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玲奈が執事と恋したら 21羊




ゴクリ…



自分が息を呑む音を聞き取れたのは生まれて初めてかもしれない。
それくらい部屋は静かで、時折シャワーを使う音だけが聞こえる。


あぁ、これからどうすりゃいいんだ。とりあえずベットに入るべきだよな…先に寝ててって言われたもんな。

俺は掛け布団をめくってベットに寝転がった。二人で寝るはずなのに、枕は一つしかない。

「もしかして腕まくらパターン!?」

やべ、思ってた事が口にでちったよ(汗)

まだ俺が来たばっかりだから準備できてないだけだよな…


俺は枕に顔を埋めてみた。


甘くていい匂い…


でもこの匂いどこかで嗅いだ気がする。







…あ、俺の髪か。

使うシャンプー同じだからそりゃそうなるわな(笑)











つーか昨日まではこんなことになるなんて考えもしなかったな…

俺は天井を見上げながら思った。

昨日握手会に行かなかったら、普通に大学行って
就活して
くだらない会社に就職して…


くだらない人生を生き続けてたんだろう。



ここに来て俺の人生かなり大きく変わったのかもしれない。

ここに来たことで俺の人生がいい方に転んだとしても悪い方に転んだとしても構わない。


俺は選ばれて、そして自分で決めてここに来れたんだから。


そんなことは今まで無かった。
親の勧める高校に通って、大体これくらいかなって位の大学に行って…

自分が本当にしたいことなんてなにもなかった。


やっと…


やっと見つかったんだ。



彼女に、玲奈様に感謝しないといけないな…





バタン!



とお風呂場のドアが閉まる音がした。



うっほっほー!



そうだった、
物思いにふけってる余裕なんてないんだった…


どうしよどうしよ(汗)



俺はとっさに電気を豆電球にして布団に潜り込んだ。


歯磨きをする音がする。


もうすぐだ…


俺は目をつぶった。


もうすぐ玲奈様がこのベットに…


心臓、


やばい。













パタン


と洗面所と廊下を繋ぐドアの閉まる音がした。



遂にこの時が来てしまった…


玲奈「ねちゃってるのかな?」


とりあえず寝てていいって言われたんだから寝たふりしてないと…俺は布団に潜り込んだまま彼女の様子を伺った。

かぶった布団の隙間から見ると彼女は化粧台の前に座って男の俺にはなんだかわからない液体を顔に脱脂綿のようなもので押し付けていた。

パジャマは白いTシャツに黄色のホットパンツ位の丈のモコモコした生地のズボンをはいているようだ。
足が見えすぎていてクラクラする…


しばらくして彼女は携帯を触り始めた。
なにをやっているかよくわからなかったが、おそらく仕事の一環だろう。
そして携帯を閉じると、ストレッチを始めた。


なかなか焦らされるな…
というかヒヤヒヤさせられるな…

一通りストレッチが終わると彼女は立ち上がって冷蔵庫から水を出して飲み始めた。

そして飲み終わると、









ベットに近づいて来た。



く、くる…




俺は息を潜めた。




間もなく彼女は枕に顔を埋めて寝転んだ。




玲奈「あれ?なんかあったかい。」

そりゃそうだろ、隣に俺寝てるもん…


玲奈「ま、いっか。」





そう言うと彼女は布団の上から俺を抱きしめた。








うわーーーーーーーーー!?!!






レナサマ、ダイタン!?






玲奈「…あれ?なんかいつもより硬い?」



ん?

前の執事と比べて硬いってことかな…





彼女はなにを思ったか急に俺が潜り込んでいる布団を剥がした。





・・・






彼女と俺は目が合った。

その瞬間…






ぱちーーーーーーん!!





俺は鋭いビンタを左顔面に受けていた。



綾「えぇぇーーーーーー?」



レナサマそういった趣味の持ち主!?




玲奈「綾くんのへんたーーいっっっ!!!!!!!」


彼女はもう一度右手を振り上げた。


綾「ぎゃぁあああああああああ!!!!」


玲奈が執事と恋したら 20羊






俺たちはリビングに戻った。時計の針はもう11を指している。
部屋には静寂が戻った。
そしてまた俺は俺が置かれた状況を思い出して溜息をついた…

そういやそうだったな…


綾「なかなか賑やかな人達ですね…」



玲奈「というか変わってるよね…」


綾「・・・はい…」


久美「くーおーんー!誰が変わってるってーー!?」

綾「ひえぇーー!」

驚いて声がした方を見ると、久美ちゃんがまた部屋のドアを開けて首だけ出していた。

久美「くーみん地獄〜耳ん!

にゃは〜ん(笑)」



玲奈「久ぅーー美!!
私達もう寝るんだから早くお部屋に帰って!」


久美「ツッコミなしかい!


