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策瑜学園パロ・そのにじゅういち

これで最後になりましたー。文字数ぎりぎり!まぁいいや!
前回でほぼ終わったようなものなんで、後日談的に読んでもらえれば…。
ではスクロールでどうぞ!




















周瑜は曹丕に連絡を入れて、迎えに来てもらうことにした。

車が到着するまでの間、ファイルをぱらぱらと捲って待つ。



「これは凄いな…」



生徒の詳細なデータはもちろん、教師のことや会計関連のことまで沢山書いてある。それが理路整然と並べられているあたりに、校長の几帳面さが伺える。



ざっと見た限りでは、どこも抜き取られている様子はない。孫策に追われていてはそんな暇もなかったのだろう。周瑜はそう考えて、それを閉じた。


やがて曹丕の部下が駆け付けた。彼は徐晃と名乗った。


「大丈夫ですか、周瑜先生」

「私は平気。孫策と魏延が気絶してしまってな…学校まで乗せていってもらえるか?」

「お安い御用です。元よりそういう命令をいただいて参りましたから」

「助かる」


そして、二人で協力して怪我人を運び、車に乗せた。


車に乗るとき、ふらっと視界が歪んだ。先程魏延に殴られたところが痛む。

「大丈夫ですか?助手席で休んでいて下さい」

「…すまない」

溜め息をついて、助手席に横たわる。徐晃は慣れた手付きで二人を後部座席に乗せ、学校まで運転を始めた。














「周瑜!おかえりなさい、大丈夫でした?」


「孔明!ただいま帰った」


車の中で体力を回復した周瑜は、校庭に降りたってまず孔明の歓迎を受けた。

隣には曹丕と凌統。凌統が嬉々とした笑みで駆け寄ってきた。


「先生!よー、無事だったんだなぁ」

「はは、まぁね。孫策が無事じゃないが…凌統、それはあとにしようか」

「おう。校長と話が有るんだろ」


周瑜は頷いて、孔明の前にファイルをつきだした。


「孔明…これ」

「ありがとう、周瑜…と言っても、ただで渡す気はなさそうですね」

「そういうことだ。和解に応じてもらえるか?」

「えぇ…いいでしょう。校長室に行きましょうか?」

周瑜は肯定した。
と、後ろで魏延と孫策の声がする。


「どけ魏延!邪魔!」

「うるせぇ!あ、痛っ!!」


二人はもつれあうように車から出てきた。意識を取り戻したらしい。すると後ろから、姜維が魏延の肩を叩いた。


「ふふ。おかえりなさい、魏延…」

「うわぁ!!姜維…!!」

逃げようとした魏延を、姜維が捕える。


「よくも孔明様にこれだけの手間をかけさせたな!誰が許そうともこの姜伯約がお前を絶対に許さない!!」

「ちょ…まっ…」


更にそこへ、校門をくぐって帰ってきたのは、馬兄弟。
馬超が冷めた目で魏延を見下ろした。


「おー、よく帰ってきたなぁ。俺たちがどれだけ走り回されたと思うんだ?あ?」

「この落とし前はしっかりつけてもらわないといけませんよねぇ」

馬岱まで疲れきった顔に黒い笑みを貼りつけて、詰め寄る。


「…何考えてんだお前ら…やめろ、近付くな…」


姜維にしっかり体を固定されまま、魏延がおびえた声を上げた。

最後に、追い討ち。


「ふん…こればかりは馬兄弟に同意見だな」


そう言って薄く笑ったのは、曹丕である。


孔明が周瑜と共に校舎内に歩みながら、振り向いて言った。


「ああ…魏延は好きにしていいですよ」


