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書き途中の小説。

夏になるとオリジナル小説書き始めたくなる病気。以下、槇原敬之さんの「恋はめんどくさい?」をリスペクトしたオリジナル小説です。

ほんとは漫画にしたいけど、画力が無いからとりあえず小説にしてこの妄想残しておこう的な。←



見るのは自己責任でお願いします。


*○*◇*○*◇*








眠れない夜が、あったのは覚えてる。

予感だけが胸の中で草木を揺らすように吹いてた。
不思議な気持ちでいっぱいで、寝つきが悪かった。


一人ぼっちにも慣れてうまくやっていたのに。

その、よく眠れなかった夜の次の日。


流れ星のように君は、

僕の前に”落っこちて”きた。





ー恋はめんどくさい?ー






とある日の昼過ぎ。

街外れに暮らす自称博士のコイメドは作業室で作業をしていた。
すると突然、
”ひゅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜……”
何かが落ちてくる音がしたかと思ったら、
”ドゴォォォォンン!!!!!”
コイメドの家の裏庭に、強い衝撃と共に何かが落ちた音がした。

「??!?!;;;なっ、なんだっ?!;;;」

コイメドは慌てて外へ出て確認する。
すると…

「えっ………何;;;…人??;;;」

一瞬、本当に人が落ちてきたのかと思った。
しかしよく見ると人形のような女性が倒れていた。
近くで見ないと人形だとは分からないほど、その人形は人形らしさが隠れていた。

コイメドは恐る恐る近づき、その人形に触れてみる。

「………ほんとに人形だ…;;;…なんで空から…;;;」
触ってみると冷たい感触が指に走る。

(冷たい…。金属でできた人形…?人形というよりこれじゃまるでロボットだ…。)
更に調べる。かなり高いところから落ちてきたからか、外見は汚れが酷い。
その人形の身体を少し起こしてみると、ガラガラと金属が中で崩れ落ちるような音がした。
(あんなに強い衝撃だったもんな…。そりゃ中はめちゃくちゃだろうな…。…しかし外は汚れだけでほぼ無傷だなんて…一体この人形…どこから…)

「お〜〜〜い!!コイメドぉー!」

裏庭で人形を抱きながら考えを巡らせていると、一人の男が近づいてきた。

「コイメドぉ、ここにいたかぁ!な〜んかまたすんごい音がしてたけど、また実験で何かやらかしたn……って何抱いてんのお前っ?!;;;」

声の主はコマリという男性。コイメドの親友だ。大きな音を聞き、街から駆けつけてきてくれたらしい。

「やぁコマリ。いいところに。この人形運ぶのちょっと手伝ってくれないか?」
「いや、あのさぁ;;;手伝うのはいいけど、これどういう状況なわけ?;;;」
「空からこの人形が落ちてきたんだ。」
「落ちてきたぁ?;;;…だ、大丈夫なの?そんな得体の知れない人形なんか持って;;;」
「この人形、外見は大丈夫そうだけど、中身がボロボロみたいなんだ。直してみようと思って。」
「直すって…;;;やっぱり状況わかんないんだけど;;;…持ち主が誰かもわからないんでしょ?;;;うわっ冷たいねこの人形。」
「うん。けど、直しておけばその持ち主も喜んでくれるんじゃないかな。」
「いやそうだけど;;;…うんしょ;;…てかこの人形、人形にしては大き過ぎない?これじゃ人が一人倒れてるのと同じだよ。」
「…そこも不思議なんだ…人形じゃなくてまるでロボットだよ…。実に興味深い。」
「うわ、出たな本音。自称博士さんよ、俺、どうなってもしらないからね?;;」

他愛ない話をしながら、慎重になんとかコイメドの家の中まで運ぶ二人。
コマリの言う通り、その人形は女性一人分の身長があり、金属のような素材だからか少しずっしりとしていた。

「ふぃ〜〜〜…結構重みあったね。ここまでであと大丈夫?」
「ああ、助かったよ。ありがとうコマリ。」
「…で、これからどうするのよ?ほんとに直すの?」
「ああ、まずは泥や砂、汚れを拭き取って…」
「……。(ありゃ、なんかもう集中モード入ったなこいつ)…俺、街に一旦戻ってパン屋のおばちゃんに報告してくるわ。おばちゃんあの音聞いて心配してたんだぜ?」
「汚れを拭き終えたら更に慎重に…ぶつぶつ…」
「(ダメだなこりゃ)……おばちゃんからパンかなんか貰えたら貰ってくるよ。そいじゃぁ〜ね〜」
バタン。

