「ぅ…、ットウカ!」
意識を取り戻した彼は飛び起きて、傍らに倒れる大切な少女の姿を確認すると直ぐ様その体に怪我がないが確認する。
幸いにも外傷は見当たらず、ただ気を失っているだけのようで。彼は彼女に擦り寄った。
「…ぅ、ん………ッウィザーモン!」
「良かったトウカ!」
飛び起きた少女が自分の名を呼んだことに歓喜して、はた、と体の変化に気が付いた。
「ウィザーモン!、じゃない…ルーフモン、無事で良かったぁッ…!…」
「トウカ…!」
小さく、灰色の毛むくじゃらな体にちょこん…とした四つ足。ふさふさとした二本の鍵尻尾。琥珀色の三つ眼――つまりは、幼年期まで退化していた自分にルーフモンは驚いたが、気を失う前の出来事を思えば頷けた。
「エテモン…!」
トウカも同じように思い出していたようで。歯を噛み締めた音が聞こえるようだった。
「太一…メタルグレイモン…」
トウカが胸元に提げる琥珀のペンダントと、未だ空のタグを握りしめた。
「タイチたちなら、きっと大丈夫」
「ルーフモン…」
「ね?」
見上げるルーフモンに頷いて、トウカは彼を抱き上げて立ち上がった。
『歪み』に巻き込まれた仲間が、置いてきた仲間が心配でないわけはない。なら尚更、早く帰らなければ。
何か手掛かりになるものはないかと周りを見回したトウカは、視界の向こうに映ったそれに誘われるよう、足を進めた。
曇天よりも曇った空。濃灰の木々や土。そして、開けた目の前に広がるのは――
「……海、…?」
黒い、大海原。
穏やかな、引いては返す波。ザザン、ザザン…と響く波音に、覚えてもいないだろう胎内を錯覚して。
少女は愛しい獣に縋るよう、抱く腕にキュッと力を籠めるのだ。
……………
無印【エテモン】辺り←タイトル忘れた;
うちの燈花は
ルーフモン(ウィザーモン)共々、太一たちと一緒に歪みに飲み込まれる→着いた先は現実世界ではなく暗黒の海/(^P^)\
此処で一悶着あって『導』の紋章を手に入れる…だがしかしぃ!!な展開にしたいです←←
「なんでオレ、進化できないんだろ…」
アグモン、ガブモン、ピヨモン、パルモン、ゴマモンは進化した。そして今や連続しての進化も可能なほど、強くなってきている。
進化できていないのは、自分とパタモンのみだ。
「トウカ、オレ、どうして進化できないんだろ…。オレ、足りないのかな。トウカを守りたいって気持ち、足りないのかな…」
「そんなことない。そんなこと、言わないで?インプモン」
目線を合わせるために燈花はしゃがみ、大切なパートナーの黒紫の体をぎゅうっと抱き締めた。
「トウカ…、でもオレっ…」
「確かに、インプモンはまだ進化できてない。だけどね、私はインプモンに何度も助けてもらったよ」
夜眠る時。闇を恐れた時。光を畏れた時。黒い歯車に震えた時。
すべての時、傍らにあったぬくもりのお陰で少女は立っていられたのだ。
「…逆に、私は、インプモンに必要なのか、そう不安になるの……」
「っトウカはオレのパートナーだ!オレだけの、パートナーだ、から……、そんなこと言わないで…!」
燈花が寂しげにその琥珀色の瞳を揺らせば、インプモンが強く言葉を返した。
互いに互いを思い合うばかりに生じたすれ違い。けれど、そのすれ違いさえ、この一人と一匹は力に変えてゆく。
互いを導き合い、離れないように手を繋ぎながら。
「オレの、オレだけの、大切なヒト……トウカ」
「うん?なに?インプモン」
「オレ、守るから」
小さいままでも。秘める想いは負けはしないから。
「守るから、トウカ」
「…うん。私も、あなたを守るからね、インプモン」
あたたかく笑うキミを。
傷付けるすべてから、余すことなく。
そして、願わくばその傍らに自分が在れますよう。
……………
無印【闇の使者、デビモン】辺り。
*辰真燈花(タツマトウカ):ヤマト兄弟の幼馴染み。クレスペールと日本のダブル←。父子家庭。紋章はベージュの『導(ミチビキ)』。
*インプモン(→ウィザーモン):パートナーデジモン。燈花大好き。なかなか進化できない事など、色々コンプレックスを抱えている模様。
マイナーもマイナー。パートナーのデジモン相手の話って需要有るのか?いやもうそんなん気にしなーい\(^O^)/
…でも反応在ったらすごく嬉しい←
「楽にする事と、助ける事。これって似ているようで、きっと違うね」
ポソリと呟いた少女を、青年は見やった。
彼女の紫の瞳はただ窓の外に向けられたままで、彼の鮮やかな翡翠の瞳とは合うことはない。
「どうしてだ」
「助けるっていうのは、また一緒に笑ったり、怒ったり…つまり、『未来(先)』をちゃんと願ってる」
ゆっくりと瞬きする彼女を、彼は見つめる。
「楽にするっていうのには、『未来』は必ずしも願われていないもの……」
目を閉じて、口を閉じた少女。
そんな彼女を、青年は後ろから抱き締めて。その震える拳に手を重ねた。
