strangle(R-18)

開けてがっかり玉手箱。

ただし、閲覧は自己責任。

バトン:七日目



《眼鏡》



「僕は、この眼鏡を通して世界を見ることで、僕にとって都合が良い世界に認識することが出来るんだよ。」


君はそう言う。

ならば僕にも貸してよと言うと、君は特に拒むわけでもなく、普通に渡してくれた。

かけてみると、一切なんの変化も無い。
度も入っていなかった。


「別に、何も見えないよ?」

僕は眼鏡を返した。

「当然だよ。」

君は眼鏡をかけながら言う。

「この眼鏡は、“見えなくする”眼鏡なんだよ。」

「え?でも、レンズは透明だよ?」


やれやれと溜息をつきながら、君は僕に説明をしてくれた。


「これはただのプラスチックの板だよ。でも、そうじゃないんだ。この眼鏡は、僕にとってのフィルターなんだ。」

君は、一度眼鏡を外す。

「こうやって見る世界は、そのまんま映る。良い事も、嫌な事も、なにもかも。」

そう言いながら、もう一度眼鏡をかける。

「でも、眼鏡をかければ、僕の目にはフィルターがかかる。だから僕は、見たくない物を見ないでいられるんだ。」



君の顔が、寂しそうに見えた。

「それだと、大切な事も見落としてしまいそうだね。」

だから僕は言ってしまった。

「それに、悲しい事を知らない人は人に優しくなれないよ。見たくない物を見ないんじゃなくて、ただ単に、目をそらしていたいだけだよ。」

「そ…、そんなこと…。」


ほら。君は目を背けた。


「じゃあ、こっちを見てよ。」

そんな君の顔を、無理矢理こっちに向けた。
眼鏡越しの目が、怯えていた。


「ほら。ちゃんと、僕を見てよ。直接。」


僕は君の眼鏡を外した。


「ちゃんと、現実の、本当の僕を見て。」


そう言って、僕は君にキスをした。

君は、真っ赤な顔をしている。


「ほら。ちゃんと見ないと、わからないこともあるよ。」


僕は、笑いながら言った。




end




後書き→
続きを読む
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2010年01月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
アーカイブ