慎重を要する細かい作業は苦手なコマリは、汚れを落とす手伝いをしなくていいように口実を作り外出していく。

そんなコマリの声を聞こえているか否か、コイメドは作業に集中する。

人形は目を閉じたままだった。
人形はメイド服のような洋服を着ており、その服も千切れていたりところどころ泥まみれだったりとボロボロだった。

(…よし。服以外は粗方汚れは落とせたかな…。…服は…この人形に申し訳ないが破って捨ててしまおうか……。いや、けど…。)

コイメドは迷った。いくら人形とはいえ、こうも身長があると一人の人間に見えてくる。
着ている服を勝手に破り捨てるには抵抗があった。

(いや、けどこれから直すとなると…服が少し邪魔にな……あ、服だから脱がせばいいのか……。……脱がせられるかな…。)

これにも少し抵抗があったが、脱がせることに。
粗方汚れを落とした人形は、ますます一人の女性に見え、何故だか罪悪感が湧いてくるコイメド。

(…うぐっ;;;……し、修理の為…修理の為;;;)

人形が着ていた服はワンピースのようになっていたが、背中のボタンを外すと簡単に脱げるようになっていた。

服を脱ぐと白い肌が露わになる人形。

(わ……肌が…白い……。…いや…これは肌で合ってるのか?)

服を着ていたところの方が白く、腕や顔はまだ若干泥汚れが残っていた為、改めて拭き取り綺麗にする。

そこで初めてその人形の姿の全貌を知るコイメド。

「………綺麗だ…………。」

思わず声が漏れていた。人形にしては綺麗過ぎる肌。綺麗過ぎる顔立ち。綺麗過ぎる指先に足先。

コイメドは、自分の耳が赤くなっていることも気づかずに、見惚れてしまった。



「…………。……………はっ!;;;」


正気に戻り、引き続き作業に戻る。

(…い、今、僕は何を……;;;)

自分が人形に見惚れてしまったことに焦りながら、次は本番の中身の修理に取り掛かる。


自称博士のコイメド。街外れに一人で暮らし、街に出ることは滅多にない。
そんな彼がどうやって生計を立てているかというと、”様々な物の修理”だった。
街の人はコイメドが機械弄り、修理が得意なのを知っており、よく壊れた家具や壊れた機械などを持ってきては修理をお願いしにやってくる。コイメドはその機械を直し、そのお代やお礼の品などで生計を立てている。

もう数え切れない程の修理を行ってきたコイメドにとっては、こうした修理はお手の物だった。

見事な手さばきですぐに人形の中の修理に取り掛かるコイメド。


(……ここから開けるのか…。お、ここからも開くな………どれ、ちょっと失礼して………。)

少しずつ解体していくと、人形の中身の中心部にたどり着く。

カシャン!

「……ありゃりゃ……中身は思った以上にぐっちゃぐちゃだな…;;;」
中は細かいネジや部品がとんでもない数あり、そのほぼ全てがバラバラになっていた。

(金属製の人形なんて滅多に見ないし高級品かと思ってたけど、使ってる部品やネジは見たことある物ばかりだ……。これなら、時間はかかるが、なんとかなりそうか……?)

どんな分からない仕組みが出てくるかと身構えていたコイメドは少し安堵する。

(…だがしかし…この大きさだからかやはり部品の数が半端ないな………。……まぁいいか……数日かかろうが僕には関係ないこと……。コツコツやろう。)


時間がすごくかかろうと地道に進めることを決めたコイメド。健気に修理を少しずつ進めていく。

修理に没頭していくらか経つと、

「おっ邪魔しまぁ〜す!コイメド〜!パン屋のおばちゃんからパン貰ってきたぞ〜」

コマリが戻ってきた。

「おばちゃんにコイメドが大きな人形拾ってその修理に取り掛かったこと教えたら、心配してこんなにパンくれたぞ〜!お前おばちゃんに心配かけ過ぎだぞっ☆(モグモグ)」
「って言いつつ、パン大量getラッキー!とか思ってるんだろ?今日もちゃっかりしてますねぇコマリくんは」
「なんだよ嫌味言うなよ〜。コイメドも晩ごはんにしようぜ?なぁ、スープとか無いの〜?」
「…お昼の残りのがあったかな。」
「やったラッキー!お、これか!温め直すぜー!」
「はいはいお好きにどうぞ。」