姜維、馬岱、馬超、曹丕がそれを聞いて、楽しそうに笑った。


「……最悪」


魏延は四人に囲まれて、苦笑い。
孫策は足を引きずりつつ、魏延に手を振った。


「じゃ、精々体を大事にな」


魏延の叫びが続く。


「ちょ…孫策てめえっ!!助けろーっ!!」














静かな校長室に、孔明と、周瑜と、孫策の三人が集まった。張りつめた空気がほどよく心地好い。
孔明が柔らかな笑みを浮かべ、切り出した。


「それで、周瑜…条件は?」

「我々への監視を全てやめること。私を辱めないこと、犯さないこと。孫策と私を引き裂こうとしないこと」

周瑜は指折り言った。

「それが守れないようなら、これは返さぬ」

孫策も頷いた。
孔明はじっと黙って聞いていたが、やがて諦めたように言う。


「分かりました…条件をのみましょう。それで返していただけますか?」

「ああ。…必ず、約束は守るだろうな」

「ええ、勿論です。心配なら、そのファイルから好きな部分を取っていってどうぞ」

「いいのか?」

「私が望む時に見せてくれるなら」


周瑜はそれを聞いて、そっと二、三枚の紙束を抜いた。そしてファイルを孔明に渡す。
孔明は微笑んでそれを受け取った。


「感謝します」

「…感謝?」

「ええ。魏延の手からファイルを取り返せたのは、ひとえに貴方達の働きですから」

孫策が苦笑した。

「…はは、俺なんかやられかけたけどね…」

「そうだ、孫策。足は?」

「あ、今はなんとか。病院行ったほうがいいかなー」

孫策はその右足を振ってみせる。そこは、ぱっと見にも大きく腫れていた。

「行くならどうぞ。もう話もありませんしね」

「そうか」

「あ…魏延には、明日学校へ来るよう伝えて下さい」

「分かった…言っておく」

もう話すこともないので、二人は型通りの挨拶をして、その場をあとにした。

二人が去ったあと、孔明は溜め息をつく。


もう周瑜が自分に歯向かってきてくれないと思うと、ちょっと寂しい。


「まぁ、私が弱かったってことでしょうね」


そんな独り言が漏れた。

二人と入れ違いに、姜維が入ってくる。


「お話は終わったのですか」

「ええ。姜維、お疲れ様でした」

「…孔明様、寂しそうですね」

「そうですか?…そんなこと、ないですよ」

「孔明様っ」

何をするかと思えば、彼はいきなり孔明の腕を取った。驚いて姜維を見ると、その目には必死な輝きが宿っている。

「姜維…?」

「私、頑張ります!いつか孔明様に釣り合うくらい、頭良くなって…周瑜先生に負けないくらい、魅力的になりますっ。だから、待っていて下さい!そして、私が孔明様の敵になりますから!」

孔明は驚いて、この青年の宣言を聞いていた。
やがて彼は微笑む。

「ありがとう…姜維。楽しみに待っていますよ」

「はい!」

姜維の無垢な笑顔が眩しい。
孔明は自分でも気が付かぬうちに、姜維の体を引き寄せて、抱き締めていた。


「…孔明、様?」

「じっとしていて」

「…」

「私は、貴方のような子を弟子に持って、幸せですよ…」


姜維の手が黙って孔明の背中を撫でた。
こんなに寂しさを感じた日も、喜びを感じた日も、久しぶりだった。

















「魏延、一緒に病院行かね?」

「行く!背負ってくれ!」

校庭に、まさに屍のようにうち捨てられた魏延を見ての、孫策と魏延の会話。
馬岱や馬超、曹丕はもう消えていた。帰ってしまったのか、それとも生徒会本来の仕事に戻ったのか。


