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桜庭一樹短編集(桜庭一樹)


最近の桜庭の作品の中で一番良かったかも、と思ったのは、以前の作品も収録されていたかもしれない。
お気に入りは、死んだ男の視点から妻と愛人の遣り取りを通して女の子の怖さを描いた「このたびはとんだことで」
見つめるだけの静かな青年の恋愛を描いた「モコ&猫」
20代後半の女性の複雑な心理を周りの人間との関わりを通して描いた「冬の牡丹」は共感できた。
雑誌掲載時にさわりだけ読んでいまいちと思った「赤い犬花」もジュブナイルっぽくて意外に良かった。
ああ……桜庭好きだ、大好きだ。

ソーネチカ(リュドミラ・ウリツカヤ)


ロシアの現代作家の作品。
心の美しいロシア人女性・ソーネチカの一生を描いた作品。
結婚、娘の出産、夫の不倫と様々なことが起きるが、ソーネチカは落ち着いてそれに順応していく。
ソーネチカの穏やかな人格が全編に満ちていて、読んでいてとても心地良かった。こんな女性になりたい、と思わされた。ソーネチカが若い頃本好きだった、という点もまたツボ。
この人の本をもっと読んでみたいなあ。

キミトピア(舞城王太郎)


軽妙な語り口でふざけているようでいて、物事の核心を突いた短編集。
優しすぎる夫とその妹が引き起こす騒動を描いた「やさしナリン」が一番好き。本当に核心を突いていて、いるいるこういう人、といった感じ。
とりとめのない、しかし何となく奇妙な日常を描いた芥川賞候補作「おいしいシャワーヘッド」も良かった。
しかし、読んでいてなんだかクセになる作家で、中毒者がいるのも頷ける。もっと読んでみよう。

眼球堂の殺人(周木律)


メフィスト賞受賞作。
帯に書かれた森博嗣の言葉に全てが詰まっている。まさに新本格、といった作品。
トリックはベタなものが組み合わさっており、親切過ぎるほどにヒントが散りばめられていて、割と推理しやすい。フェアであろう、という姿勢が強く見えるが、ストレート過ぎて意外性に乏しかったので、もう少し捻ってほしかった。
小説としてもまだ未熟で、登場する天才たちの天才味が乏しかったのも残念。
良くも悪くも本格ミステリの優等生、といった作品だったので、これから化けるのかが楽しみ。

ヨハネスブルグの天使たち(宮内悠介)


直木賞候補にもなった作品。
歌姫と呼ばれる日本製の人型ロボットを媒介に、近未来の5つの異なる国々を描いた作品。
民族とは、宗教とは、国家とは、戦争とは、言語とは。様々なことを考えさせられる。そして浮かび上がる問題は、現代の世界にも確かに存在するものなのだろうなあ。
歌姫の扱い方の多様性に作者の才能を感じた。
直木賞は取れなかったけど、まだまだ新鋭の作家なので、もっともっとすごくなるだろうから、それから賞を取ればいいのでは、と思う。
次の作品が楽しみ。
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