コイメドは作業を続行しながらコマリの方へは一度も振り向かずに会話をする。



コイメドはたまに屁理屈を言うがどちらかと言うと落ち着いていて真面目な性格なのに対し、コマリはなんとかなるさと明るくお気楽主義、と、お互い少し正反対なところがあるものの、互いが互いを心配し合っており、いざと言う時は助け合う仲である。

コマリはお気楽主義が祟って、よく金欠になる。そんは時はこうやってよくコイメドの家に来ては食料をたかりに来るのだ。

コイメドは街の住民の物の修理を頻繁に行ってるからか、住民から食材の差し入れが多く、その食材を一人じゃ消費し切れない為、コマリがこうやって食べに来てくれるのは寧ろ助かっている。

「コイメドー!スープ温め直したよー!テーブルの上置いとくねー!」
「ん〜ありがと〜」
「んじゃお先、いっただきまーす!」

更に言うとコイメドは修理作業に集中し過ぎると時間も忘れ食事を摂ることも忘れてしまう為、こうやってコマリが見に来ることで、きちんと食事を摂っているか見張る意味もある。

「……(モグモグ)…なぁ〜せっかく温め直したのにスープ冷めちゃうよぉ?一旦終えて食べなよ。パンも固くなっちゃうぜ?」
「ん〜…(カチャカチャ)」

「……(こりゃ徹夜コースだな…)…(モグモグ)」


これが二人の日常なのだ。


*◇*○*◇*○*


「ふ〜〜〜…………。…流石に疲れたな…。ここら辺で一度………って、え。」

気づくと既に時計は深夜を指していた。

「……またやっちゃった……。…少し休憩しよ。」
コマリの姿はもう既に無く、居間のテーブルの上には冷めきったスープと少し固くなったパンがあった。

作業中、コマリに何度か話しかけられた記憶はあるが、どんな内容かは覚えていない。
作業に集中し過ぎて周りの音をシャットダウンしてしまう悪い癖がまた、発動してしまった。

「…コマリ…ごめんよ。そしていつもありがとう…。いただきます。」
静かで薄暗い居間に小さく呟き、少し固くなったパンをスープにつけて食べる。冷めきったスープでも、空腹のコイメドにはとても美味しく感じた。

パンとスープを完食したら、また作業に取り掛かる。
そして眠らない夜を過ごすのだった。



*◇*○*◇*○*



翌朝。



(追記で続き読めます。まだ途中だけど←)
more..!

pool〜もうひとつの夏【創作小説】part1

。+゚*。+゚*。゚+。*゚。+゚*。+゚。*





『本当の夏は、そっちの方に見えますか?』



―俺の不思議な夏は、この一言から始まった。






。*゚.+゚。*゚.+゚。*゚.+゚。*゚.+゚
─ pool ─もうひとつの夏
。*゚.+゚。*゚.+゚。*゚.+゚。*゚.+゚





俺の名前は海王秀輝-カイオウ ヒデキ-


俺の現在の仕事は、プールの監視員。
と言っても、とある市民プールの職員の一人であり、まぁプールの監視員意外にも職務はたくさんあるんだけども。

この仕事自体、半月くらい前から始めたばかりで、
その前はアルバイトを転々としてたフリーター。

この街にも最近越してきたばかりだ。




俺の不思議なひと夏の物語は、なんともない、ある猛暑の日から幕を開けた。





-*-*-*-

7月18日。

いつものように監視台に座り、プールで泳ぎ遊びまわる子供たちを、猛暑の中、監視していた。


いくら一人の平均的な成人男性とはいえ、この日の猛暑の蒸し暑さに、俺は少し頭を朦朧とさせていた。


(あつ〜;……あ〜あ…、今年も特にこれといったイベントもなく、こうやって夏が過ぎていくんだろうな…。ただ暑いだけで、夏はあまり好きじゃないんだよなぁ…。)


