分を助けようと必死に戦ってくれた熾天使の姿だった。
「スィー……ヅ……さ……」
その名を聞いたとき、シュガイアの眉間に皺が寄る。
「……誰も助けには来ない。いや、仮に助けに来たとしてもその頃にはお前は我が王として奴と対峙することになる」
その言葉にユイルは抗うように唯一動かせる首を横に振る。
そして、その胸元に黒い輝きを宿したクリスタルの欠片が現れる。
シュガイアが一度取り出したときよりも一回り大きくなり、少しだけ球に近づいた形になっていた。
「はぁっ……はぁ……」
痛みが引き、ユイルは胸元を上下させて、荒い息を吐く。
そのまま、シュガイアは手を伸ばしてそのクリスタルにそっと触れた。
「っ、あ」
直接身体に触れられたわけではないのにビクッとユイルの身体が跳ねる。
「ほぅ……一応、繋がってはいるのか」
「やめっ」
その様子を一瞥し、ユイルの抵抗の言葉を無視してシュガイアは欠けている面へと触れた。
「くはっ……」
ビクッと再びユイルの身体が跳ねる。
まるで、身体の神経とクリスタルが繋がっているかのような錯覚に陥りつつ、ユイルは抵抗するように手足を動かそうともがいていた。
しかし、シュガイアの手に黒い光が宿り、欠片の部分へと自らの力を流し込んだとき、ユイルは目を見開き、ビクンと身体を弾ませた後、短い悲鳴を上げた。
「ぁあっ!」
ドクンと鼓動が高まり、ふっと意識を手放す。
「何故、我が王がお前の中に力を移し与えたのか不思議ではあるが……」
シュガイアはまじまじとユイルを見下ろす。
その姿は再び長い黒髪と中性的な顔立ちをした人物へと変わっていた。
うっすらと開かれた瞳は紅く染まり、猫のような瞳へと変わっていた。
「……ぅ……シュ……ゼ……」
整った唇が僅かに動き、そう呼ばれたとき、シュガイアはその頬へと触れる。
「……やっと目が覚めたのか」
どこか穏やかな声で呟いたとき、目の前に横たわっている彼は悲しそうに眉を寄せて目を細めていた。
「何故……こんな惨い方法で……私を……」
その言葉を聞いたとき、シュガイアは僅かに目を見開き、そのままそっと伏せた。
「……お前に一刻も早く目覚めて欲しかったからだ」
「その気持ちは……嬉しい……。けれど、こんな……ことまでしなくても……私は……ぅっ」
姿がぼやけ、ユイルの姿に戻りかけそうになる。
「くっ……まだ、あいつの意識が強いのか」
「シュゼ……止せ……それは……当然のこと……。確かに……私はこの身体に……自分の意識ともいえる……『ジュエル』を……宿したが……それは……」
閉じそうになる瞳を辛うじて開き、ユイルの姿へと戻りつつ、言葉を続けた。
「ただ……清らかな……魂の傍で眠り……回復を……待つため……だった……」
そして、深く息を吐いた後、仄かに笑む。
「シュゼ……どうか……私が回復するまで……待っていて……ほしい……そして……ユイルを……守って……くれ……」
「それは……」
「頼むぞ……シュゼ……」
拒否をさせない物言いと共に彼は目を閉じる。
そこにはぐったりと横になっているユイルがいた。
そのまま、欠けたクリスタルがすぅっと胸元の中に溶け込み、消える。
シュガイアは少しの間呆然とユイルを見下ろしていた。
しかし、ぐっと拳を握り締め、唇を噛み締めた後、目を伏せる。
「……御意」
暗い部屋の中でその一言が寂しく響いた。
-4-へ続く