≪頼りにされたくて≫
シャニに招待してもらったお祭りで私は意外な事を知って、今、至福の時を過ごしていた。
「・・・・凄く楽しそうですね、千尋」
「そう?」
苦笑しながら、千尋に問いかける風早に千尋は嬉しそうに笑った。
「俺のこんな姿を見せてしまって、きっと嫌な思いをさせたのでは・・・と心配していたのですが」
「そんな事はないわ・・・むしろ、嬉しいの」
「嬉しい?」
千尋に汲んできてもらった水を飲みながら風早は少し首を傾げた。
「風早って一人で何でも出来てしまうから、自分が役に立てるのが嬉しいの」
「・・・・・」
「ほら、私って向こうの世界でも知らない間に風早と那岐に助けてもらっていたでしょう?だから、私も少しでも助けたいの」
「千尋・・・・」
俺は十分助けられていますよ・・・・そう、言葉を続けようとしたがそれは叶わなかった。
あまりにも真っ直ぐな瞳で見つめられたからだ。
「ねぇ、何か私に出来る事はある?」
千尋のそんな姿を見た風早は少し笑いながら答えた。
「それでは、一つお願いを聞いて頂いても良いですか?」
「うん、何でも言って」
「膝枕を・・・・してもらえませんか?」
「そんなので良いの?」
「はい、少し酔いが回ってきてしまったので、横になりたいんです」
「分かった」
千尋は快く承諾し、自分の膝に風早の頭を乗せた。
「ありがとうございます、千尋」
「どういたしまして」
千尋は嬉しそうに返事を返した。
「・・・・なんだか不思議だね。」
「不思議?ですか?」
「小さい時は風早の膝で私が横になっていたのに、今は風早が私の膝で横になっているなんて・・・」
「・・・嫌でしたか?」
「ううん、大人になったんだなって思っただけ」
「千尋は十分、大人な女性ですよ」
「そう・・・かな?」
「えぇ、だって今は中つ国の姫として兵を率いているじゃないですか」
「そうだね・・・・まだまだ足りない所はあるけど、頑張るから、私」
「えぇ、俺はいつでも力を貸します。千尋は俺にとって大切な人ですから」
にっこりと笑う風早に千尋もにっこりと返した。
「ありがとう、風早」
その瞬間に鐘の音が鳴り響いた。
「道が出来たみたいですね。そろそろ行きましょうか。」
「もう、大丈夫なの?」
「はい、すっかり良くなりました」
「それなら、良かった」
「応えてくれるといいですね」
「うん・・・行こう、風早」
「はい」
鳴り響く鐘に向かって千尋と風早は歩きだした。
二人の未来と大切な国の為にーーー・・・・