暑さにやられた頭で、
そんな事を考えていたら、監視から少しよそ見をしてしまった。



そんな時だった。



ふと人の視線を感じ、監視台のふもとへ目をやると、小学校低学年くらいの水着姿の女の子が、いつの間にかそこに立っていて、俺の事をじっと見ていた。


(い、いつの間に…;)


あまりにじっと見ていたので、怖くなって視線を反らしていると、

「ねぇ」

と声をかけられて、
女の子へ再度目を向ける。


「ん?…お…俺のこと呼んだ…かな?;」


「うん!…ねぇ、お兄さん」


「ん?な、なんだい?;」


子供に慣れてない俺は、暑さのせいもあり顔がひきつる。











「“本当の夏は、そっちの方に見えますか?”」

















「………………え?;」



突然そんなことを聞かれ、一瞬空気の流れが止まったような気さえした。



「ねぇ、どーう?」


「…え、いや…見えるっていうか;」


「ねぇお兄さんお名前はぁ?」

「な、名前?…俺は、ってか今お兄さんお仕事中だから、お話、後でもいいかn」


「今、みんな休憩中だよ?」

「へ?;」


ふとプールを見ると、いつの間にか休憩時間に入っていて、プールから子供たちは皆出て、休憩をしていた。


「これなら、ちょっと話しても大丈夫だよね♪」


「(なんなんだこの子は?;)
…あ、ああ;…で、君、俺に何か用があったのかな?;」


「私、なつき!あまおうなつきっていうの!ねぇお兄さん、私と一緒に遊んで?」


「え;…いや、その;…、わ、悪いけど、お兄さんお仕事中だから今は一緒には遊べな…」

「私、友達がいないの…。一緒に遊んでくれる人がいないの…。ひとりぼっちだから寂しいの…。私ね、私ね…ヒック」

と言いながら女の子は徐々に涙声になり今にも大声で泣き出しそうな表情に。

「あわわわわわわかった!;わかった…!;お兄ちゃんが遊んであげるから!;(だから泣かないでくれ〜!;;)」


「え…!ほんとう!?」


「う、うん!;遊んであげる!けど、お仕事が終わってからでも…いいかな?;仕事が終わってからなら、いくらでも遊んであげるから;;」

「わぁぁ!やったぁ!ぜったいだよ?私、プール終わったら隣の公園で待ってるから!(ニッコリ)じゃあね!」


「え;、あっ、ちょっと!」

と、俺が止める前に女の子は走り去り、走り去ると同時に休憩時間が終わり、夏樹という女の子はプールにもぐってしまった。


(なんなんだあの子は?;…俺が仕事終わったらって何時だと思ってるんだ?;…まぁ…暗くなれば家に帰るだろ…;)




と。


思っていたものの…




仕事を終え、市民プール職員出入口から出て、辺りを見回しながら、俺はその子を気にかけていた。

(さすがに…いないよな…)