はいはい…


久遠〜?」


綾「は、はい?」

久美「ちょぉーっと耳かして〜!」


この人はなにがしたいんだろう(汗)
俺は渋々久美ちゃんのところまで行って、耳をかすために少し前かがみになった。

彼女は俺の耳元で囁くように言った。









久美「一緒に寝るなら…玲奈より私の方がいい体してると思うよ…?」








いやー、もうね。

反則ですよ。


相手アイドルだからね?
もう一回言うけどアイドルだからね?

こんなのいくら払ってもしてもらえないサービスだからね?








綾「ぶはぁっ!?」


俺は一瞬の恍惚の後足に滴る水分に気づいた。







綾「は、鼻血、出ちゃいました…」





久美「ぷ…にゃっはっはっはっ!うはははははは!

笑いが止まらんー!

久遠うぶ過ぎるよー(笑)」

ウブで悪かったな!
でもそれ言われて平気な男っているのか?
いねーだろ?

・・・だよな?


久美「でも…そんなとこも


可愛い…」

久美ちゃんはまた耳元で言った。


綾「ごふぅぁ!」






このままじゃ出血多量で死んじまう。でもこんな死に方も悪くないかも…



玲奈「はいそこまでー!」

あまりにもコソコソ話している時間が長かったからか、玲奈様が久美ちゃんと俺を引き離した。



玲奈様ナイスタイミング!


玲奈「ってなんで綾くん血まみれなの!?

さては久美、綾くんに変な事言ったでしょー!」

玲奈様は、俺にティッシュを渡して、鬼の形相で久美ちゃんに近づいている。


久美「い、いい言ってないよー(汗)

とにかく邪魔者はもう帰りますんで、あとは若い者同士仲良くねー!

おやすみー!」

久美ちゃんはそう言うと、ささっと帰っていった。
逃げ足速いな…



おいおい残された俺たちの雰囲気をどうしてくれるんだ…
ってか若い者同士ってお見合いのときいうあれじゃねーの?



綾「え、えと、あのー。」


玲奈「あっ、私…そろそろお風呂入ろっかな…」



綾「あ、はい!
いいお風呂でしたよ?
さ、冷めないうちにどうぞ!」


玲奈「じ、じゃあ入ってくるね!」


綾「はっ、はい!いってらっしゃいませ…」


玲奈「り、綾くん?」


綾「はい?」

やべー声裏返ったー(泣)

玲奈「さ、先に寝てていいからね…」


綾「了解です!!」







それって…






布団暖めとけってことだよな?



俺は白で統一されたベットを見つめた。



ここが、



戦場…(汗)?


玲奈が執事と恋したら 19羊





どーしよどーしよどーしよー(汗)


浴槽に浸かって色々考えてはみるが、やましい事しか思い浮かばない。

そもそも一つ屋根の下に男女が一緒に住んでるんだから、一緒に寝るなんてことになったらあんなことやそんな事あるに決まってるじゃないか!
とも言ってらんないからなー…

そんなことを考えていると洗面所のドアをノックする音が聞こえた。

なんかやな予感するな…


綾「はい?どうされましか?」




玲奈「はいっても…いい?」









今の空耳だよな?



・・・そうだよな?





綾「え?」



玲奈「ご、ごめん!声小さかったよね…

あのね、


入っても…いい?」















風呂with玲奈キタコレktkrーーーー!!




いやいきなり裸とか無理無理無理無理!!
さっきまでの心の準備とか無駄無駄無駄無駄ぁ!

一緒のベットとかにびびってた俺バカ〜(泣)

でもチャンスといえばチャンス!
そうさいつでもタイプワイルド!



よーーし!









うおーっ!よっしゃいくぞー!

タイガー、ファイヤー、サイバー、ファイバー、ダイバー、バイバー…



綾「ど、どうぞーー!!」



玲奈「ごめんね、タオル置いとくの忘れてた(汗)
あと、あんまり長いとのぼせちゃうよ…はやくあがってね?」








綾「え…


あ、はい。」



彼女は俺の返事を聞くとドアを閉めた。











うわー。



俺痛すぎだろ。



確かにお風呂に入るとは言わなかったよ?言わなかったけどさー…



今のはそういうパターンじゃん…

ほんとにのぼせあがっちゃったよ…できればこのまま溺死したい(泣)











とりあえず俺はシャワーで頭を冷やして風呂からあがることにした…

結局心の準備は出来ないままだ…



こうなったらもうあとは行き当たりばったりしかないな…










風呂場から出て体を拭いていると外から話し声が聞こえてきた。

?「ねぇ玲奈ー新しい執事見せてよー!
こんなに頼んどるんだから見てくれたっていいがね!」

?「そーだそーだー!見せないと怒っちゃうよ!?」



玲奈「だーかーらー今お風呂入ってるの!
どうせ明日あうでしょ!?」

?「嫌だー!くーみんは今日みたいのー!」

?「龍太も今日みたいのー!」


そんなに会いたいなら仕方ないな…俺ってどうやら人気者みたいだな!