拳を解すように指を絡めて。預けられてくる躯、体温をしっかりと受け止める。
「助けたかった」
「あぁ」
「楽にするしか、無かったんだ」
「あぁ…」
「………さみしい…」
呟いて、彼女は向きを変えて彼の胸に顔を埋めた。
温度を、心音を分け合うように抱き締め合って。
互いを認識する。
これが、愛しい少女を安定させる、今の所唯一の方法。
庭に面した大きな窓。そこから差し込む日の光が、この部屋を暖かく満たしている。―――だが。
「そんなに固くなるなよ、日本国」
中央に置かれた応接の為の椅子の一つに浅く腰掛けた黒髪の青年――日本は、まるで凍ったようにガチガチだった。
暫らく前まで引き込もっていた極東の島国日本。
進んだ欧米の列強国に追い付こうと励む彼を今日この場に連れてきたのは、他ならぬ日本の緊張を指摘した彼――
「……し、失礼ですが、イギリス殿も、きんちょうしていらっしゃる、気が……」
「は、はははっ!そ、そんなことないさ!ひ、久々に会うからって、だ、誰が緊張なんてっ」
日本の隣に腰を下ろしたイギリス。
長引いている所用の為遅れる相手を待つため出された紅茶を持つ彼の手は、小刻みに震えている。
かの大英帝国をここまで緊張させるその存在。外の知識に乏しい日本には、到底想像が付かない。
(一体、どんな方なのだろうか…)
日本が思いを馳せたのと、応接間の扉がノックされるのはほぼ同じ。
(き、た……)
イギリスが応え、扉が従官によって開かれる。
入ってきたのは、一人の女。
たっぷりとした灰色の髪を静かに揺らし、此方へと向かってくる。
イギリスに倣い、日本も立ち上がって出迎える。
「遅れてしまい、本当に申し訳ない。改めて自己紹介させていただこう。私の名はクレスペール。正式名称をレルクレスペリアエルドと申す」
「日本、と申します」
イギリスに習いまだ日の浅い英語。しかし、「お上手だ」と目の前の彼女はふわりとその隻眼を細めて笑った。
ただ微笑んでくれただけ。
なのに―――
【おのが心に赤い果実(み)一つ】
ゴトリと、生まれ落ちたのを感じた。
(後にイギリス殿に聞いたところ、彼女の言語は違うのだと。わざわざ、自分に合わせてくれていたのだと)
―――――――
祖国様と魔女国様の初。
日A同盟後暫らくあたり。多分←
※大人セーラ(夜空のアルコバレーノ)と大人リボ様
落ち着いた装いの室内から、楽しげな声が零れてくる。それは親友のだったり、いじられる後輩のだったり、気のおけない悪友のだったり。
「随分楽しんでるぞ」
面するバルコニーで一人静かにグラスを傾けていた女が、掛けられた艶やかなテノールの声にクッとその淡いルージュの引かれた口角を上げる。
「おまえは交ざらなくていいのか?リボーン」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ。セーラ」
振り返らず柵に肘を突いて笑いを溢すセーラの隣で、リボーンはわざとらしく溜息を吐く。
「ったく。主役がご丁寧に気配消していなくなるなんてな」
今日は彼女セーラの誕生日だった。
かのエーデラファミリー現代ボスを務める彼女のパーティーは盛大に、けれど淑やかに行われ、今は気の置けない友人たちとの誕生会真っ最中だった。
「……こんな時くらい、なんも考えずに楽しめよ」
彼女との付き合いは短くない。そんな時間の中、鋭いリボーンが気付いたセーラの或る癖。
考え事、それも重大な何かを考える時、決まって気配を消してその場を去る。けれど、遠くへいくことをしない。
そんな癖。
「鋭過ぎるのも、困り物だな…」
セーラが溢すのは、やわらかな苦笑。
常緑の瞳が、リボーンの心配を滲ませた黒曜石の双眸をユルリと見やる。
「……頼ってくれよ」
ポツリと呟かれる、彼らしからぬ儚い言葉。
鼓膜を振るわせたその想いを理解して、セーラは目を閉じて深く微笑した。
「ありがとう、リボーン」
けれど、彼の言葉を受け取る言葉は、彼女の口から紡がれることはない。
リボーンもそれを知っている。承知の上で、また同じ願いを吐露するのだ。
彼女は『夜空』。
いつのまにか始まって、気が付いたら終わっていて。
音もなく抱き込んで、気配さえなく突き放す。
残酷で愛しい、漆夜の女帝。
「リボーン」
「!」
呼ばれてそちらを向けば、額への不意打ちの口付け。
「Grazie」
「…Prego」
何に向けての言葉かは、分からない。
だから勝手都合良く取らせてもらい、リボーンは笑った。
それを見て、ちゃんとセーラも笑ってくれるのを知っているから。
【そして貴女は笑う】
(その笑顔のままでいて欲しい。これは本心―――)
――――――
オリキャラの夜空のアルコバレーノ:セーラ。
セーラはルーチェさんの遠い血縁で、姉貴分。
セーラ、ルーチェ←←←リボーン
な、式が私の中にあります。
すいませんでしたm(__)m