話題:創作世界披露会及び創作メモ帳


雨が降る日、僕は死ぬ。





冷たい風。
足元の生ぬるさ。


静かな音、止まる音。


「すごく、変な感じ…」

雨の降る日は心臓が動きを止める。
生きていることを感じるためのそれが止まる。
けれど赤い水は体を巡っているらしい。
僕の体は雨と冷たさを共にしながら動き続ける。

僕の顔色はよくないらしいけど、外を歩けば傘に隠れて僕の顔は見えない。
幽霊だ、と叫ばれたことがあるけど、そんなことに傷つくわけはなくて、ああ、幽霊ってのもこんな気分なのかと単純に思っただけだ。
現実にとどまっていない不安定さと、足が地面についていないような心地の悪さに揺れながら。
海を漂うような気持ちの悪さに。


今、短剣が僕の心臓を貫けばどうなるのだろう。
血はでるだろうか。
もしかすると、刺された瞬間に小さく、押さえた笑いのように一度だけ動き、永遠に止まるのかもしれない。

一度、ためそうとしたことがある。

ナイフを心臓に向けて、思い切り振りかぶり、



だけど、やっぱり死ぬのは怖かった。
心臓が止まっていて、まるで死人のようだと感じても、言われても。
本当に死んでいるわけじゃない。
確かにここにいて呼吸をして動いて生きている。

本当に死んでいると思うことはない。
戯れに、詞を書くような気持ちで死を考えているだけなのだ。

死という言葉を軸に想像と妄想をぐるぐるとめぐらせているだけで。

僕が生きていようと、死んでいようと、ここにいることに変わりはなく。
考えたところで、この雨の日に僕の体が温かくなることはない。




太陽が出れば僕は生きる。

雨の日の死を忘れようと懸命に。

ただ生きる。