*真田(ダイヤのA)*


放課後、誰もいない教室が好きだったりする。
夕焼け空、吹奏楽部の練習演奏とか外から聞こえる野球部サッカー部その他色々な部活動の音と声。なんて言うか

「落ち着く・・・」

携帯弄ったり机に突っ伏したり

「(今日もみんな頑張ってるなー。)」

まぁ、最近一番の楽しみはこれだったりするんだけどね。
暑い中外で頑張って練習している部活動全体の風景を見てから、野球部に目を向ける。今年から監督が変わって、今凄く強いんだとか何だとか。前はそうでもなかったけど有名になってきてる、らしい。強いと騒がれる前と後に何回か友達の付き添いで練習試合を見に行った事がある。


そんな事をぼんやりと考えてたら、教室の扉が開く音が聞こえ


「あれ、北原じゃん。」


振り返ると真田がいた。

「何してんだよ?」なんて言いながら近付いてくる真田に「サッカー部見てた」と何故だか分からないけど咄嗟に嘘発言をしてしまった。
別にやましいことなんて一つもないし、何嘘付いてんだ私は、と思い再び外に目を向けあまり見てなかったサッカー部を見ていると、真田は「ふーん」と言いながら隣に来て私と同じようにサッカー部に目を向けた。かと思ったらニヤニヤした顔をこちらに向け、


「何、気になる奴でもいるの?」

「え、別に。」

「へぇー?」

「いや、ほんと、ただ何となく見てたって言うか。(見てないけど)ってか真田は今休憩中?」

「まぁ、そんなところ。」

「でも今他の人達練習してるよ?・・・まさかサボり、」

「じゃねーから。監督からの許しもちゃんと出てるし。」

「何で教室来たの?」

「誰かさんのあつーい視線を感じたから?」

「野球部全体は見てたけど真田の事はそんな穴開くほど見てないよ。」

「野球部、見てたんだ?」

「あ、」

してやったりな顔をする真田に、しまったと思った。ってか何で分かった?

「サ、サッカー部と野球部の両方見てたって言うか!」

「ははっ、そんな慌てんなって。ってか最近、見てるよなここで。」

「ちょ、・・・知ってた癖に何してるとか聞かないでよ。真田のそーいうところちょっと嫌い。」

「ちょっとなんだ?」

「言い直す。すっごい嫌い。」

「えー、嫌いになんなよ。ってかこの間練習試合見に来てたよな。どうだった?」

「どうって・・・」


そんなこと急に言われてもな。


「強かったね、ウチの学校。」

「それから?」

「え?えーっと・・・、みんな凄いなって思ったけど、あの子、えーっと、轟君?いっぱい笑ってていっぱいホームラン打ってて、とにかく色んな意味で凄いって印象だけが残ってる。」

「雷市か。今年入った一年生で、とにかくすげーんだわ。それから?」

「んー・・・真田が、いつもの真田に見えなかった。なんか、こう、ボール投げる時の顔。人殺しそうな顔してた。」

「おま、酷いな。」

「いや、だって、ねぇ?あ、でもかっこよかったよ、うん。」

「人殺しそうな顔がか?」

「ごめ、ふふ。・・・ねぇ、監督が変わって野球部変わったけど、真田も変わったよね。」

「あー、まぁ、そうだな。そういう北原も変わったよな。」

「・・・そうだね。」

「だろ?北原さ、俺のこと」

「・・・」

「嫌いだっただろ。」

「気付いてたんだ。」

「まぁ、あんだけ嫌いですオーラ出されてたら?それに、何に対しても本気にならない俺に、北原怒ってたもんな。」

「うん、そう。そんな真田が嫌いだった。」


昔から真田は、本気を出さない。本気を出してやれば、何でも出来る筈なのに。
真田本人に言ったらへらへら笑って何かと理由を付けて誤魔化されたっけ。腹立ったなー、あれ。馬鹿にしてんの?って。
真田を見てたら、本気でやって頑張ってるのにうまくいかない自分が馬鹿みたいで悔しくて・・・まぁ、私の自分勝手な八つ当たりでもあるんだけど。


「俺さ、今結構本気で野球やってる。」

「うん、知ってる。練習見てたら分かるよ。」

「じゃあさ、本気になって頑張ってる俺のこと、どう思う?」

「かっこいいと思う。前の真田は嫌いだったけど、今の真田は好きだよ。」

「人としてだよな?じゃあ恋愛面では?」

「え?うーん・・・」


って、何でこんな流れになっている?私も私で何真剣に考えてるんだ。ってか、


「・・・真田って、私のこと好きなの?」

「ほんと、北原って鈍いよなー。」

「凄いね。私真田に対してあんな態度とってたのに、・・・まさか、Mなの?」

「お前に冷たくされる度痺れてたわー。」

「え、」

「ははっ、冗談だから引くなって。で、北原は?」

「私?私は・・・」


少し考えてから真田を見る。
何か、腹立つほど余裕な顔をしている、ように見えるのは私だけだろうか。「分からないけど、嫌いではない、かな?」とりあえず、思ったことを口に出すと、真田は「あー、良かった。」と満面の笑みを浮かべ、帽子をかぶり直した。


「いや、分からないし嫌いじゃないだよ?」

「十分。絶対好きにさせるから。まぁ好きじゃないって言われても振り向かせる自信はあるけど。」

「・・・」

「じゃあ俺、練習に戻るから。」

「あ、うん。頑張ってね。」



(凄い自信だな。)

(とりあえず、見る目は変わってくれた、と。さー、どうするかな。)







*木兎*

「よー、北原!久し振りだな!」

「久し振りー。相変わらず元気良いね。」

「まぁな!ほら赤葦、お前も挨拶しろー。」

赤「初めまして、赤葦です。」

「あ、噂の赤葦君。初めましてこんにちは、合宿頑張ろうね。」

赤「あ、はい。あの、噂って?」

「木兎から「良いセッターが入った!」って、赤葦君のこと聞いてたから。そっかそっか、噂の赤葦君、かっこいいね。」

「俺のほうがかっこいいだろ!」

「うん、かっこいいねー。木兎かっこいいー。」

「北原俺への扱い雑!!」

「え、雑に聞こえた?うーん。バレーやってる時の木兎、かっこいいよー。全国で5本の指に入るスパイカーなんて凄いよね。」

「ふっふっふ、そうだろそうだろー!」

「3枚ブロック破った時のスパイクもかっこよかったし、今年も見れるの楽しみだなー。」

「任せとけ!」

「うんうん。かっこいいかっこいい、木兎はかっこいいよー。でも!」

「何だー?」

「一番かっこいいのは、黒だけどね!!」

「っておい北原ー、またそれか。上げといて下げんなよなー。お前も気を付けろよ赤葦。こいつはこういう女だ!」

赤「はぁ、そうですか。」

「ちょ、悪者みたいな言い方しないでよ!」

「今年もこてんぱんにしてやる!猫共!!」

「こっちこそ負けないよ!その羽全部引きちぎってウチが勝つ!!」

「お、お前!怖いこと言うなよ!!」

「へいへいへーい!ウチが勝ーつ!」

「そして真似すんな!!」





この二人と一度絡みたかったんだ。