ってはしゃいでるとまた痛いことになりそうだから落ち着いとこう…

とりあえず彼女が大変そうなので急いでパジャマに着替えて洗面所から出た。



ドアを閉めて玄関の方をみると、黒髪ロングの目ぱっちり、色白でスタイル抜群の美少女と、その美少女と同じぐらいの身長の少しつり目の美少年が立っていた。美少年の方は紫のパーカーを着てヘッドホンを首にかけている。



玲奈「あっ、綾くん!
ちょうど良かった。

この子達が綾くんにどうしても会いたいって聞かなくて…

久美、龍太君この人が新しい執事だよ!」


綾「ど、どうも始めまして…久遠綾です。
今日から玲奈様の執事を務めさせていただく事になりました。今後ともよろしくお願いします。」



顔をあげると、久美と呼ばれた美少女がこちらを見て硬直していた。

久美「でら…」


ん?


でら?




それ何語?


久美「でらかっこいいがねーー!
くーみん一目惚れしちゃったがや!
私矢神久美!くーみんって呼んでね☆
こっちは執事の紫龍太!

ところで玲奈ーくーみんに久遠ちょうだい!?」

っていきなりなに?

しかもいきなり呼び捨て?



龍太「ねぇお前…」


執事はお前呼ばわり!?


それどころか、俺銃突きつけられてるし!


龍太「殺していい?答えは聞いてない…」


えー?



殺すとかだめでしょー!そもそもこの子なんで銃とかもってんのさー(泣)



綾「ちょちょちょっと待ってくださいよぉー(汗)」






久美「りゅーた!
人に水鉄砲むけるのやめなさいって言ったでしょ!」


龍太「はぁい…」


龍太という子は渋々構えていた銃を下ろした。



って水鉄砲かよ…
マジ焦ったよ(汗)


久美「それにくーみんのものになるんだから、殺しちゃだめだがね!」


理由おかしいだろ…




玲奈「死んだら困るし、久美のものにもならないー!

綾くんは私の執事なんだからあげない!」

彼女は俺の前に出て腕を組んで頬を膨らませている。


綾「玲奈様…\\\」



かわいい…かわいすぎる…

てか、少しは俺の事大事に思って貰えてるみたいだな。



久美「ふーんだ!

玲奈のけちんぼ!きらーい!


もう帰る!









えっと…






じゃあね久遠。


また…あしたね\\\」


久美という子は上目遣いに言って部屋を出て行った。
さすがアイドル、上手いもんだな…
あの笑顔になら騙されそう(汗)


綾「あ、はい。失礼します。」


台風みたいな子だな…


龍太「お前いつか撃っちゃうからね…
バイバイ。」



龍太って子こわ〜(汗)
俺いつか本当に殺されるかも…(泣)


ってかなんてコンビなんだ…
あの人達と一緒に生活していくのか

なんかここでやっていける気、一気に削がれたな…

玲奈が執事と恋したら 18羊







玲奈「じゃーん!できたよー!

玲奈様特製カレー!!」


あれから20分は待った。
お腹の虫はどんどん機嫌が悪くなって大声で叫び出していた。

彼女はリビングに小さな机を持ってきて、カレーのつがれたお皿を2つ並べた。


綾「同じ方向いて食べるんですか?」

玲奈「だって向かい合ったら恥ずかしいし…
それにテレビも見れないでしょ?」

綾「まぁ…そうですけど。」


てか燕尾服着て地べたに座ってカレー食うって、絵面的にどうなんだろ…


玲奈「いいから早く食べましょ!
冷えたら美味しくないよー?」

綾「そうですね!

すごく美味しそうです…
玲奈様お料理できるんですね!

ではいただきまーす!」


玲奈「召し上がれ!」


カレーにはジャガイモ、人参、牛肉、アスパラが入っていてとても色合いがいい。

お腹が空いていた俺は、思いっきり口に頬張った。






その瞬間。







俺は火を吹いた。









綾「ぎゃーーーーーーーー!?


わーーーーわーーー辛れぇーーーーーー死ぬーーーーー!


みずー!みずーーーーー!」


玲奈「えーなにどうしたの?」

彼女は平気そうにカレーをパクパクと食べている。
この人舌が狂ってる…


このカレーはまさしく





ゲキカラ!





玲奈「はいお水♪

…ちょっと辛くしすぎちゃった!