「背負う?俺無理」

「残念ながら私も無理だな。歩け魏延」

「…鬼」


ぼそりと魏延が言った。孫策が笑う。

「てめーこそ、虫が良すぎるんじゃねーの?散々俺を痛めつけといてさぁ」

「う…それは」

すると、そこへ凌統がやってきた。魏延のところまでたどり着いて、溜め息に近い息継ぎをする。


「よ、馬鹿な大将さん」

「凌統っ…てめー、俺を馬鹿にしに来たのか?」

「まさか。あんたらを病院に運びに来たのさ…校門前で馬良と馬謖が待ってるぜ。馬良の車、乗るだろ?」

「え…」

「周瑜先生、孫策先生。あんたらも乗ってくよな?」

「ああ。お前が呼んでくれたのか…気が利くな、凌統」


周瑜に言われて、凌統は顔を赤く染めた。

「おい凌統!顔真っ赤だぞー」

「う、うるせー!孫先生、まだ俺は諦めてないからなっ」

「いい加減諦めろ。周瑜は俺のだ。ほら、お前の大将連れてけ」

「お、おうよ!」

凌統はぎこちなく頷いて、魏延の肩を持つ。
そして四人は連れだって、馬謖と馬良のところへ向かった。


凌統が途中、ふっと言う。


「これで全部終わったのかぁ」


周瑜が答えた。


「そうだな。やっと自由だ、私は」


魏延が凌統の肩を借りながら、口を出した。

「なぁ、皆で夏休み、遊びに行こうぜー」

「え、お前とぉ?やだやだ、お前は駄目」

「孫策このやろー、大人げないぞ、馬鹿!」

周瑜がけらけら笑う。

「いいではないか。どうせなら魏延をいじめたおす会を開けばいい」

その言葉に、魏延がぎょっとした顔になった。

「や、め、ろー!!」


「はは、冗談だ。…ん?」

周瑜はそこで、自分の下に落ちている紙切れに気が付いた。
魏延がはっとした表情で、それをすぐに拾いあげた。しかし周瑜は不審そうにそれを見つめている。


「魏延…なんだ、それは。大事なものか」

「……」


二人の睨みあい。
馬謖が遠くで彼らを呼んでいる声がする。


「見せてみろ」

「…はいよ」


魏延は投げやりに、四折りになった紙を差し出した。

それを周瑜は開く。凌統と孫策も気になって、顔を寄せあって覗きこんだ。




そして三人は、呆気に取られた。







「…まさか、この為に?」


魏延は真っ赤になって肯定する。




「…悪いか?」




三人は首を振った。大きく横に振った。


















一方。


孔明はファイルを何気無く広げていて、ふと一枚、不自然に抜けている箇所に気が付いた。
それは、生徒の詳細を書いた個人情報の中の一枚だ。並びにどこか違和感がある。


「姜維…馬謖と馬超の間に、生徒いませんでしたっけ」

書架の整理をしていた姜維は振り返って、首をひねった。

「五十音順ですか?えーと………」


考えること数秒。二人はほぼ同時に思い出す。


「馬岱…じゃないですか」
「…馬岱、ですね」



一枚抜けた生徒の情報。周瑜が欲しがる情報ではよもやないだろう。ということは、魏延が抜いたのだ。


「魏延をとっちめましょうか」

姜維が険しい顔で言う。しかし孔明は、何を思ったか笑いだした。

「いえいえ…そういうことなら、見て見ぬふりをしてあげてもいいでしょう。姜維、今のことは忘れなさい」


「え?は、はぁ…」


姜維は不可解な顔をしつつ、従った。












病院での診療では、幸い孫策の足は、骨に異常もなく、そっとしていれば治るという話だった。


病院のロビーで魏延達と別れ、タクシーに乗って、二人は周瑜の家に向かう。


「まさか魏延が、単に馬岱の情報一式が欲しい為にあんなことしたなんてなぁ…なんか本気で追い掛けて損した」

「はは、確かに…あんな総動員する必要はなかったらしいな。しかし…魏延の片想いか…」

「あいつにも割と可愛いとこあるんだな…」

車の中での会話は、そんな感じ。


家についた二人は、真っ先にベッドに身を横たえた。もう日が沈む時間だ。


「今日は監視されてないんだよな!」

「ああ。ゆっくり寝れる」


周瑜の言葉に、孫策は悪戯っ子のような笑いを浮かべた。


「待て待て、ゆっくり抱ける、の間違いだろ?」


周瑜は否定しない。
ただ魅力的な微笑みを孫策に向ける。


「さぁ、今夜は寝かさないぜ!」

「ふん。よかろう」


ようやく、二人だけの時間が始まる。






終。








お疲れ様でした!私!←
もう魏延の話なんだか策瑜なんだか分からないんですけども…一応これで完結です。ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
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