自転車の通勤のルートなんていくらでもあるんだけど、大抵は通り慣れた道を走っている。
いくつもの路地に入りなるべく気持ちの良い道を選んでいる。
仕事帰り、またいつもの交差点に差し掛かった。
何の変鉄もない、何処にでもあるような町道交差点。
家路に着くためにオレは左に曲がる。
これがいつも通りのルートだ。
でも。
つい最近まではこの交差点を左折せずに直進していたのだ。
左折すれば我が家へと、そして直進すれば母親が待つ病院へ通ずる道になる。
もう、この道を真っ直ぐに走ることはない。
これからは何も考えずに左に曲がれば良いだけなのだ。
それなのに
なんだろうこの言い知れぬ感情が胸に渦巻いて痼のような塊になる違和感。
もっとあーすれば良かった
もっとこーすれば良かった
もっと優しくしておけば良かった
もっと色んな言葉をかけておけば良かった
今さらそんな後悔をしても仕方のないこと、そりゃあわかってんだ。
今日も交差点を左に曲がる。
そのことに、後ろ髪をひかれるような気持ちになるのを振り払うかのように
ペダルを踏む足に力を込める。
人生って、瞬間芸と後悔の寄せ集めだ。