「お兄〜さん!」


「わっ!!;び、…びっくりしたぁ〜;」


「ふふ〜待ってたよ♪」

「待ってたよじゃないよっ!;君、ずっとここで待ってたの!?;」

「ここじゃないよ。隣の公園とかぁ、あそこらへんとかで」

「今何時だと思って……」

「お兄さん約束だよ?私と遊んで♪」

「いや、暇だからいいけどさ〜;…君、こんな時間じゃ、お父さんとお母さん心配するよ?;」



「……いないもん」

「え…?」

「お父さんもお母さんもいないもん…」

「え…そ、そうなんだ…;ごめん;…じゃあ誰と」

「私、今はおばあちゃんと暮らしてるんだ」

「そうなんだ…。なら尚更だ。今日はもう遅いから、また明日遊ぼう!明日なら俺も早く終わるから…。明日でも…いいだろ?;」

「うん!なつき明日もプールに来るから明日でも大丈夫!」

「よし!じゃあ決まり!明日な。」

「わかった!明日、必ずだよ♪」


「よしっと。…君の家どっちの方?家まで送ってこうか?」

「ううん、大丈夫!すぐ近くだから」

「いやでももうこんなに遅いs…」

「それじゃあ、お兄さんバイバイ!また明日ね!」

と言うと夏樹はダッと暗闇の中へ走り去り消えていった。。

「え、あ、ちょっ……って早っ…;;なんであんなに走るの早いんだぁ?;」





―翌日―



案の定、夏樹は次の日もプールに来て一人で泳いで遊んでいた。


昨日は分からなかったが、一度会うと認識するのか、はたまた一人ぼっちだからか余計に目立つのか、すぐ見つけることができた。

夏樹を見ながら、昨日のことを思い出し、(遊ぶ約束はしたとは言え、まだ会って1日も経ってない幼い女の子と遊ぶって、どうなんだ?俺;)(…ま、でもどうせ暇だし、遊び相手になってあげよう…)と、考えながら、その日の勤務をこなした。


俺の勤務時間が終わり、夕方と呼ぶよりは少し早い時間に、職員出入口から出ると…


「あ!お兄ちゃん!」

夏樹は、今日は俺のことを『お兄ちゃん』と呼び近づいてきた。



「あ、ごめんね;また昨日みたいに、ずっと待ってたでしょ?;」

「ううん、夏樹もさっきプールから出たとこだよ(ニコッ)」

「さ、さっきって;…君、けっこう早い時間からいなかった?もしかして今日ほぼ1日中プールで泳いでたの!?;」


「うん!」


「うん、って…;君ってほんと、プールが好きなんだねぇ…;」


「うん!プール大好き!」


という会話をしながら俺は(ずっと監視してたけど、そんな長く泳いでたかなぁ…;)と少し疑問を持ちながらも、(プールの中なら見つかりっこないか)と、その時は深くは考えなかった。


「よし!じゃあ約束どおり遊ぶか。で、君は何をして遊びたいんだ?」

「夏樹でいいよ〜お兄ちゃん!夏樹はね、花火がしたいの!」

「花火って、手持ち花火?」

「うん!」

「花火か〜…まだちょっと明るい気もするし…夜を待ってたらまた帰りが遅くなっちゃうけど…;」


「それでもいいっ!花火やりたい!花火花火ぃ〜!」

と、夏樹が駄々をこねてきたので、まだ少し明るいが花火をすることに。

近くの駄菓子屋のような商店に行って、一緒に軒先に並ぶ花火を見る。


(わぁ懐かしいなぁ…この花火、昔は高くて買えなかったけど、今の俺なら買えちゃうんだなぁ…)


夏樹もしゃがみ込んで、花火や駄菓子を見て、「どれにしようかな〜」と目を輝かせて見ていた。

夏樹がしゃがみ込んだことで、夏樹の後ろ姿を初めてまじまじと見る事ができた。

夏樹はポニーテールで高めに髪を結っていて、髪どめのゴムには可愛いイチゴの飾りがついていた。


(あれ?…このイチゴ…。………なんかこの髪どめ……どこかで見た事あるような……)


「お兄ちゃん!花火、これにする!」


「ん?ああ、そ、それな!わかった、買ってあげるよ」

「わ〜い!」



その商店で水を汲む為のバケツと、マッチも買い、プールの隣の公園に戻ってきた俺たちは、早速、花火をやることに。

なんだかんだで辺りは薄暗くなってきてて、花火をやるにも十分な暗さだった。


打ち上げ花火やネズミ花火は無かったが、手持ち花火だけで、
俺は久しぶりにはしゃいで遊んだ。

夏樹がもとから明るい性格のせいか、一緒になって子供のように花火を楽しんだ。
昨日会ったばかりとは思えない位、夏樹は笑顔で楽しそうだった。
俺も自然と笑顔になって、なんだか懐かしくて堪らなかった。。


手持ち花火も、残り線香花火だけとなり、最後にしっとりと灯していると、

「ねぇ、お兄ちゃんはなんで夏樹と遊ぼうって思ってくれたの?」

と、夏樹は俺に質問をしてきた。

「なんでって…君が…、夏樹が泣きついてきたんじゃないか、一緒に遊んでって。」

「そうじゃなくて!…なんで夏樹に花火買ってくれたの?」

「え…なんでって…」


この質問改めで俺は考えさせられた。

夏樹と遊んであげようと思ったのは成り行きと「可哀想だから」という同情心からだと思っていたが、実は自分でもどこか不思議な感じがしていた。


(なんでって…なんでだろう…。なんでこんなにあっさりと遊んでるだ…?なんで俺、昨日今日で夏樹とこんなに仲良くなれたんだろう…。そして、なんでこんなに、懐かしいのだろう…)