てへ!」

そう言って彼女は自分の頭を小突いた。


いや可愛いけどもさ、

ほんとに可愛いんだけども…








綾「自分を殺す気ですかーー!!」








その後もちろんカレーは完食させられ、俺は脱水症状になるんじゃないかというくらい汗をかいた。


玲奈「美味しかったでしょ?」


俺はもう彼女を絶対にキッチンに立たせないと心に決めた…


【執事の掟第一章五項】
なるべく料理は執事がする事。姫の腕は当てにならない。


執事の掟を疑った俺が馬鹿だった…









食事が終わってからも、俺の体は汗をかくことをやめなかった。
洗い物をしていて冷たい水に触れている今でさえ毛穴という毛穴から噴き出してくる…
俺死ぬのかな…


リビングでテレビを見ている彼女は俺を変人扱いする。

「そんなに汗かく人初めてみたよー(笑)」


あんたのせいだろ!

ってかあんたは代謝悪すぎだろ!


「僕はあんなに辛い料理を好んで食べる人初めて見ましたよ!」

俺は皮肉をいったつもりだったが、彼女は褒め言葉として受け取ったようでこちらを向いて腰に手を当ててどや顔をした。


絶対いつか仕返ししてやる…



綾「洗い物終わりました…

汗かきすぎてもうクタクタです…」

汗かくだけでも疲れるんだな…



玲奈「じゃあお風呂入ってきなさい!」


時計を見ると22時前だった。


もうこんな時間か。


彼女が言ってくれてるんだから、先に入るか…



綾「ではお先…」
ってまてよ!?




まだ最大の難関が残ってるじゃないか!


俺お風呂→あがる→玲奈様お風呂→あがる→じゃあ寝る?→ベット→一緒…





綾「わすれてたぁぁぁぁぁあ!」




玲奈「うるさっ!

いきなりなに?
辛いもの食べ過ぎて気が狂った?」


綾「い、いえいえなんでもありませんよー?なんでもないですよー!なんかあるわけないじゃないですかー!
じゃあお風呂、はいっちゃいますねー」

バタン!






玲奈「変な綾くん!」


玲奈が執事と恋したら 17羊






10分ほどして落ち着いた俺は、脱いだシャツで顔を拭いて302号室に入った。

ん?

なんかいい匂いがするな…
そういや今日昼飯抜きだったな。







ぐ〜〜〜…





俺の腹自重しろ(汗)





玲奈「ぐ〜…

だってー(笑)


うふふふ


どうしておなかがへるのかなーけんかをするとへるのかなー♪


ほんとに減るんだね(笑)」


彼女は人参を切りながら歌った。


綾「その曲その後は

なかよくしててもへるもんなー♪でしょ?

喧嘩しなくても減るんですー!」

玲奈「おー。
意外と歌うまいんだね!」

彼女は手を洗っている。


綾「突っ込むとこそこですか(笑)?」

彼女はタオルで手を拭いて、



俺を見た。



玲奈「ほんと、よく…似合ってる。」

綾「ありがとうございます…」


彼女に褒められるのはなぜだかかなりくすぐったい。
思わずにやけてしまう程くすぐったい。



玲奈「にやにやしすぎ!」


綾「し、してませんー!
それより、お料理手伝います!ってか自分がやります!」

玲奈「いいのいいのー!
今日は綾くんの着任祝いに私が特別にお料理してあげる!
こんなサービス、めったにないんだからね!
ありがたがりなさい!」

綾「は、はぁ。」

俺は彼女の意味のわからないノリに気圧されて手伝うことを諦めた。

玲奈「とにかく、綾くんはテレビでもみてて!」


と彼女が言ったので、俺は言われるがままリビングでテレビを見ることにした。




この部屋のリビングにはソファーがあり、その向かい側の壁に液晶テレビがかけられている。
これなに型なんだろう。

うちの32型とは比べ物にならない大きさだ。
てか給料いくらもらってるんだろ…



テレビを付けると、フライングゲットのCMが流れていた。
この曲を歌えるメンバーは先日行われた総選挙というやつの結果で決まったという事は哲也から聞いて知っていたが、彼女が選ばれているのかどうか俺は知らない。
写るのは前田さんという人、大島さんという人、それと…










綾「あれ?」










俺はかなり大きい声を出してしまったらしく、彼女がキッチンの方から顔を出した。

玲奈「どうかした?」

綾「いえ!なんでもありません…」

玲奈「あっ、今私映った!」

綾「え?うそ!見逃しましたー(汗)」

玲奈「ざんねーん!」

彼女はキッチンに戻った。



今チラッと映ったのは…


そんなわけない。
あいつがAKBだなんて…

確かにアイドル好きだったけど…

でもまぁ多分、見間違いだ。
そんなことあるわけがない。

俺はそう思うことで自分を落ち着かせて、またテレビを見ることにした。




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