「あ!!」

「!…どうした!?」

「線香花火、落ちちゃったぁ…」

「あ〜ちゃんとしっかり持ってたのかぁ?」

「持ってたよ〜…風だもん!風のせいだもん!」

「はい、あと一本あるから。これで最後だよ」

「いいの?夏樹が最後で」

「いいよ、夏樹の花火だ。」

「ふふ〜、ありがとう」

最後の線香花火は二人で見守って、ベタな感じだが、最後まで煌めくことができた。


花火を全部終え、後片付けをして、その日は公園で別れた。

別れる前に「また明日も遊ぼうね」なんて普通に言われて、俺もなんの迷いもなく「ああ、じゃあまた明日(明日も早番だから、まあいいか)」なんて普通に答えていた。

夏樹は昨日のように、俺に「家まで送る」の言葉も言わせない内に、足早に暗闇に走り去って消えていった…。





そして、その次の日も、俺は夏樹と会い、プール終わりの夏樹に氷イチゴを買ってあげた。


「美味しいか?」

「うん!美味しい!久しぶりに食べた!」

「そっか、良かったな。イチゴ…好きなの?」

「うん!夏樹、イチゴ大好きなの」

口の中を真っ赤にして氷イチゴを美味しそうに食べる夏樹に、俺は正直、昨日より夏樹を可愛いと思っていた。

別に変な意味じゃなく、また懐かしさを感じながら、それがなんだか嬉しくて、すでに妹のように扱っていた。


この次の日は公園の遊具で遊び、その次の日も、その次の次の日も、仕事終わりに一緒に遊んで過ごした。






そして、夏樹と会って一週間後…

勤務中だった。


俺よりちょっと後に入った後輩の一人が、俺に話しかけてきた。
後輩といっても歳が近いのもあり、すぐに打ち解け、そいつは最近よく休憩中や仕事終わりの着替えの際に、俺に話しかけてくる。

他愛ない話しを少しした後、その後輩は突然小声になり、俺にヒソヒソ話を始めた。

「先輩、ここのプールの有名な話し…知ってます?」

「有名な話し?なんだよ、何か有名なの、ここ?」

「ここ、ちゃっかり…出るとこらしいんすよ」

「え?出るって…?」

「幽霊。」

「え;…そうなの?」

「噂で聞いたんすけどね、言い伝えでは、昔ここで一人の女の子が、プールで溺れて亡くなったとか…しかも亡くなった原因が監視員のよそ見のせいだとか…!」

「へ、へぇ…;(全然聞いたことないぞそんな話;)」

「その女の子の霊に狙われた監視員は、怪我や事故をしたり、最悪は死も…必ず何か不幸が訪れるらしいっすよ…」

「そんなのどうせ作り話しだろ?;話しながら、テンション上げるなよ〜;お前、そういうの好きなの?」

「はい!好きっす怪談話w
まだ続きはあるんすよ!…狙われた監視員は必ずその女の子にこう告げられてから、呪いは始まるんです…

『そっちの方に本当の夏は見えますか?』って…!」


「……………え?」


「なんかたまんないですよね〜!って先輩、どうしたんですか?冷めた顔して。俺の怪談話、そんなに怖かったですか?(笑)」

と、後輩が横でキャッキャッとはしゃいでいる中、俺は一瞬固まり、思考を巡らせた。

え…?今のフレーズ………

確か…一週間前に夏樹が………


冗談じゃない…今の話が本当なら…夏樹はその女の子の幽霊…?


まさか、そんな……。
俺、幽霊とか見えるタイプじゃないし、今まで見えたことなんかないし…。現に夏樹と一緒に遊んで夏樹に触れることだってできたじゃないか!
きっと夏樹がその幽霊の噂話信じて真似して俺を驚かそうとしただけだ…きっと…
きっとそうだ…。

……。

…けど、、今思えば幽霊だと決めつけることで妙に納得できることも今までたくさんあったのも事実…。





夏樹…お前はいったい……。





-*-*-*-


※追記にて、続きあり。↓
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